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料理人の休日

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~第24章 謎の日本人~  <僕の料理人の道>

そうです、“こんにちは”は日本語です。当たり前ですよね。
そして日本語を話す謎の女性は、僕の歯のことを説明し始めました。
「彼女があなたに説明してほしいって言っているので説明しますね。あなたは下の歯が痛いとおしゃっているけど虫歯は上の歯なんです。神経がつながっているから上の歯が虫歯なのに下の歯が痛く感じることもあるんですって。お分かりですか?」

いいや、よく分かります。全て理解しました。ここ数ヶ月間日本語を聞いていなかったので、改めて言葉が分かるって素晴らしいなぁと思いました。

さて、この謎の日本人はいったい...。

その後、治療は時々分からないこともあったのですが順調に進み一回目の治療は終了。支払いをしようとしたらあと一回こなければならないからその時でいいとのこと。そして500フラン用意してくるようにと言われました。日本円で約1万円です。高いのでしょうが、思っていたほどとられなくてほっとしました。

そして、歯医者を出て僕は地図を見ながらあるところへ向いました。

実はさっきの電話の謎の日本人女性から日本人の方がこの村にいるなんて珍しいことだから是非会いたいと言っていただいたのです。そして道順を教えてもらいそのメモを持ってそこへ向かったのです。村のほぼ中心に彼女の家はありました。チャイムを鳴らすと50歳くらいの女性が出てきました。
「こんにちは。ようこそ。どうぞお入り下さい。」

彼女のあとをついて2階に上がるとテーブルが真ん中にあり、年配の男性が座っていました。彼は旦那さんだそうで、もう退職していましたが以前は裁判官だったとの事です。すでに70歳を超えていました。彼女はフランス人の彼と結婚をしてからずっと、もう20年以上フランスで生活していると話してくれました。陶芸をしながら生活をしていて名前を“妙”(たえ)と言います。

こうして彼女が入れてくれたコーヒーを飲みながらいろいろと話をしていると時間を忘れいつの間にか2時間以上経っていました。

夕焼けが窓の外を真っ赤に照らすころ、一人の女の子が学校から帰って来ました。彼女の名前は“Noemie”(ノエミ)。妙さんの一人娘です。ノエミは当時17歳、高校生でした。彼女は見知らぬ僕がいても全然平気で人見知りなどしない明るい知的な感じの女性です。フランス語はもちろん、日本語もぺらぺらで会話には全く困りませんでした。

あつかましくもその日は夕飯までご馳走になって思う存分日本語を話すことができ、清々しい気分で薄暗い街灯の中、僕はレストランへ帰っていきました。ノエミとは、週に一度程度日本語とフランス語の交換授業をする約束していました。とは言っても彼女はすでに日本語はぺらぺらなので僕がフランス語を教わるだけになりそうですが。

こうして、フランスで初めて言葉の通じる友達が出来たのです。このことは僕にとって心強い支えになりました。


つづく

*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
by le-tomo | 2006-02-01 22:32 | 僕の料理人の道 21~30章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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