料理人の休日

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世界でいちばんおいしいごちそうって、なんだろう? その11

電話を切った後、僕は興奮していました。
彼女の笑顔が浮かびました。
でも、まだ安心してはいけません。
さぁ、ここの生後二ヶ月の、乳飲み仔羊をどう調理するか?
どんな、ソースをあわせるか?
彼女にはちょっと魔性的な魅力があります、
(今回彼女が持ちかけた、値段はいくらでもいいですから、
僕の思うがままに料理を作ってください、というゲームも、
そんな彼女の魔性のたまものです)。
そこで僕は、フランスの、ソローニュの森でとれた野生のジロル茸と、
サマートリュフの香りで表現することのに決めました。
そして、シンプルにこの食材の力を最大限引き出すために、
調理法は、僕のもっとも得意とするロティ(ロースト)に決まりです。

まだまだ、メニューは決まっていません。
オードブルは? 魚料理は? デザートは?
当日まで、あと一週間ちょっとです。








実は、二皿目のオードブルは、
彼女の希望で、
僕のスペシャリテ、「フォワグラのポワレ、シェリーヴィネガーソース」に
決まっていました。
彼女は、これだけは外せませんから、
と(うれしいことを)言ってくれました。
「フォワグラのポワレ、シェリーヴィネガーソース」は
僕のスペシャリテです。





アミューズ・ブーシュも手は抜けません。
ボルドーで獲れた極上キャビアを仕入れました。
このキャビアの凝縮されたような旨味と塩分を、
甘みのある大きな車海老の身で包み込み、サワークリームで酸味をあたえ、
バランスをととのえていきます。
そしてそれが今回彼女が召し上がる最初の一口に・・・。
すべてのバランスを均等に考え、
さらにインパクトのある味に仕上げました。
最初、噛んだ瞬間にはキャビアの塩分を感じますが、
噛んでいるうちに、その塩分を、酸味と甘みが包み込み、
飲み込むころには、絶妙なバランスでひとつの味にまとまる、
そんな、一口料理です。



デザートは、デザート担当の奥村と相談しました。
なんといっても最後の料理です。
それまでのすべての料理をしめくくる、〈なにか〉が必要です。
けっきょく、パイナップルを選びました。
温度差を楽しんでもらうレシピを考えました、
冷たいパイナップルのソルベに、
熱々のパイナップルのソテーをかけ、
酸味を和らげるためにココナッツのジュレを添える。
オーソドックスでありながら、
ちょっと現代的なセンスの、ウィットのあるデザートです。




次に考えたのは、一皿目のオードブルです。


悩みました。
魚介を使おうか、野菜中心にしようか、はたまた思い切って肉を使おうか。
次がフォワ・グラですから、
魚介を使ったオードブルか、野菜がメインのオードブルを考えるのがふつうは自然です。
でも、僕はあえて肉を選ぼうとおもいました。
僕の愛してやまないビュルゴー家のシャラン鴨の
エギュイエット(ささみ)を、使ってみることにしました。




僕がフランスで最初に修行した、プロヴァンスにある古いオーベルジュには、
鴨のエギュイエットをカルパッチョにした料理がありました。
僕は驚きました、なぜなら鴨のエギュイエットのカルパッチョなんて、
日本で見たことも聞いたこともありませんでしたから。
この料理は、おもしろい!
僕はすぐに好きになったものです。
そうだ、あれをつくろう。
今回はちょっとアレンジを加え、
(もともとはサヴォラマスタードをベースにしたソースを併せた料理でしたが)、
僕はグレープフルーツを使ったドレッシングをつくって、
さわやかに、サラダ仕立てに仕上げることにしました。
グレープフルーツのさわやかな苦味が、口の中いっぱいにひろがって、
食欲が進むに違いありません。


彼女はいろんな料理を食べ歩き召し上がっていますが、
この料理ははじめてに違いないと踏みました、
彼女の驚く顔が目に浮かびます。
最後は魚料理です。
今回の魚の目利きは父親に選んでもらおうと決めました。




つづく
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by le-tomo | 2008-07-16 03:31 | 世界でいちばんおいしいごちそう
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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