料理人の休日

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~第23章 上の歯と下の歯~  <僕の料理人の道>

ちょっと修行の話からそれますが...、ある日のことです。奥歯がずきずき痛むのを感じました。

“やばいなぁ。虫歯かな。保険も入ってないし歯医者なんていけないよなぁ。”
とにかく歯を丁寧に磨いてごまかそうとしましたがどんどん痛くなってきます。
最初のうちは持ってきた痛み止めを飲んで耐えたのですがとうとう我慢できず休みの日に歯医者に行くことを決意しました。オーナーにこのことを相談して近所の歯医者を紹介してもらったのですが正直とても不安だったのです。“保険に入っていない僕のような外国人は一体いくら治療費を取られるのだろう、言葉が分からないのに症状がうまく伝わるだろうか…。”

でも、歯の痛みは我慢できず思い切って辞書片手に歯医者へ向いました。病院らしくない石造りの建物の歯科医院にちょっと驚きましたが、辺りを見回せば全部石造りの建物だらけで、日本のように近代的なビルはひとつもなかったので当然の景色として違和感なく建っていました。

玄関を入ると女医さんが出てきて待ち時間もなくすんなり案内されました。彼女が先生でアシスタントは一人もいない様子。壁一面には子供の書いた先生の似顔絵や子供向けのポスターが張ってあります。多分、女性の先生なので優しく、子供たちから慕われているのでしょう。僕はもういい大人でしたが、なぜかその雰囲気にほっとしました。

こんな時は最新の機材がずらりと並べてある機械的でスタイリッシュな施設よりも先生の優しい笑顔と柔らかい雰囲気が不安を和らげてくれました。

さて、いよいよ治療台に座って治療に入ります。まず、僕は右の奥の下の歯が痛いということを伝え、口を開けました。しばらく先生が診察をして「上の歯を治します。」みたいなことを言ったのです。
“えっ!下の歯だって言っているのに。もしかして上の歯も虫歯があるのか?”
先生は更に「下の歯は治さない。」みたいなことを言っているのです。
“どうしよう、痛いのは下の歯なのに。”
不安は一つ的中しました。うまく症状を伝えられません。
困りました。先生はなにやら理由を説明してくれいるのですがさっぱり分かりません。

“しょうがない。先生に任せるしかないな。”
観念するしかないと思ったその時、突然先生は誰かに電話をしたのです。相手が出てしばらく話をした後、僕に受話器を渡したのです。

“えっ、どうしよう。”
フランス語が話せないのに受話器を渡されても困ります、が受け取ってしまいました。
とりあえず、「ボンジュール」と挨拶。
すると、「こんにちは。」という女性の声で返ってきました。

“えっ、こんにちは…?日本語?”


つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
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by le-tomo | 2006-01-25 19:33 | 僕の料理人の道 21~30章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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