料理人の休日

ryorinin.exblog.jp ブログトップ

世界でいちばんおいしいごちそうって、なんだろう? その4

最高においしい料理、
僕にはこんなイメージがあります。
最高の食材に、適切な調理をほどこし、的確な加熱を加える。
構成はシンプルに、
味覚は、アタックから余韻までコントロールされ、
けっして五味のひとつだけを強調することなく、
ほどよいバランスをそなえ、そして食感の魅力をそなえ、
やわらかくかぐわしい、香りが漂う。
でも、エルブランシュのオーナー・シェフになってからは、
僕の考えは少し変わっていました。




エルブランシュは常連さんにめぐまれています、
常連さんたちはほんとうにエルブランシュを大事にしてくださって、
僕らスタッフはいつもよろこび、はげまされます。
あるお客様の話をしましょう。
彼女は週一回エルブランシュへいらっしゃる常連さんです。
僕はカウンターのこちら側で料理を作り、
彼女はカウンターの向こう側で料理を召し上がります。




彼女は明るく、くったくがなく、料理の感動を
彼女の言葉で返してくれます、
「わぁ、(魚の身が)ふっくら焼きあがってる、
ソースは酸味が効いてるけど、でも、美味しい!」
そんな声を聞きながら、僕は、次のメインをつくっています。
僕は彼女の言葉を聞きながら判断します、
(では、肉料理のソースは、
バターモンテのバターの量をほんの少し増やそう、
彼女の舌に残る、魚料理のソースの酸味の記憶が、
そっと和らぐように・・・、
魚料理のソースから肉料理のソースへの、
味から味への流れが、なめらかにつながるように)。
そして僕はメインをお出しします、
彼女は言います、「すごい、すごいッ、美味しいッ!」




もちろん僕も内心にこにこしています、
カウンター席ならではのだいごみです。
雇われ料理長のころ、閉ざされた厨房で、
どなたが召し上がるかもわからずに
料理をつくりつづけるのとは大違い。
そしていつしか僕はこんなふうに考えるようになっていました、
最高の食材、的確な加熱、味覚のバランス、食感、
もちろんすべて大事なことは言うまでもありません、
でも、そこにはひとつだけ欠けているものがあります。
そう、世界でいちばんおいしい料理は、
けっして料理人が決めることではなく、
その料理を召し上がったお客様が判断することなんです。






ある日、彼女は極上食材コースを召し上がった後で、
ちょっといたずらっぽい表情で、僕に言いました、
「ひとつお願いがあるんです」
僕は訊ねました、「なんですか、僕にできることなら、もちろん・・・」
すると彼女は言いました、
「今度ね、シェフのお任せを作ってください、予算は関係なく。」
僕は驚きました、「え、予算は関係なく、ですか?」




つづく
[PR]
by le-tomo | 2008-06-27 02:49 | 世界でいちばんおいしいごちそう
line

エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite