~第11章 シェフ・ド・パルティエ~ <僕の料理人の道>
そしてムッシュは 「頑張ってるな」 と一言。
「は、はい」 僕は慌てて返事をしました。そして、更にムッシュの言葉が続きます。
「小川、お前来月からギャルド・マンジェのシェフをやれ。出来るだろ?」
意外な言葉に 「は、はい」 また、慌てて返事を。
ギャルド・マンジェとは食材の監理とオードブルをつくるセクションです。そして、来月から僕はそのセクションのシェフ。
どうしよう…、まだ何にも分からないのに。
そうして、不安いっぱいでもチャンスを目の前に“成し遂げたい”という気持ちで更に頑張れる。
やめなくてよかった。
シェフと付いてますがあくまでギャルド・マンジェ(一番最初のセクション)のシェフですが、それでも20歳の僕には荷が重く、そして充分にやりがいのある仕事です。
挫折しかけた未熟な僕を踏みとどまらせた父の言葉。料理人としての才能が無いんだと勝手に諦めかけていた僕に、今しなければならないことの“道”を示してくれた稲葉さんの言葉。人の言葉の力とは凄いものですね。その言葉に今でも支えられ僕はシェフになったのですから。
つづく
*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。