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料理人の休日

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~第57章 あと数日~  <僕の料理人の道> 

誰もいない、静まり返った広い店内で、2人だけのクリスマス。しかも男2人。
それでも、目の前に広がるご馳走と、飲みきれないほどのワインが僕達2人をワクワクさせ、たった2人でも充分すぎるほど楽しく幸せな気分になりました。
何より、シェフやマダムの気遣いが心に響き、あと少ししかない、僕のランスブルグでの時間がとても尊く思いました。

「もっといたい。」「また戻ってきたい。」

この1日で僕は強くそう思いました。実際には昨日から気持ちは盛り上がっていましたが。
この時、僕はこの気持ちがレストランのサービスにつながる大切な事だと思いました。
今までももちろん、それぞれのレストランのオーナーやシェフの心遣いや優しさに胸を打たれる事は多々ありましたが、このように意図的に仕掛けられて幸せを感じた事に、彼らのプロ意識を感じました。

レストランに来たお客様が、食事を終え、レストランを出るときに「また来たい。」「また、来よう。」と思う。そんなレストランを僕はいつか目指したいと思いました。それにはレストランで食事している間の2~3時間程度の間に、ちょっとしたワクワク感と小さな驚きや感動の連続を演出する事なのではと思いました。

さて、あれだけ用意された料理が見る見るうちになくなり、ワインも進んで上機嫌になっていました。ジョルジュに今後どうするのか聞いたところ、彼は来年、ドイツに戻り、親のレストランを手伝うと言っていました。そしてそのレストランを継いで、いつか星付きのレストランにするのが夢だそうです。そのために、ランスブルグに修行に来ているらしいのです。僕は、来年、ブルターニュの2つ星「ル・ブルターニュ」に行く事が決まってると話しました。そして、僕も負けじといつか日本に帰ったらシェフになって、何年か後には自分のレストランを持つことが夢だと話しました。2人で自分の夢について言いたい放題言い合って、べろべろに酔っ払って、気が付いたら12時をまわっていました。

「こんなクリスマスもあっていいよな。」
2階の部屋に向かう途中、彼は僕に言いました。
「もちろん、いいよ。楽しかったよ、ジョルジュ」

ヨーロッパではクリスマスの日は家族と過ごします。彼にとって友人と2人で過ごすクリスマスは今までになかったのでしょう。

あと数日…

あと数日ですが、僕はまだまだ目いっぱい学んで、次のステップへ上がります。


つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
by le-tomo | 2006-12-23 01:57 | 僕の料理人の道 51~60章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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