

キング・オブ・グルメ、フレンチ版に掲載されました。都内のフレンチレストラン50店舗が選ばれたようです。今回、僕は4ページに渡って載っています。本屋さんで見つけたら立ち読みしてみて下さい。ちなみに1冊4,500円税別。ちょっと高いですよね。
ドアを開けると夫婦らしきカップルと大きな黒い犬が僕を迎えてくれました。握手を求められて僕は慌てて右手を差しだし「ボンソワームッシュー、マダム」とお決まりの挨拶。二人が名前を名乗ったようだったので僕も、「ジュマペール…トモヒロ オガワ」と自己紹介。ただ、彼らの名前は聞き取れず、僕のカタカナフランス語は聞き取りにくそうでした。つぎに何か話しかけられても何を言っているのかさっぱり分かりません。
もちろん、フランス語が話せないのだからこうなるのは当然だけどちょっと不安になりました。
用意されていた2階の部屋まで案内されベッドに転がると今まで気が張っていたせいか一気に疲れが襲ってきてすぐに眠りにつきました。
なんとかなるだろう…。
朝、目が覚めて顔を洗いコックコートに着替え窓の外を見たとき、今更ながらここはフランスだと実感しました。
「よし、行くぞ!」
気合いを入れ1階の調理場に降りると朝食を用意している女性が一人、少し離れたところから僕を見つけ大きな声で「ボンジュール!」と挨拶してきたのですが僕が驚いて「ボンジュール」と少々小さめの声で返したのを聞いたのかどうか、忙しそうにカフェとミルクを温めクロワッサンとジャムがのったお盆にのせ、それを持って去ってしまいました。そして、10分ほどしてコックコートを着た男たちが現れ僕の目の前に立ちはだかりました。
昨夜と同じように挨拶をして握手をし、バカの一つ覚えのように「ジュマペール…」と名前を名乗りました。
さて、いよいよ仕事が始まります。シェフの指示でアプランティ(見習い)であろう一番若そうな男の子が僕のそばに来て手振り身振りで僕に仕事を教えます。トマトの湯むき、人参の皮むき、玉葱のスライス…与えられた一つ一つの仕事は簡単でしたが言葉が分からないとこんなにもやりにくいものかと、もどかしい気持ちでした。
その時の僕の現状といえば…
与えられたセクションはガルド・マンジェ(オードブル部門)。
僕の先輩は僕より7~8才も年下のアプランティ(見習い)。
まな板の横には日本から持ってきた命綱とも言える仏和辞典。
そして、いつの間にかみんなから“Tomo(トモ)”と呼ばれていました。
つづく
*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
今回このお食事会に参加してくれた皆さん、本当にありがとうございました。
このコラボレーションを企画してくれたマダムJ・Iさん、中国茶を教えてくれたマダムS・Tさん、お疲れさまでした。
le 9 Decembre 2005
中国茶とフランス料理のコラボレーション
MENU
<小前菜> 宝石の水“エレン水”(冷)
才巻海老と中国茶のアスピックゼリー
中国茶の鳳凰単叢“宋種蜜蘭香”をエレン水で煮出し、同じ中国茶で茹でた才巻海老をいれてゼリーてあります。口に含んだゼリーは口の中一杯に風味が広がり才巻海老の甘みがさらにお茶の余韻を楽しませてくれます。
エレン水とは宝石を通して作られるミネラルウォーターで食材の風味を最大限に引き出してくれるお水です。最初はまず、エレン水で味覚をリセットしてから食事会を始めます。
<冷製オードブル> 鳳凰単叢“宋種蜜蘭香”(冷)
鳳凰単叢の香りを移した越前産のぐじ(甘鯛)と有機野菜のマリネ
鳳凰単叢“宋種蜜蘭香”の香りをオイルに移し100万年前の天日塩とこのお茶の香りのオイルで甘鯛をマリネしました。マリネした甘鯛と、洋なし“ラ・フランス”のフレッシュをタルタルに仕立て千葉県の農家から届く季節の有機野菜を茹でてドレッシングで和えたものを添えました。鳳凰単叢“宋種蜜蘭香”の葉を乾燥させてパウダー状にして野菜に振りかけお茶の風味を足しています。
<温製オードブル> 正山小種“緑茶”(冷)
正山小種風味の詰め物をしたドンブ産うずらのロースト お茶の香りのクレソンソース
フランス、ドンブ地方の最高のうずら“インペリアル”のもも肉をミンチにして胸肉で包んでローストしました。付け合わせは蕪をさっとソテーしたもの。ソースにはブイヨンで煮出した正山小種の緑茶をベースにクレソンのピューレを合わせたものを添えました。お茶の香りとクレソンの苦みが調和してうずらのローストを引き立てます。
<お魚料理> 正山小種“紅茶”(温)
正山小種で蒸した天然の真鯛 蓮根のムニエル添え 薫製の香りを移したクリームソース
山口県の萩の漁港から届いた天然の真鯛を正山小種の紅茶で蒸し煮にして香りを移しました。蓮根は柔らかく煮込んだあと、ムニエルにしてあります。ソースは薫製香を移したクリームソースとアクセントにセミドライトマトのソースを合わせました。
<お肉料理> 武夷岩茶“大紅袍”(温)
武夷厳茶“大紅袍”で煮込んだ国産の仔牛 茸と茶葉のソテー添え お茶の風味のクリーム
正山小種“大紅袍”と一緒に国産の仔牛のバラ肉を85度で8時間茹でたあと、薄く切ってマデラワインと赤ワインのソースを塗り上火のオーブンで軽く焼き上げコクを出しています。付け合わせにアワビ茸、平茸そしてお茶の葉をソテーしたものを添えました。生クリームでお茶を煮出し冷やしてから泡立てたお茶の風味豊かなホイップクリームを最後に添えてあります。
<デザート> 柚子プーアル茶 (温)
フロマージュブランのアイスクリームと柚子の香りのチョコレートソース
フロマージュブランの濃厚なアイスクリームに柚子の香りを移したチョコレートソースをかけたものです。柚子の香りが余韻に残る柚子プーアル茶にこのチョコレートソースがよく合います。