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料理人の休日

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『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その2

『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』
いま思えばそもそものきっかけは、
九月ある日、ひとりの友人の誘いでした、
かれは言いました、「おもしろいユニットなんですよ、
サキソフォンは日本女性、
エレクトリック・ギターがフランスの男、
ふたりともまだ若くて、二十代半ば、
かれらの音楽がまたね、ジャズといえばジャズ、
クラシックといえばクラシック、
でもほんとうは"名前のついけられないどくとくの音楽"。
かれらは世にもふしぎなエリック・サティを演奏します、
小川シェフ、一緒に行きませんか?」





僕は、かれのしゃべる言葉の意味を
ほとんど理解できませんでした、
でも、半信半疑ながらおもしろそうな予感もしました、
そもそも僕は生演奏が好きです、
フランス修行時代、パリでほんのしばらく羽を伸ばした時期には、
アコーディオン音楽を聴きにビストロに通いつめたものです。
(正直言って料理はたいしたことありませんでしたが、
でも、目の前で演奏される、アコーディオンの、
蛇腹から生まれる熱い息のような音楽には、
僕は夢中になったものでした)。





今回のライヴはいったいどんな音楽なのか想像もつきませんでしたが、
僕は好奇心から、行きましょう、と返事をして、
日曜日の新宿駅で待ち合わせをしました。
そして僕らは小田急線ロマンス・カーに乗り込みました。
箱根湯元に着いたのは午後の早い時間、
僕たちは温泉町を歩き、蕎麦を食べ、
川の水音を聞きながら、町を散策しました。






夕方、美術館に向かうと、そこはほんとうに
瓦屋根の民家でした。
外観からはとても美術館には見えません。
どうやら、明治後期に建てられた由緒正しい日本建築だそうです。
画家、平賀敬氏が晩年過ごした家を、美術館にしたそうです。
玄関で靴を脱いで、中に入ると、
狭い廊下には、すでに亡くなった画家の、
絵が、ところ狭しと飾られています。






そこは平賀敬美術館、どの部屋にも平賀氏の絵や書が飾られています。
平賀氏の絵は、フスマやタタミを背景に、
西洋風の半裸の男女がユーモラスに、
そしてエロティックに描かれていて、
じっと見つめると、
この絵の世界に引き込まれそうな、
それでいて、引き込まれそうになると今度は拒絶されるような、
そんな感じがしました。
きっと、平賀氏の人生は、
この絵のように、自由奔放に、大好きなオンナたちとともに
生きていたんでしょう。
生きることと愛することと絵を描くことが溶け合っています。







この古い民家の美術館には、温泉までついています。
せっかくなので温泉に入りましょうか、
と、僕たちは湯にのんびりと漬かり、
湯あがりには縁側でくつろいで、
演奏がはじまるのを待ちました。
縁側の廊下ではニワトリのマークの蚊取り線香がたかれ、
箱根の山からおりてくる涼しい風が、
湯上りのほてった体をほどよく冷まし、
僕たちは、いつのまにか昭和の空気につつまれていました。






縁側から庭をながめているとき、
ちょっと後ろを振り返ると、
平賀氏が描いた西洋と日本、ユーモアとエロティックが
一枚の絵の中に混同している、不思議な絵画。
そして座敷の畳の上にはすでに、
ちいさなアンプつきのスピーカーとエレキギター、
使い込まれたサックスが、じっと、身をひそめて
これからはじまる、
KYというバンドの音楽を予感させていました。






つづく
by le-tomo | 2008-12-05 01:55 | エル ブランシュへ、ようこそ
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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