料理人の休日

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世界でいちばんおいしいごちそうって、なんだろう? その13

さて、こうして今回のフルコースのメニューはほぼ決まりました。
彼女のためのコース、そう、オート・クチュールのような。
僕はあらためてフルコースを構成する料理を
順番にイメージしながら、
彼女を思い浮かべていました。




いつだったか彼女は、
僕の酸味の利いたバターソースを褒めてくれたことがあります。
でも、僕はあえて、今回は酸味をきかせないソースをつくることにしました。
それは、次にお出しする、
メイン料理の生後二ヶ月の乳飲み仔羊の繊細さを、
最大限活かすために。



そのために、野菜を煮込んだときの、ほのかに甘い、
野菜のジュ(ジュース、旨み)をベースに、
バジルの華やかな香りをそえた、二種類のソースをあわせることを考えました。
でも、これだけでは、彼女の舌はものたりないと感じるでしょう。
(彼女の性格は、はっきりしています。
好きなものは好き、ピンとこないものはだめ、
したがって僕はここで、あいまいな味を持って来るべきではありません。)
かといって、今回は、酸味にたよった味の輪郭のつけ方は、禁物です。
なぜなら、次にくるメインの生後二ヶ月の仔羊は、
ミルクっぽさのある、この上なく繊細な肉質なはず、
したがってその前の料理で、酸味をもってくると、
せっかくのメインを召し上がるときの舌に、
酸味が残ってしまい、超極上仔羊のせっかくの魅力を
存分に活かせなくなってしまいます。




では、どうやって魚料理の味の輪郭を出そう、
酸味を使わずに。
そのとき僕は思い出しました、
父に教わった、グジの焼き方を。
グジはウロコが柔らかいため、
日本料理ではウロコをつけたまま焼くそうです。
食感の対比が生まれます。
柔らかく、ふっくらしている身のグジを、
ウロコごと焼けば、外側はパリパリして、
内側は、なんともふっくら柔らかい、
そんな食感の対比が生まれます。


これです!



この食感の対比こそ、味をはっきりさせるために効果的です。
彼女はやわらかく優しい心を持ち、
それでいてしっかりした考えをもった強さをそなえ、
会社でも活躍し、お友達も多い、
そんな彼女をイメージして、
僕はほのかに甘い野菜を煮込んだジュと、
香りの良いピストーソース、
そして、表面をパリパリに焼いた、ふっくらと、
やわらかく優しいグジの料理。




そして僕の構想はすべて決まりました。
彼女が訪れる日は、もう明日です。





つづく
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by le-tomo | 2008-07-18 05:14 | 世界でいちばんおいしいごちそう
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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