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料理人の休日

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~第56章 メリークリスマス~  <僕の料理人の道>

部屋から出てきたジョルジュもスーツに身を包んできちっとネクタイをしています。
僕と2人しかいないクリスマスディナーで外へ行くわけでもないのにちょっと変ですが、これも雰囲気作りです。昨晩、飲みながら2人でこうしようと決めたのです。

階段をおり、レストランに入ると、明かりがついていないので暗く、誰もいないので静かでした。電気をつけると、窓際の一番眺めのいい席に2人分のセッティングがされていました。きらきら光る澄んだグラスが並び、手垢一つない磨かれたナイフやフォークが整列していて、中央には引き込まれそうなくらい綺麗な飾り皿が優雅に置いてありました。そしてその飾り皿の中央に一輪のバラがひっそりと置いてあり、一枚のカードが添えてありました。

“Joyeux Noel”(メリークリスマス)

カードには手書きでそう書いてありました。

マダム役のシェフの妹、カティが用意してくれたものでした。
他のテーブルもセッティングはしていないものの、綺麗なテーブルクロスがきちんとしわを伸ばしてかけてあり、椅子もどれ一つ乱れずテーブルに納まっていました。

これが一流といわれるレストランの当たり前の気遣いなのか、シェフやカティ、2人の心意気なのか、とにかく僕は、最高のもてなしを受けようとしている、そんな緊張感すら感じました。そこにはジョルジュ以外、誰もいないのに。

…ただそこには、一流のレストランを作り上げ、一流と呼ばれる人たちのもてなしの思いがはっきりとありました。存在感を感じるくらいに…。

とりあえず調理場に向かい、人が入れるほど大きな、部屋のような冷蔵庫の中から、僕たちの為に用意されたご馳走を出してきて、温め始めました。前菜には牡蠣や帆立や海老などの魚介類の盛り合わせ。そしてオマール海老のボイル、シャポン(去勢鶏)のローストなど、食べきれないほどの量が用意されていました。

ジョルジュは冷やしてあったシャンパンやワインを用意し、グラスやお皿を用意していました。



さて、男2人のクリスマスディナーの始まりです。

まずはシャンパンで乾杯。
「メリークリスマス!」

そして、魚介がたっぷり盛ってあるお皿を目の前に、これから始まる、おそらく人生で最高のクリスマスの夜を迎えている事に僕は深く感動していました。


つづく

*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
by le-tomo | 2006-12-02 01:18 | 僕の料理人の道 51~60章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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