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料理人の休日

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エルブランシュは、柳生さんの育てた仔羊を応援します。その5

柳生佳樹さんの育てた仔羊は、艶があって、明るい。
薄暗いところで見ると、肉が輝くんです。
肌の調子が艶やかで、綺麗で、臭みがまったくありません。
調理してみると、味が濃い。
フランス料理のしっかりしたソースに負けない
肉の味の深みと強さがあります。
それでいて乳飲みを終えたばかりの4ヶ月未満ならではの、
身の柔らかさ、ミルキーさも感じられます。
そのクオリティは、もはや
オーストラリア産仔羊の肉質を超えています。




柳生佳樹さんって、どんな人なんだろう、
と僕はがぜん興味を持ちました。
そこで僕はそれとなく業者さんに話を聞いたり、
ネットで検索したりして、
柳生さんのことを知ってゆきました。
柳生さんは、美深町の町外れの広大な農場で、
三百頭の羊たちを育て、そして
フランスにはむかしからある、羊のミルクを原料としたチーズに触発され、
さまざまなチーズを作り、
羊のミルクを使ったアイスクリームや
ヨーグルトの製造も行っておられるそうです。
はたまた広大な畑でじゃがいもを育てたり、
ときには樹液でメープルシロップを製造したり、
そんなふうにいろんなことをやっておられます。




僕は柳生さんの守備範囲の広さに驚きながら、
でも、一見すごく多彩な、それらさまざまな仕事の奥に、
柳生さんの、生き生きした関心が息づいていることが
感じられてくるのでした。
そう、柳生さんの仕事の根っこには、
ひとつの確固たる考えがあるのだとおもいます。
聞くところによると、柳生さんは、北大農学部の出身。
いつのまにか僕は、柳生さんに、
フランソワ・ユエさんの姿を重ね合わせていました。
そう、理想的な環境を選び、
理想的な交配を編み出し、
餌を工夫し、飼育しながらも野生が残る
飼育方法を模索し、
「樹の上で眠る黒い貴婦人のような」鶏ジェリンヌ・ノワールや、
優美で、なんともジューシーな、
最高の肉質のラカン鳩を育てる
そんなフランスワ・ユエさんの姿を。







そう、僕は、柳生佳樹さんに、
ユエさんに通じる考え、ユエさんによく似た人生の質を感じるんです、
一言で言えば、
「ゆたかな自然」と「創造性に満ちた飼育」の共生、
そしてその考えの実践なんだとおもいます。
こういう育て手の人が、日本にいてくださったことは、
僕をよろこばせ、すごく励まします。




今回エルブランシュは、
柳生さんの仔羊を、1/2頭買いました。
実は値段は、オーストラリア産の3倍以上です。
なるほど柳生さんの仔羊はあきらかに
オーストラリア産の仔羊よりおいしい。
肉質もすばらしい。
でも、正直に言えば、おいしさだけで言えば、
そこまでの違い、3倍までもの違いは、ないんです。
でも、あきらかにいま日本で調達できる仔羊のなかでは、
柳生さんの仔羊が最高においしい。
しかも柳生さんの仔羊は、値段は高いけれど、
それだけではなく、未来があります。
僕は、その未来への希望も含めて、
このオーストラリア産の3倍以上もする柳生さんの仔羊を
今回だけではなく、これからもずっと
買い続けていこうとおもっています、
エルブランシュの極上食材コースのために。




実を言えば、うちの場合、柳生さんの仔羊を買ってしまうと、
極上食材コースで税込み14700円をいただいても、
食材原価は50%を越えてしまいます。
ほんとうはこんなことばかりやっていては、店は潰れてしまいます。
でも、原価はメニュー全体で考えるものですから、
全体で馴らせばいいいのです。
しかも僕は、こういうとき迷わず極上食材を買えるように、
ふだんから広告も打たずメールとブログで告知するなど、
ほかのところでしっかり出費を抑えています。
だから、大丈夫です。
柳生さんの仔羊を買い続けることができます。






僕は柳生さんの仔羊を買うことがうれしいんです、
柳生さんの仔羊は、僕を励ましてくれます。
なぜなら、僕自身も「ニッポン人のフランス料理の料理人」です。
それでも、フランス人の一流のシェフに負けないつもりで、
毎日がんばって可能な限りおいしい料理を作っています。
そして柳生さんの仔羊も、ニッポンの仔羊として(!)、
ジンギスカン用のマトンとは別に、
フランス料理の世界で勝負する仔羊、
しかも世界最高のプレサレに負けない肉質を目指して、
がんばっています。
すでに肉質では、オーストラリア産の仔羊を抜いています。
このぶんでいけば、もしかしたら5年後、10年後は、
フランス料理の料理人にとって、
柳生さんの仔羊が、世界でいちばんおいしい、
そんな時代が来るかもしれません。




僕ら料理人は、おいしい料理を作る係です。
でも、いくら技術があって、センスが良くても、
すばらしい食材がなければ、すばらしい料理は絶対できません。
ですから僕にとって、柳生さんが大事なんです。
実は、僕が柳生さんを応援するのは、
まわりまわって自分自身を応援していることなんです。




がんばれ、自分!



そんな気持ちを込めて
エルブランシュは、美深町・松山農場の
柳生さんの育てた仔羊を応援しています。





*只今、極上食材コース、14,700円にて柳生さんの育てた仔羊をメインにしたフルコースをご用意しています。
数に限りがありますので、お早めにご予約下さい。
by le-tomo | 2008-04-23 13:38 | エル ブランシュへ、ようこそ
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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