父と僕とトマトの話 第四話
僕は、父と少し会話をしました。
僕はあたり一面の砂地の畑を見て父に尋ねました、
「この辺は田んぼじゃないんや。なんかの畑?」
父は答えます、
「そうや、この辺は砂地やから、田んぼはできんのや。
たぶん、らっきょう畑がほとんどやろ。」
目の前に広がる、この砂地の畑集落が、
白方町だったのです。
父は言いました、
「智寛、明日からひとりで運転しいや。」
翌日、僕は、朝早く起き、車に乗り込みました。
僕はすでに高校卒業間近で、
あとは卒業式をむかえるだけ、
それまではずっと休みでした。
僕は、車に、物置から探し出してきた、
むかし買ってもらった釣竿をのせました。
僕は思い出していました、
東尋坊のある三国町の堤防まで、
小さい頃の僕ら兄弟を連れて、
父はよく釣りに連れて行ってくれたことを。
僕はもう道順も覚えたので、
コドモのころ楽しかった魚釣りに出かけることにしました。
途中で、餌と仕掛けを買って、
そして、砂地の畑が広がる白方町を通って。
魚釣りをしながら、これから自分に
どんな人生の体験が待っているんだろう、
とぼんやり思っていました。
つづく