~第4章 ギャルソン時代 前半~ <僕の料理人の道>
4畳半の部屋に3人ずつ押し込まれる寮生活、部屋には4歳児用の2段ベットのみ。ほとんど寮とレストランの往復のみの生活が始まりました。まさに料理人になるためにそのことだけに集中できる、いや集中せざるおえない環境。
憧れのフランス料理を目の前に心躍る日々が始まるはず...
とんでもありません。あまりにレベルの高いサーヴィスに僕はおろおろするばかり。怒鳴られ、殴られ、毎日自分が何をしているのかも分からないまま、朝から夜中までくたくたになるまで働きました。覚えることが山ほど、というか僕の知らないことが山ほどありました。なにせ、恥ずかしながら僕はフランス料理店で食事をしたことすらなかったのですから。
わけが分からず夢の中で働いていたような“春”があっという間に終わり、箱根で一番忙しい季節の“夏”がやってきました。
凄まじい忙しさです。連日、満席以上。帰りは2時過ぎ。休みはもちろん無し。先輩の仕事についていくのに僕は必死でした。
そんな中、ソムリエの先輩にワインを教えてもらいシェフ・ド・ラン(ギャルソンリーダー)の先輩にはチーズを教えてもらい、メートル(支配人)からはサーヴィスすることの素晴らしさを教えてもらいました。
箱根の“夏”が終わり紅葉がきれいな“秋”に季節が移り変わる頃、10人いた新人はすでに半分も残っていませんでした。倒れて病院行きになったもの、ノイローゼになったもの、そして夜逃げしたもの...
つづく
*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。