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料理人の休日

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~第58章 忘年会~  <僕の料理人の道>

12月30日、この日はランスブルグの忘年会です。
シェフの友人のレストランでこの忘年会は行なわれました。
夜8時スタート。この前のケータリングのときみたいにみんな、おのおのの車にのりドイツの国境沿いのレストランに向かいました。このレストランはミシュランで1つ星の評価を受けていて、目の前の川を渡ったらドイツに入ってしまうほどぎりぎりの国境添いにありました。
全員が席に着くと、このレストランのシェフが挨拶に来て、まずは乾杯酒がサービスされました。

もちろん、乾杯はアルザスのシャンパン「クレマン・ダルザス」です。

そして、料理が続々と運ばれ、みんな好き好きにおしゃべりをしながら食事を楽しみました。
この一年間にあったこと、来年のこと、料理のことなどそれぞれおしゃべりを楽しみました。すでに上下関係は全くなくなっていました。
16歳の見習いはシェフのクレイン氏とサッカーの試合のことで言い争っているくらいです。

辺りを見回すと、僕たち以外のお客さんが見当たりません。
どうやら、貸し切りらしいのです。

僕は明日パリに向かいます。このディナーがアルザス最後の夜です。
とにかく、みんなとおしゃべりを楽しみました。僕はそんなにフランス語は上手ではありませんが、この際、上手い下手は関係ありません。とにかく思うままにしゃべり続けました。そして笑い続けました。

いつの間にか11時を過ぎていました。乾杯してからすでに3時間を超えていたのです。いよいよデザートが出てきました。そしてコーヒーがサービスされランスブルグの忘年会も終盤かと思ったのですが、とんでもありません。
更にお酒が運ばれてきます。食後酒の時間です。

そして、運ばれてきたお酒は…

なんと「KRUG(クリュッグ)」のヴィンテージ。(年代物)
そうです。シャンパンが運ばれてきたのです。しかもフランス最高級のシャンパンです。
これには驚きました。
普通はブランデーやカルバドスなどのアルコールの強いお酒を食後酒として楽しむのです。

まだ、終わりません。
次は年代物の赤ワイン、「シャトー・ラフィット・ロートシルト」
ボルドーの一級ワインです。年代は忘れましたがかなり古いものでした。

食後酒として年代物のシャンパンや赤ワインを楽しむなんて聞いたこともなかったのです。

シェフ曰く
「食後にコニャックやアルマニャックもいいけど、やっぱり上質のシャンパンやワインが最高だろ」
との事でした。

こんな楽しみ方もいいなぁと感心していましたが、僕はすでにかなり酔っ払っていました。
わいわいガヤガヤと忘年会は楽しく進み、そろそろ終わりに近づいた頃、シェフ、クレイン氏が僕に1冊の本を渡しました。

「トモ、この本を読みなさい。」

この本は当時アルザスに3件ある3ツ星のレストランのうちの一つ「ビュルイーゼル」の本でした。ランスブルグはこの時2ツ星でしたが、この時クレイン氏は「近いうちに3ツ星を必ずとる」と僕に言いました。(1年後、ランスブルグは本当に3ツ星を取りました。)

僕はその時、クレイン氏に「僕も負けません」と言ったのを覚えています。
酔っ払っていたので気が大きくなっていたのでしょう。

忘年会が終わりレストランを出たときには朝の4時でした。

つづく

*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
by le-tomo | 2007-01-12 22:01 | 僕の料理人の道 51~60章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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