料理人の休日

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~第68章  漂う香りとあふれる活気~  <僕の料理人の道>

いつも厨房に一番乗りするのは彼でした。


「ディディエ、もう行くのか。僕も一緒に行くよ。」

隣の部屋のドアが開く音がして、彼が外へ出て行くのに気がつき、僕は慌ててコックコートを右手に持ち、彼を追いかけました。
僕はまだここへ来たばかりでそれほど大変な仕事もなかったので、彼と一緒に先に厨房に入りパティスリー(デザート)を手伝うことにしました。

誰もいない静まり返った厨房に彼と2人。
ステンレスできたボールや鍋のぶつかる音が響いています。
ボールに生クリームを入れ、泡だて器でシャカシャカとホイップクリームを作るときの音はまさにお菓子作りの音です。

甘い香りがただよいはじめたころ、一人、また一人と料理人が現われ、厨房はざわめき始めます。それぞれが自由にコーヒーを飲み、パンをかじりながらゆっくりと仕事についていきます。

「さて、それじゃ、仕込みに行くよ。」

みんなが集まった頃、僕はディディエの場所を離れ、料理人チームに入りました。
ディディエのいるパティスリーにはコミ・パティシエ(アシスタント)のダヴィッドがいます。
彼はまだ20歳そこそこですが、いつもシェフ・パティシエのディディエより後に来ます。
日本では許されないことですが、ここフランスでは別に気にならないようです。




ブイヨンが火にかけられ、オーブンには、昨日マリネしておいたフォワグラのテリーヌがそっと入れられました。
30分ほど前まで静かだった厨房がざわめきはじめ、
パティスリーの甘い香りをおおうように、ブイヨンの食欲をそそる香りが漂いはじめ、
厨房は活気とおいしい香りが満ちあふれだしました。

僕は、オーブンからフォワグラのテリーヌを出し、真ん中あたりを竹串で静かに刺し、竹串に伝わったフォワグラの温度を唇の下で感じました。
テリーヌを湯銭からだし、重石をすると、たっぷりの脂がテリーヌ型からあふれ出します。
こうして余分な脂を取り除き、冷蔵庫で2,3日寝かせることで美味しいフォワグラのテリーヌが出来上がります。




僕がフォワグラのテリーヌを冷蔵庫にしまうと、シェフ、ギヨー氏が厨房に入ってきました。
なんだかそわそわしています。
電話が鳴るたびに、すっ飛んでいき、何かの連絡を待っているようでした。
マダムがそんなギヨー氏をみて「落ち着きなさいよ」となだめていました。





つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
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by le-tomo | 2007-08-01 13:52 | 僕の料理人の道 61~70章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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