~第20章 いつも前向きに~ <僕の料理人の道>
そんな安心感をもったまま渡仏2日目、フランスでの修行1日目は終わりました。そしてベットに横たわるとすぐに熟睡していました。
2日目、調理場へ行くと昨日と同じく誰もいなくて、とりあえず昨日習った通りにオーブンに火をつけまな板をセットしてみんなを待つことにしました。始業時間は9時と聞いていたのですがみんなが来るのはだいたい9時10分過ぎ。こんなこと日本では許されないことです。まぁ、そんなこと僕が言えるはずもなく自分だけでもきっちり時間を守ろうと思い、10分以上前には調理場に入いることに決めました。当然、1番のりです。そしてみんながすぐに仕事が始められるようセッティングを終え、みんなを待つ。まずはそれから…。
言葉が分からない以上すぐには戦力にならなさそうだったので、そうやって出来ることから少しずつやっていくしかないと思ったのです。
みんながぞろぞろ到着し、今日も昨日と同じように仕事が始まりました。仕込みをしながら分からない単語はまな板の横にある辞書を引くのですが、綴りが分からないので誰かに引いてもらうしかありません。それも営業が始まるとみんな忙しくなり僕はほとんど構ってもらえなくなるのです。
“何か出来ることは…。”
気は焦るのですが飛び交うフランス語をほとんど拾えず、ただただ邪魔にだけはならないようにと気を付けるのみ。そして、昨日よりは随分長く感じた一日が終わり部屋に戻りました。
昨夜、やっていけそうだと思ったばかりなのに今日一日でまた不安が僕を襲いはじめました。
“今日一日の仕事の流れをもう一度復習して明日は少しでも戦力になるよう務めよう。”
“いつも前向きに。”
それが本場フランスでフランス人の中でたった一人、言葉の分からない日本人が修行するために必要な心構えでした。
つづく
*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。