~第55章 ガンプラ~ <僕の料理人の道>
レストランには僕とジョルジュの二人だけです。静まり返るレストランの2階が僕達スタッフの寮になっています。
昨日はジョルジュと一緒に少し飲み過ぎました。
起きたらお昼の12時を回っていたのです。
僕が部屋をでるとジョルジュの気配は感じられず、多分まだ寝ているのだろうと物音を出来るだけ立てずに部屋でゴロゴロしていました。しばらくして2,3日前に日本にいる弟から届いた小包を手に取り、その箱を開けました。
「さて、作るか!」
この小包は弟が日本から送ってくれた「ガンダムのプラモデル」です。
クリスマスのプレゼントのつもりでしょうか。
フランスではプラモデルを見かけたことがありません。そもそもアニメ自体、日本のものがフランスでも大人気で、「ドラゴンボール」や「シティハンター」をよく見かけます。
フランスにいなくとも懐かしい、通称「ガンプラ」を手に取り僕は少し興奮気味に説明書を丁寧に見ながら、作り始めました。
約30分ほどで「ガンプラ」は出来上がり、結構あっけなかったと、小さい頃苦労して作っていたことを思い出しました。
そうしているうちにジョルジュが起きてきて、僕の部屋に寝ぼけたまま入ってきたのです。
僕が手にしているガンプラをみたジョルジュは、一気に目が覚めたように声を上げたのです。
「すげ~!何だこのロボットは?」
僕は彼があまりに驚いていたので得意げにガンダムの話を彼にしました。
彼は、いつかガンダムを見に日本へ来るとまで言っていました。
外は激寒なので、今日は、2人で決めたクリスマスディナーの時間まで、暖かい部屋の中でゆっくりと過ごしました。みんなは今頃、家族そろってクリスマスを楽しんでるだろうなぁ、とうらやましく思いながらも、シェフが用意してくれたディナーのおかげで僕たちにも楽しみがあることを、イエス・キリストに感謝しました。...アーメン。
いえいえ...シェフのクレイン氏に感謝しました。
さて、いよいよ約束したクリスマスディナーの時間が近づいてきました。
僕は出来るだけおめかししようと、持っている少ない服のから一着しかないスーツを引っ張りだしてきて着替えることにしました。もちろん、一本しか持ってないネクタイもしました。
7時5分前、ジョルジュの部屋をノックしました。
つづく
*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。