~第79章 大きな分かれ道~ <僕の料理人の道>
僕は冷静に自分の本心を探り、とるべき道を考えました。
本当は怖くて、この話を断ろうとしているのではないか...
もし、そうであれば、そんな後ろむきな考えで引き下がるのはだめだ。
前へ進まなければ...。
でも、今、日本に帰ることが本当に自分の為なのか。
もっと、フランスにいるべきでは。
どっらが正解なんてことはないと思います。
僕が、どちらかの道を選択して、
決めたならその道を信じて進むべきでしょう。
どっちが、僕が成長するための道か。
どっちが、苦難な道か。
そう考えているうちに自然と僕のとるべき道が見えてきました。
いずれ、日本に帰ることは決めていました。
期待され、帰国して、東京の大きなフレンチレストランでシェフを任され、
この大任を果たさなければならないほうが僕にとって成長の道であり、
苦難の道だと思いました。
そしてこれはチャンスだと思いました。
ただ、明日にでも帰国というわけにはいきません。
ここ、オーベルジュ・グランメゾンでも、僕は大任を任されている身ですから。
とりあえず、この話をギヨー氏に相談することにしました。
翌日の休憩時間にギヨーシェフの部屋に行き、このことを相談しました。
東京のレストランのオーナーから、シェフのオファーがあり、
断ろうと思っているのだが、オーナーの話を聞いて迷っている、
ということを。
ギヨーシェフは椅子に座ったまま、僕をじっとみつめたまま、
僕の話を聞いていました。
つづく
*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。