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料理人の休日

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~ 第42章 張り詰めた緊張感 ~  <僕の料理人の道>

僕はロティスリーに立っています。隣にはスー・シェフのミッシェル。目の前にはシェフのクレイン氏。

張り詰めた緊張感の中、全てのスタッフが自分の役割を全力で全うする。この一体感、チームワーク、やっぱり素晴らしいです。僕の仕事はミッシェルと一緒に肉料理を仕上げていくこと。ミッシェルの無駄のない動きに僕はただ、ついていくのに必死です。これが、当時アルザスで最も3ツ星に近いといわれたレストラン「ランスブース」の厨房。
もの凄く早口で飛び交うフランス語。その中にはアルザス訛りの言葉も混じり、聞き取ることがかなり困難でした。

そんな中、僕はこの緊張感やスピードが“楽しい”と感じました。

このレストランで、驚いたことの一つにオーダーの通し方があります。僕はロティスリーにいたので肉料理を作っていたのですが、前の料理、例えば魚料理が出るとサービススタッフが、肉料理がでる予想時間をオーダー表に書いていくのです。そして、その時間に合わせて肉料理を仕上げていく。料理を提供する時間から逆算してベストの状態に仕上げていくのです。魚料理も同じです。

料理を出す時間が予め決まっていることは意外と大変です。普通ならオーダーの声がかかってから料理を仕上げ始め、厨房の都合で料理が出来次第お客様に出すのですが、予めお客様に出す時間が決まっているとそれに合わせて仕上げなければならないのでかなり正確な逆算が出来ないといけません。僕は時間に追われていました。

しかも、なぜお客様が料理を食べ終わる時間が読めるのか、休憩時間に黒服(オーダーをとれる幹部クラスのサービススタッフ)に聞いたことがあります。

「最初の一口目と次の二口目のフォークを口に持っていく時間の間隔を見ていれば大体分かるよ。それからテーブルごとの空気を読むことかな。」

彼はそう答えました。 “やっぱり凄いな。”僕は感心しました。

一人一人が自分の役割をきちんと果たしていく。そしてシェフはこの何十人ものスタッフを統制する。更に、全てのオペレーションはお客様を中心に考えられている。

僕はここ「ランスブール」の厨房に身を置いているだけでも身震いするほどの喜びを感じ、ロティスリーに立っていることを夢じゃないのかと疑うこともしばしばありました。


つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
by le-tomo | 2006-06-20 00:20 | 僕の料理人の道 41~50章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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