料理人の休日

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若い料理人達よ、立ち上がれ!

毎年、牡蠣が美味しい季節になると、
フランスの地の果てブルターニュで料理人として活躍した、
ジャック・ギヨー・シェフのことを僕は思い出します。
彼は、ブルターニュの一つ星レストラン
「オーベルジュ・グランメゾン」のオーナー・シェフであり、
僕がお世話になった師匠たちのひとりです。

彼のレストランのレセプションには「若い料理人よ立ち上がれ!」と書いた
小さなカードが置かれていました。
僕は彼のもとで仕事をしているうちに、
いつのまにか僕は彼のおもいが理解できるようになっていました。
そこにはギヨー・シェフのひとつの信念が生きているのでした、
そう、「わたしのレストランはミシュランで一つ星をもらった、
ただしわたしのレストランにはこれ以上星はいらない。
なぜなら、わたしは料理人として、奇をてらったり凝りまくったりした料理よりも、
むしろ我々の伝統であるブルターニュの伝統料理の素朴なおいしさを愛する。
だからわたしは、自分の愛するブルターニュ料理を、
レストラン・スタイルの洗練された技術で作り、
ブルターニュ料理のすばらしさをひとりでも多くの人に伝えてゆきたい。
そしてわがブルターニュの料理人仲間たちよ、
われわれの料理のすばらしい伝統を、護り、一緒に高めてゆこうではないか!」

僕はそのギヨー・シェフの熱い想いに打たれたものでした。

彼のちいさなレストラン、オーベルジュ・グランメゾンは、
エントランスに緑のテントがあって、素朴だけれど、清潔で、
そしておもわずお客さんの心がなごみ、気持ちのやすらぐ、
ブルターニュ料理のおいしいレストランでした。
彼は自分の店、オーベルジュ・グランメゾンを守り、
若い料理人をたくさん育てて、そして家族を愛し、
自分の人生を愉しんでいました。
修行時代僕は、彼の下で、ストーブ前(ガスレンジの前)に立ち、
あれこれ仕事をこなしながら、
いつのまにか彼の誇りである、ブルターニュ料理が、
まるで僕の第2の故郷であるように錯覚してしまうほどでした。

彼はもう、何年か前に引退して、
彼のちいさなレストランは有望な若い料理人に譲り、
今は、愛するマダムと一緒に、マダムの大好きな海の見える海岸近くに、
たまに遊びに来る娘と孫に、得意のブルターニュ料理を振舞うのを楽しみに、
ひっそりと過ごしていると、風の噂で聞きました。

毎年この時期になると、僕はジャック・ギヨーシェフのことを思い出します。
彼のレストランのレセプションに置いてあった小さなカードのことも。


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Tirades de Jacques Guillo
若い料理人達よ、立ち上がれ!


何年か後、私達のフランスでは、私達同国人同士、腕と腕を交差させ、
戦争を望まない、そんな未来が来ることを私は信じている。

若い料理人達よ、似るな、まねるな!

若い料理人達よ、立ち上がれ、
誇りをもって生きろ、謙虚さと情熱、伝統のインスピレーションを引き出せ、
さらに果敢に勇気をもって先も見通せ。

調理場でのウィ(はい)は芸術、
なぜならそれは私達の民族と文化の本物の表現方法だからだ。

調理場でのウィ(はい)は思いがけない食材の風味を引き出す事を可能にする、
香りと味の演奏の技だ。

料理はまばゆいばかりの急激な変化を知っている、
私達はより健全に、より多彩に変化するこれらの側面を褒め称え、
高く評価しなければならない。

物質的な新しさ、軽く、そしてシンプルな材料の優雅さ、神からの恩寵、
私達の料理は香りを豊かにする。

若い料理人達よ、おまえたちは明日の錬金術師、
思い出しなさい、食事は生命の一部分、料理は暗唱用の文章ではない。

常に本物の食材を探しなさい。
おまえ達は神の恩寵を手に入れる、そしてひらめく、
大切な招待客の最高の喜びの為に。
おまえ達の感覚、才能は、その時目覚める。

若い料理人達よ、立ち上がれ、
おまえ達はおまえ達らしく誇りを持ちなさい、
何も期待しないで、仕事に勉強に時間を費やしなさい。

なぜなら、偉大なる料理「グランド・キュイジーヌ」は
おまえ達を必要としているから...

                                      ジャック・ギヨー
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by le-tomo | 2008-01-30 02:28 | その他いろいろ...
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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