~第70章 マダムの愛する海岸で~ <僕の料理人の道>
僕の仕事はオードブルを中心にパティスリー(デザート部門)を手伝っていましたが、アプランティー(見習い)たちにフォワグラの下処理なんかも教えたり、ときにはソースを仕込んだりと幅の広い仕事をこなしていました。
この頃にはフランス語も会話に困らなくなっていて、指示も出来るようになっていたからでしょう。仕事が楽しくなっていました。
スー・シェフ(副料理長)のミカエルは、あのミシュラン2つ星のレストランのシェフ、ジャン・ミッシェル・ローランの下で腕を磨いたつわものでした。
毎日、大声で指示をし、妥協は許さないといった感じで緊迫感のある、色白で金髪の男でした。
奥さんのフランソワーズもこのレストランでレセプションで働いていて、とても仲のいい夫婦でした。
仕事が終わると彼はとても優しく、外国から修行に来ている僕を気遣ってくれていました。
休みの日はたまに、家に僕を招いてくれ、夕食をともにしながらよく話をしたものです。
彼女のお腹には子供がいました。
僕が来た頃はまだ分からないほどでしたが、だんだん大きくなってきました。
それでも、彼女は毎日レセプションに立ち、お客様をマダムと一緒に優しく、温かく、迎えて、見送っていました。
シェフのギヨー氏も彼女の身体を気遣って、まるで自分の孫が生まれるかのように大切に、大切に思っていました。
マダムは海をこよなく愛していました。
ギヨー氏は海を愛するマダムの為に、ブルターニュのラ・ボール(La Baule)という砂浜の海岸が美しい街に別荘を買いました。この海岸はヨーロッパで一番美しいとされている海岸で、10Kmにわたって白い砂浜が続いています。
ある日、シェフ、ギヨー氏は僕をラ・ボールに連れて行ってくれました。
ギヨー氏は僕に、あの素晴らしい海岸を見せたい、と。
僕は彼の運転するベンツにのって2日間の連休にラ・ボールに行きました。
目の前に広がる砂浜は、今まで見たこともない美しさでした。
「ここだよ、トモ!ほら、いい別荘だろ!」
ギヨー氏が自慢げに、僕に言いました...というより叫びました。
マダムは買い物に出かけ、僕とギヨー氏が二人っきりになったとき、彼は僕に大事な話があると深刻な顔で僕の目を見つめました。
「トモ、実はスーシェフのミカエルが今度うちを辞めて、フランソワーズ(奥さん)の実家に帰ることになった。子供を彼女の実家で生んで育てたいそうだ。もちろん、引き止める気はないよ。」
「そこで...」
「トモ、彼のポストを引き継いでくれないか?」
「出来れば、5年間の雇用契約を結びたい。労働許可証はなんとかするから。コネがある。」
「実は...」
彼の話には続きがありました。
それも衝撃的な...。

<ラ・ボールの海岸にて、ギヨー氏とマダムと一緒に>
つづく
*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
この頃にはフランス語も会話に困らなくなっていて、指示も出来るようになっていたからでしょう。仕事が楽しくなっていました。
スー・シェフ(副料理長)のミカエルは、あのミシュラン2つ星のレストランのシェフ、ジャン・ミッシェル・ローランの下で腕を磨いたつわものでした。
毎日、大声で指示をし、妥協は許さないといった感じで緊迫感のある、色白で金髪の男でした。
奥さんのフランソワーズもこのレストランでレセプションで働いていて、とても仲のいい夫婦でした。
仕事が終わると彼はとても優しく、外国から修行に来ている僕を気遣ってくれていました。
休みの日はたまに、家に僕を招いてくれ、夕食をともにしながらよく話をしたものです。
彼女のお腹には子供がいました。
僕が来た頃はまだ分からないほどでしたが、だんだん大きくなってきました。
それでも、彼女は毎日レセプションに立ち、お客様をマダムと一緒に優しく、温かく、迎えて、見送っていました。
シェフのギヨー氏も彼女の身体を気遣って、まるで自分の孫が生まれるかのように大切に、大切に思っていました。
マダムは海をこよなく愛していました。
ギヨー氏は海を愛するマダムの為に、ブルターニュのラ・ボール(La Baule)という砂浜の海岸が美しい街に別荘を買いました。この海岸はヨーロッパで一番美しいとされている海岸で、10Kmにわたって白い砂浜が続いています。
ある日、シェフ、ギヨー氏は僕をラ・ボールに連れて行ってくれました。
ギヨー氏は僕に、あの素晴らしい海岸を見せたい、と。
僕は彼の運転するベンツにのって2日間の連休にラ・ボールに行きました。
目の前に広がる砂浜は、今まで見たこともない美しさでした。
「ここだよ、トモ!ほら、いい別荘だろ!」
ギヨー氏が自慢げに、僕に言いました...というより叫びました。
マダムは買い物に出かけ、僕とギヨー氏が二人っきりになったとき、彼は僕に大事な話があると深刻な顔で僕の目を見つめました。
「トモ、実はスーシェフのミカエルが今度うちを辞めて、フランソワーズ(奥さん)の実家に帰ることになった。子供を彼女の実家で生んで育てたいそうだ。もちろん、引き止める気はないよ。」
「そこで...」
「トモ、彼のポストを引き継いでくれないか?」
「出来れば、5年間の雇用契約を結びたい。労働許可証はなんとかするから。コネがある。」
「実は...」
彼の話には続きがありました。
それも衝撃的な...。

つづく
*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
by le-tomo
| 2007-08-16 14:17
| 僕の料理人の道 61~70章


