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料理人の休日

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~47章 チームの力 ~  <僕の料理人の道>

ここアルザスばかりではなく世界的にクリスマスムードになってきた12月初旬。
ランスブルグはロレーヌ地方モーゼル県の都市、メッスで開かれる300人ものセレブが集まるクリスマスダンスパーティーの料理のケータリングをすることになりました。

1週間もまえから仕込みがはじまり、レストラン営業をしながらのケータリングの準備でみんな、朝から晩までほとんど休みなく働きました。もちろん、ケータリングの準備で忙しいからと言ってレストランの料理の手を抜くはずはありません。

驚いたことにこのメニューの中にフォワグラのポワレ(フライパンで焼いたもの)がありました。フォワグラはほとんどが脂で熱を入れると溶けやすく、手早く焼かなければなりません。非常に難しく、10人分焼くにも大変です。それなのに300人分のフォワグラを焼くなんて…。

ここに今、まさに2ツ星から3ツ星になろうとしているレストランの意地とプライドを感じました。決して無難な方を選ばず最高の料理をどんな状況でも提供するというプライドが。

フォワグラの料理だけではありません。オードブルから魚料理、肉料理、すべてが宴会用の大量生産型の料理ではなく、あくまでもランスブルグで通常出している高度な料理ばかりでした。

僕は不安でした。“本当に、出来るのか…。”

そんな、軟弱者の僕の気持ちなど誰も知ろうとはせず、シェフはもちろんの事、2番手のミッシェル、その他スタッフみんなが自信満々に仕込みを済ませていきます。自信があったのではないかも知れません。実はみんな不安だったのかも知れません。でも、「やるしかない」ランスブルグの名誉にかけて。そんな熱気もあり気温マイナス10度のアルザス地方にあるこの活気に満ちた厨房は熱々の湯気が立ち込めていました。


不思議なことに、その日が近づくにつれ僕の不安はなくなり、逆に自信すら持ち始めていました。みんなの気合に完全に呑まれていたのでしょう。

シェフを筆頭にみんなの気持ちが一つになっていく。そして、一人一人が全力で自分の役割を果たしランスブルグの料理を作っていく。誰も弱音を吐かない、誰も逃げ出さない。
そんなチームの一員に僕がいる。

こんなにも素晴らしいチームの一員に。


~47章 チームの力 ~  <僕の料理人の道>_c0007246_111299.jpg




つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
by le-tomo | 2006-08-09 12:34 | 僕の料理人の道 41~50章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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