料理人の休日

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~ 第97章 いよいよ当日 ~  <僕の料理人の道>

二大シェフコラボレーションイベント当日。
僕は昨日からワクワクしてよく眠れませんでした。
“こんなイベントに参加できるなんて、夢見たい!”
いつもより、早く起きて、
ムーラン・ド・ムージャンの厨房に駆け足で向かいました。
まだ誰もいない厨房で、僕はまな板をセットし、
みんなの来るのを待っていました。
最初に来たのは、シェフパティシエのフィリップでした。
デザート担当というより、肉料理担当といった感じの、
彼もシルヴァンと同じくらい大男で、丸坊主の28歳。
彼がくるやいなや、次から次へとスタッフが集まってきました。
この日のメンバーは二十人弱といったところでしょうか。


シェフのショレィ氏が自慢のフェラーリでやってきて、
みんなをデシャップ前に集めました。
「今日は大事な日だ。
ムーラン・ド・ムージャンにとって歴史に残る一日になるだろう。
気を引き締めて、打合せどおりに、完璧に仕事をこなしてくれ。」
目の前にいる多種多様な国から集まった精鋭たちの前で、
大きな声を張り上げました。
「ウィ、ムッシュ!」
いっせいに全員がフランス語で返事しました。
そこへ、オーナーシェフのロジェ・ヴェルジェ氏が、
レ・ザンバサドゥールのドミニク・ブシェ氏と共に現れました。
「紹介しよう。
オテル・ド・クリヨンのレ・ザンバサドゥールの総料理長、
ムッシュ・ドミニク・ブシェだ。
私は、今日のこのコラボレーションを、
彼と、そしてみんなと、大いに楽しみたい。」
彼の声は少し低めで、落ち着きのある澄んだ声でした。


そのあと、みんなは一斉に自分の持ち場に行き、
200人近くの予約があるディナーのために、
いつも以上に集中して準備を始めました。
僕の役割は、魚料理に使うスズキを三枚におろすことからでした。
レ・ザンバサドゥールから来た
色白で背がひょろっと高いスタッフの指示に従って作業を進めていきます。


張り詰めた緊張感の中、
ベルジェ氏とブシェ氏は、
ゆっくりと各セクションを見回り、
厳しくチェックし、細かい指示をしながらも、
どこかにこやかで楽しそうに見えました。
ブシェ氏は僕の後ろから、僕のさばいたスズキを見て、
「あららら、骨に全く身がついてないじゃないか。
これじゃあ、骨からいいダシが出ないじゃないか。」
と、笑いながら話かけてきました。
思わず、
「す、すいません。」
と謝ると、
「いいんだよ。さすがジャポネ。
魚を渡したらみんなサシミになっちゃうな。ワハハハハッ。」
と、大声で笑いながら去っていきました。





いよいよ、ディナーがはじまります。
レストランの駐車場は、
瞬く間に、まるで車の博物館のように、
フェラーリやカウンタック、リンカーンやリムジンで一杯になりました。
世界各国からセレブと呼ばれる人たちが、
今日の二大シェフコラボレーションを体験しようと集まってきます。
まるで、カンヌ国際映画祭の会場のように、
エナメルの靴を履いたムッシュに手をとられ、
背中の大きく開いたドレスを着たマダム達が、
毛足の長い絨毯を、ハイヒールで音もたてずに踏みしめながら、
テーブルへと案内されます。


そのころ、厨房では料理人たちが忙しく動き、
鍋の音はだんだん大きくなっていました。
選ばれた精鋭たちの集中力いっぱいの息遣いが、
重たい鍋やフライパンがぶつかるガチャガチャする音が、
今からはじまる華やかで贅沢なディナーの幕開けを、
まるで盛り上げるかのように。
同時に僕の鼓動もどんどん早くなっていくのが分かりました。
どんどん、どんどん。
僕はうれしくてたまりませんでした。


つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
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by le-tomo | 2009-01-11 23:43 | 僕の料理人の道 91~103章

2009年始まってますね。

明けましておめでとうございます。

もうすでに2009年は始まってますね。
エルブランシュも6日から営業はスタートしています。



今年のエルブランシュのテーマは、

「すばらしい結婚」

弟の選ぶワインと僕の料理のマリアージュ企画を中心に、
お客様に楽しんでいただけるような企画をいろいろご用意いたします。


今年もお客様に愛されるレストランを目指して、
四人のスタッフが全力でエルブランシュを盛り上げていきますので、
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


エルブランシュ
シェフ 小川智寛
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by le-tomo | 2009-01-10 12:49 | エル ブランシュへ、ようこそ
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by le-tomo
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