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料理人の休日

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ノワールの祭典

僕はいまでもはっきり覚えています、
2003年のある日、そのすばらしい肉と出会った日のことを。
厨房にはいるなり彼は僕に言ったものです、
「小川シェフ、この豚には絶対に満足しますよ、自信があります。」
手には、大きな段ボール箱を重たそうに持っていました。
彼は精肉業者で、僕は長く取引しています。
彼が、そこまで言うのなら、見るだけ見てみよう、
僕は、目の前に置かれた段ボール箱を開け、
白いガーゼにつつまれた大きな肉のかたまりを、
調理代の上に出し、その白いガーゼを剥ぎとりました。





骨も皮もついたままの肉のかたまり。
赤みがかかった白い皮と、
硬くて力強い太い骨がついた、
ほんのり透き通ったピンク色の肉の
内側にある、真っ白な脂。
僕はそっと、皮を撫で、
肉の断面を指で軽く押してみました。
脂の部分も触ってみました。
「ただものではないな」、
そして僕は自然に口をついていました、
「買いましょう、置いていってください。」






精肉業者は満足げに微笑んでいます。
僕も、感動しています。
ところで、僕は一息ついてから気がつきました、
「あれっ、ところでこの豚、なんていう豚なんですか?」
気がついたら、僕は、この豚を見て、触って、
名前も素性も訊かずに、買うと即答していたのでした。
業者はうれしそうに教えてくれました、
この豚は、ピエ・ノワール・デュ・ペイ・バスク種、
ポール・バスク という名前です。





僕が当時その豚の名前を知らなかったのもなるほど、
なぜなら、僕が極上のノワールと出会ったのは、五年まえの2003年のこと、
そして僕がフランスの一流レストランの数々で修行したのは1997年~2000年、
当時はまだフランスの一流レストランで豚は使われていませんでした。
バスク豚が脚光を浴び、極上食材の地位を獲得したのは2000年代に入ってからです。






バスクといえば、スペインとフランスにまたがる地域、
ベレー帽をかぶりふしぎな言葉をしゃべる人たちが
住むところとして有名です。
また作曲家モーリス・ラヴェルのおかあさんの故郷でもあります。
バスク豚はバスクの森のなかで自由にドングリを食べて育ちます、
ただし、世界で四十頭、
一ヶ月にぜいぜい四十頭程度しか出荷できない、
しかも極上仔羊に負けない、極上の豚。
そう、モン・サン・ミッシェルのプレ・サレ、
ポイヤックのアニョー・ド・レ、
シストロンのアニョー、
そしてその後、2008年僕の前に不意に現われた、
北海道の松山農場、柳生さんの育てる生後四ヶ月の仔羊にも負けない、
そんな極上のノワール(黒豚)なんです。









いったんこのバスク豚のすばらしさを知ってしまった僕は、
それ以来、チャンスがあればなんとしてでも
バスク豚を仕入れ、ふさわしい調理法を研究してきました。
なにしろ極上の仔羊に負けないほどの黒豚。
極上肉をラグーする(煮る)料理人はいません、
ブレゼ(蒸し煮)ももったいない、
もちろんロティ(ロースト)です。
しかもこの豚ピエ・ノワール・デュ・ペイ・バスクは、
普通の肉を焼くようなロティでは、優美な肉質を活かせません。
極上の仔羊をロティするような、
そんな感覚とデリケートな技術が必要なんです。







そしてこのバスク豚にふさわしいロティを会得すると、
こんどは僕は、
この極上のノワールを、大きな塊でロティしてみたい、
と思うようになりました。
なぜなら必ずやそれは従来の「ロースト・ポーク」の概念を覆す、
言葉を失うようなよろこびをもたらすはず。
エルブランシュのお客さんならば、必ずや、よろこんでくださるでしょう。






さて、この僕の長年あたためてきた企画が、
2008年11月25日、いよいよ実現させることができます。
この極上のノワールを、特別に、ほぼ一頭分、約14Kg仕入れます。
骨付きのバスク豚の大きな肉の塊を、
僕のロティで、完璧にジューシーに、
理想的な火入れで、焼き上げてみせます。











11月25日火曜日、
食事会『ノワールの祭典』
7時開場、7時半スタート。
@麻布十番 エルブランシュ
会費15000円 税・サ込み。
立食ビュッフェ形式
フリードリンク制








<オードブル>
・丹波産いのししとバスク豚のリエット
・洋梨とビゴール豚の生ハム
・フォワグラのテリーヌと柿のコンポート、ミント風味
・佐呂間湖産帆立貝のポワレ、イベリコ豚のチョリソーを添えて
・特製キッシュロレーヌ


<魚料理>
・越前漁港直送、ノドグロのポワレ、越のルビーのコンフィ添え


<メイン料理>
・バスク豚の骨付きロースト・ポーク
 *僕がみなさんの目の前で切り分けてサーヴいたします。



<デザート>
・バスク豚の故郷、バスク地方をイメージしたデザート三種






さぁ、みなさん、
バスクの森、木漏れ日、気持ちのいい空気を胸いっぱい吸って育った、
極上のノワールを、
とびっきり贅沢に豪快にいただく今回の食事会、
どうぞ、存分にお楽しみ下さい。







定員は20名様。
先着順での受付です。




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女性のひとりフレンチも、夜更けにワインが恋しい人も

Aile Blanche [エルブランシュ]
小川智寛

〒106-0045 港区麻布十番2-8-10 パティオ麻布十番5F
Tel:03-5439-4338 Fax:03-5439-4774
http://www.aileblanche.info/index.html






ご予約は、
03-5439-4338(16時以降)
までお電話で、
もしくは、ホームページ、ご予約フォームより
ご予約ください。
http://www.aileblanche.info/reservation.html



そのさいには、"11月25日 火曜日、
『ノワールの祭典』、
参加希望、○名で。"とお書きください。
by le-tomo | 2008-11-19 11:49 | エル ブランシュへ、ようこそ
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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