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料理人の休日

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エルブランシュは、柳生さんの育てた仔羊を応援します。その3

僕ら料理人は、おいしい料理を作る係です。
でも、いくら技術があって、センスが良くても、
すばらしい食材がなければ、すばらしい料理は絶対できません。
ですから僕は最高の食材獲得に努め、
鴨ならビュルゴー家のシャラン鴨、
仔鳩ならフランソワ・ユエさんのラカン鳩、
バスク豚ならオテイザさんの育てたバスク豚を
選んできましたし、これからも使い続けるでしょう。
ところがフランス料理に欠かすことのできない食材、
仔羊については、
そこまで大好きな仔羊は、
残念ながら、僕にはありませんでした。




本来なら、僕はフランスの、
(海のなかにある修道院のあるモンサンミッシェルの!)
仔羊・プレサレや、
あるいはボルドーのポイヤック村の乳のみ仔羊を、
使っているはずです。
ところが2000年以降、日本の農水省の神経質な政策によって、
日本ではプレサレをはじめとする
フランスの仔羊全般を使うことができなくなりました。
ですから、僕は、やむなく、
ジューシーでおいしいオーストラリア産仔羊や、
小ぶりだけれども味わいが繊細で、おいしいニュージーランド産仔羊を
これまでずっと使ってきました。
値段も順当で、部位ごとに買えますから使いやすい。
いずれも一流のレストラン・フレンチに見合う仔羊だとおもいます。




でも、フランスの仔羊肉の表現力を知っている料理人にとっては、
あの、プレサレやポイヤック村の乳飲み仔羊の、
赤ワインの濃いソースにまったく負けない
味の力強さと、それでいて併せ持った繊細さときめこまやかさを
忘れることができません。
しかし、繰り返しますが、日本でフランス料理を作っている限りは、
フランスのすばらしい仔羊を使うことはできません。
もしもプレサレを知らなかったなら、
ポイヤックの乳飲み仔羊を知らなかったら、
僕はここまで煩悶しなかったでしょう、
でも、プレサレやポイヤックの乳飲み仔羊を知っている以上、
ついついじたばたしてしまうわけです。
プレサレを使えたらどんなにいいだろう、
フランスのすばらしい仔羊が使えたらどんなに幸せだろう、
と、ついおもってしまうわけです、
叶わない夢だとわかってはいますけれど。






あるときそんな僕らの気持ちに、ある業者さんが気がつきました。
その業者さんは(僕らの気持ちを代弁するように)
北海道のいろんな羊農家の人たちに働きかけました、
ぜひフランス料理用の仔羊(4ヶ月以下)を作ってください、
そしていつの日かプレサレに負けない仔羊を作りましょう。



しかし、なかなか、
そんな話にのってくれる羊農家さんを見つけることは出来ませんでした。
業者さんの話では、生後6ヶ月未満の仔羊は、
手間隙がかかるわりには、採算がとりづらいとのことらしいです。
生後6ヶ月以上のラム、もしくはもっと大きくなったマトンを
育てることで採算をあわせる農家さんが多いらしいです。




ところが、僕らフランス料理の料理人は、
4ヶ月以下の、柔らかくミルクの匂いのする仔羊こそが
欲しいんです。求める質がまったく違います。
しかし彼ら羊農家の人たちにとっては、
羊は6ヶ月までがいちばん手間がかかるそうです、
その後は、比較的安定して育っていくそうです。
それなにに、「さぁ、ようやく飼育の手間も終えて、
あとはのびのび順調に育ってゆくだろう。
さぁ、あとはたっぷり肥えていってくれ」、
となかば手が離れる段階で、もう絞めてしまうだなんて、
それでは、せいぜい12キロから15キロにしかなりません。
こんな馬鹿馬鹿しい話はないわけです、
彼ら羊農家の人たちにとっては。
もちろん彼ら羊農家の人たちはこんなふうにおもうわけです、
「では、仮にあなたたちの希望どおり4ヶ月で落としたとして、
では、あなたたちフランス料理のシェフたちは、
それをいったいいくらで買ってくれるますか?」
ちなみに肉は基本的に「1キロいくら」というふうに取引されます。
30キロ以上に育つマトンに対して、
12~15キロしかない4ヶ月以下の仔羊を
いくらで買ってくれますか?



逆に僕らにしてみれば、
実は、オーストラリア産ならば、
最高の仔羊をキロ3000円くらいから買えるんです、
しかも好きな部位だけ。きれいにカットされた状態で。
スジや余分な脂、骨は取り除かなくてはいけませんが。
そしてオーストラリア産の仔羊は、
使いやすくてジューシーでおいしい、
でも、さらにおいしい最高の、
プレサレやポイヤック村の乳飲み仔羊に負けない
表現力をそなえた肉質の仔羊を夢見るわけです。
もしも仮にプレサレがいま輸入できたと仮定するならば、
日本での値つけは、1頭、20~30万円程度でしょうか?





つづく
by le-tomo | 2008-04-21 13:47 | エル ブランシュへ、ようこそ
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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