料理人の休日

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世界でいちばんおいしいごちそうって、なんだろう? その16

「柳生さんの育てた生後二ヶ月の乳飲み仔羊のロティ、
ジロル茸のソテーとサマートリュフの香り、
シンプルな仔羊のジュに赤ワイン風味をつけたソースで」





彼女は夢中で召し上がりました、
あっという間に、ソースまできれいに。
彼女はしばらくまっ白になったお皿を見つめていました。



そして彼女はにこやかにデザートまで食べ終え、
コーヒーの香りをたのしみながら、
おだやかな表情で、僕に言いました。
「至福の時間を、ありがとうございました。」



僕も言いました、
「こちらこそ、ありがとうございました。」



彼女もお連れ様もほほえんでいます。


彼女は訊ねました、
「今回、大変でしたか?」



僕は言いました、
「大変でした。
ふだんは設定した値段のなかでベストを尽くしてますからね、
でも今回は、まず料理を先に考えて、
値段は後からいくらでも、でしょ。
ふだんとは逆の順番、最初はとまどいました。
しかも、ーーさんはいろんなお店で召し上がってらっしゃてますから、
ただたんじゅんに高級食材を揃えてまとめるのも、
上品さに欠けるとおもって。
それで僕は、今回は、ーーさんのために作ろうって思ったんです。
そこで僕は、〈コース、オートクチュールのように〉
っていう考え方で、ーーさんのためのコースを組み立ててみました。
よろこんでくださって、僕もうれしいです。」




そして一夜は幸福に幕を閉じました。
スタッフ全員でおふたりを笑顔で見送りました。
めでたしめでたし、ハッピーエンドです。





でも、もしもここではなしを終えたならば、
僕のこのはなしは、なんだか自慢話のようになってしまいます。
(実は正直言えば、今回は、僕にも、少しだけ、
自慢話をしたい気持ちもありました。)
でも、今回こんなに何回も文章を書いて、
考えの発展する流れまで書いてきた理由は、
けっして自慢したかったからではありません。


実は、僕が今回思いがけず考えたことは、
〈仕事に対する、もうひとつの考え〉でした。





つづく
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by le-tomo | 2008-07-21 00:06 | 世界でいちばんおいしいごちそう
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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