料理人の休日

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世界でいちばんおいしいごちそうって、なんだろう? その3

エルブランシュには、
オープンキッチン、シェフズ・カウンターが五席ほどあります。
お客様の目の前で、僕が料理をつくりします。
当初の考えは、「ひとりフレンチ」のお客様も大歓迎、
夜十時以降は、ワイン・バーとしてもご利用ください、
というつもりで作りました。




作って良かったな、と思っています。
なぜなら、目の前に座っていらっしゃるお客様の様子を見て、
食材に振る塩加減を調整することができます。
お客様の召し上がっているワインを見て、
ソースの濃度やバターモンテの仕方を変えることもあります。
ときにはお客様のお召し上がりのワインをグラス一杯いただいて、
そのワインでソースを作ったこともあります。
料理用のワインではなく、高級ワインでソースを作る、
しかも、お客様が今飲んでいらっしゃるワインで作ったソースは、
そのときのワインとのマリアージュにはぴったりでした。
お客様も、その洒落た趣向をよろこんでくださいました。





エルブランシュは、「もっとフランス的に」をモットーに
自分の目指す料理をおもう存分つくっています。
妥協は一切ありません。
それでありながら、それと同時に、
目の前のお客様と、料理で会話をする、そんなたのしみをも、
いつのまにか僕は感じるようになっていました。
目の前のお客様のことを考えながら、
料理をイメージするたのしさおもしろさ。




もしかするとこれは危険な兆候かもしれません。
なぜなら、最高にかっこいいフランス料理の料理人のイメージは、
たとえ口には出さなくとも、心のなかでは、
「これがおれの料理だ、どうだ、すばらしくおいしいだろう?
だれがなんと言おうと、おれは自分のスタイルを曲げない。」
そんなスタイルでもって多くのお客様によろこばれ、
なおかつ経営的にも成功している人たち、
それがフランス料理の世界のスターのイメージです。



僕も同じ精神を持っています、
最高においしい料理を作るために技術を極め、
料理長になってからは、
良い業者さんとの良好な関係を築き、
すべての中心を料理のクォリティに置いて、
自分の料理を築きあげてきたのですから。
僕はおしゃべりで腰が低い方ですが、
料理観の芯は、頑固です。
教科書は謙虚に無心によく読みましたが、
たとえそこに書いてあることでも、
自分で納得がゆかないものは、自分で別のやり方を編み出しました、
たとえばフォアグラの焼き方ひとつとっても、
自分で実験を重ねて、作り上げてきたものです。



そんな頑固な態度が僕の料理の芯にはあるのですが、
でも、それと同時に、どうやら僕には
「ハンドルの遊び」のような部分があって、
目の前のお客様によろこんでいただけるなら、
その「ハンドルの遊び」の部分で、お客様の舌をイメージして、
目の前のお客様と、料理で会話するような料理の作り方、
そこには、もしかしたら未知の可能性が潜んでいるかもしれない、
そんなふうにも思うようになりました。




あなたのためだけに作る、最高の料理。




そんなことを考え始めたのは、あるお客様との出会いがきっかけでした。




つづく
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by le-tomo | 2008-06-25 13:15 | 世界でいちばんおいしいごちそう
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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