人気ブログランキング |

料理人の休日

ryorinin.exblog.jp ブログトップ

~ 第37章 オスピス・ド・ボーヌ ~  <僕の料理人の道>

c0007246_203276.jpgパリに向かう途中、せっかくなので葡萄畑を見ていこうとブルゴーニュ地方をちょっと旅することにしました。リヨン、ボーヌ、ディジョンと主要都市に立ち止まり、その周りの葡萄畑を散歩する程度でしたが、今まで料理のことばっかり考えていたので目の前に広がる広大な葡萄畑に改めてフランスの文化を感じました。

「あの素晴らしいワインはここから造られるんだ。」

季節は冬だったので葡萄の木には葉っぱが一枚も付いていませんでしたが奇麗に並んでいる葡萄の木を見て彼らワインの造り手の人たちがどれほど葡萄の木を大切にしているかが分かります。背丈もみんな同じ高さに切り揃えてあり土も丁寧に耕されています。

ブルゴーニュ地方のワインの産地はコート・ドール(黄金の丘)と呼ばれ、そのワインの中心地ボーヌにはオスピス・ド・ボーヌという慈善養護病院があります。中世に立てられたこの病院は醸造家の人々がワインを寄進し、そのワインを競売にかけて運営しています。ワインで病院を運営するとは、なんてフランスらしいのでしょう。別名を「オテル・デュー」と言います。

このオスピス・ド・ボーヌを目の前にしたとき、思わず身震いしました。色鮮やかな屋根を持つこの建物は病院というより修道院とか教会といった雰囲気を持ち、圧倒的な存在感がありました。この建物に魅了されてしまった僕はしばらくそこから動けず気が遠くなる感じに襲われたのです。医療技術が未熟な中世では完治して退院していった人よりもこの病院で死を迎えた人のほうが多かったことでしょう。

このオスピス・ド・ボーヌの屋根の模様が脳裏に焼きついて離れないまま、城壁に囲まれた街、ボーヌを一人でぶらぶら歩いていると小さなワイン雑貨店のショーウィンドーの向こうにさっき見た模様が小さく見えました。吸い寄せられるように店内に入りさっきの模様を探し出すとそれはラギオール社のソムリエナイフ(ソムリエがワインを開けるときに使うコークスクリューの付いたナイフ)でした。
そのソムリエナイフを手にとってみると手に吸い付くような感触でした。
僕は料理人なのでソムリエナイフはあまり必要ではないのですがソムリエである弟に是非これをプレゼントして使ってもらおうと決めました。このラギオールのソムリエナイフは日本だと2~3万円はします。いくらだったか忘れてしまいましたが半分位の値段で買えたと思います。それでも僕にとっては全く予定外で高価な買い物でしたが全然後悔などしませんでした。それほど魅力的だったのです。思わず、近くの公衆電話から日本にいる弟へ国際電話をし、オスピス・ド・ボーヌの柄のソムリエナイフをお土産に買ったことを伝えたくらいです。

その後、世界一高価なロマネ・コンティ(ワインの名前)の畑を見て一人で興奮して溝に足を突っ込んだり、ジュヴレイ・シャンベルタン村からフィサン村まで歩いているうちに暗くなってしまい道に迷ってしまったりといろいろありましたが楽しい旅になりました。

今、自分の置かれている状況をすっかり忘れて…。


つづく

*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。

c0007246_2062267.jpg
by le-tomo | 2006-05-22 20:04 | 僕の料理人の道 31~40章
line

エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite