~第72章 このままブルターニュに~ <僕の料理人の道>
店頭で生牡蠣を並べている一軒のシーフード料理専門店が僕の目に留まりました。
このあたりでシーフード料理店なんて別に珍しくもないのですが、
僕が気になったのは、店頭に並んでいる数種類の牡蠣の中にあった
エメラルドグリーンの牡蠣です。
“こんな牡蠣見たこともない”
なんと、牡蠣の身のはらわたの部分が綺麗なエメラルドグリーン色をしているのです。
僕は引き込まれるようにこのお店に入って、このエメラルドグリーン色の牡蠣を
1ダース頼みました。
“すごいなブルターニュは。こんな牡蠣があるなんて。”
僕はますます、ブルターニュが好きになりました。
どこまでも続く白い砂浜、
とびっきり美味しい魚介類、
そして、今、目の前にある綺麗なエメラルドグリーンの生牡蠣。
まだまだ、あります。
りんごから作るほのかに甘い発泡酒のシードル、
誰もが大好きなクレープとそば粉のガレット。
フランスなのにフランスとはちょっと異国の雰囲気をもった
独自の文化をもつブルターニュ。
1ダースもある生牡蠣をものの5分ほどでたいらげ、僕は店を出ました。
“生牡蠣にシードルで作ったジュレを合わせたら美味しいだろうなぁ。”
この時、頭をよぎったのはこんな料理でした。
僕はいつのまにか、ブルターニュ料理を考えていました。
夜、ベットに入り眠りにつくまでの間、これからのブルターニュでの生活を考えました。
まるで、ブルターニュに残ることを決めたかのように...。
つづく
*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。