料理人の休日

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『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その6


僕は厨房に立って料理を作りながら、
KY のふたりの演奏を聴いています。
もちろん料理は開演前に仕込みも準備もしているのですが、
それでも音楽と料理は、同時進行しています。
いつのと違ったふんいきが、僕をわくわくさせます。






まずスパークの乾杯からはじめ、
演奏は三部構成、
料理も(演奏と交互になる形で)
バンケットフルコース仕立てでお出しています。







演奏と演奏の合間、
仲野麻紀さんは、目を瞑り、瞑想していました。
他方、ヤンは、料理をパクパク口いっぱいにほうばっていました。
なんてタイプの違うふたりなんだろう...
僕はこの性別もタイプも違うふたりが、
あんなに深くからみあった音楽を創り出すことを不思議に思いました。
そして、音楽と料理という、
全く違うジャンルの者同士が創り出そうとしているこの「時」。
この感覚...
そう、この感覚が、僕のなかの何かを目覚めさせる、
そんな感じでした。





音楽食事会は大盛況、
お客さんはKYの音楽に惹き込まれ、
未知の世界に誘惑され、
どの料理もすべてきれいに食べ尽くされ、
アンコールは三度も繰り返され、
拍手は鳴り止みませんでした。








会も無事終了し、僕はカウンターごしに、
KYのふたりとようやくくつろいで話をすることができました。
まずギターのヤンが僕に言いました、
「すごく楽しかった。
ふつうはミュージシャンはお客じゃないから、
高級レストランで演奏しても
サンドイッチしか食べられないこともあるんだ。
それがきょうは、
僕らも、お客さんと小川シェフの料理を食べて、
小川シェフのイメージする古代ギリシアを、
僕らも味わいながら、演奏できた。
それがすごくたのしかった。」


僕も言いました、
「僕も、はじめての経験でしたけど、
厨房でふたりの演奏を聴きながら料理を作るのは、
わくわくしましたよ。」



ヤンは言いました、
「古代ギリシアの音楽はね、
演奏譜だけは残っているけれど、
それは楽譜じゃないし、
当時の楽器のことも正確にはわからないから、
古代ギリシアの音楽が、ほんとうにどんな音楽だったかは、
けっきょく誰にも(正確には)分からないんだよ。
僕ら後世の人間にできるのは、残された資料を読んで、
現代のギリシアの音楽に耳を傾け、
古代ギリシアの音楽をイメージすることだけ。
サティの古代ギリシアにしても、
それはサティのイマジネーションの世界だからね。
でも、僕はそこがおもしろいと思うんだ。
そしてそのサティを演奏する僕らもまた、
サティをきっかけにして生まれた僕らのイメージを
演奏しているわけ。
たぶん小川シェフの再現する古代ギリシア料理も
僕らのやってることと同じだと思う。」





僕は言いました、「さいわい古代ギリシアの料理は、
レシピだけは残ってるんですよ、
でも、レシピってもともとメモのようなものだから、
作る方がイメージで補わなければ、料理の世界は見えてきません、
しかも古代ギリシアの料理は、
僕らが知ってるヨーロッパの料理とずいぶんかけ離れていて、
むしろアジアっぽい印象があるんです、
魚醤とかアサフェイダ(ヒング)なんか使いますからね。
僕は古代ギリシアのレシピを見ながら、
自分なりの、そして自分が食べて最高においしいと思えるような、
古代ギリシア料理をイメージして、今回、作ったんですよ。」






サックスの仲野さんは、ふと気づいたように言いました。
「料理ってアートなんですね。
いつもはそんなこと思いもしないで、食べていたけれど。」







僕は、その言葉に不意を突かれました。
そのとき僕も、同じ気づきをしたからです。
そう、人はよく、料理は芸術だ、なんてことをいいます。
でもこれまで僕は、料理が芸術だなんて思ったことはありませんでした。
それどころかそんなふうに考えることを、
なにか違うんじゃないか、
料理人としてちょっと不純なんじゃないか、
とさえ(不遜にも僕は)思っていました。
なぜって、料理人は客の望む、最高に美味しい料理をつくることが仕事。
作品というよりも商品だと思っていました、
そしてそう思っていてこそ、良い仕事ができるんだ、と。
でも、この食事会が終わり、
仲野さんのそのひとことを聞いて、僕はハッとしました、
あ、この食事会自体がアートだったんだ。
それぞれが創造力と表現力を精一杯ふりしぼり、ひとつの世界を創る。
これがひとつのアートだったんだ。






そして僕は理解しました、
わけのわからないもののなかに手をおそるおそる伸ばし、
正しいのか間違ってるのかも分からないなかで、
勇気をもって自分なりに考え、
仮説をたて、実験し、工夫し、
バランスを整え、仕上げてゆく。
自分が思い描き想像のなかで築きあげた、
ひとつの世界を示す。
自分が形にすることで、
はじめてひとつの世界が現われ、
そのとき驚きと感動が生まれる。






もしもそれがアートであるならば、
たしかに料理人にもアーティスト的な要素があります。
たしかに、ある。
そうか、そういうことだったのか。
僕は今、三十五歳。
僕よりもっと早くに、
「料理は芸術だ」ということを分かっている料理人もたくさんいるでしょう。
いまさらながら、僕は料理の世界に芸術性を感じ、
そして、僕の中の未知なる可能性を見出したように思えました。







古代ギリシアとエリック・サティを主題とした
KYの音楽と僕の料理のセッション。
それは無限の創造力と、新たな表現力と、
そして未知なる可能性を僕に与えてくれました。
そんなすばらしく意味のある食事会に参加してくれたみなさん、
ありがとうございました。
ともに過ごした時間を大切に、
僕の料理はこれから少しづつ変わってゆくはずです。
僕は今でもときどき、厨房でオーヴンの温度設定をしたり、
ソースを仕上げているとき、
KYの演奏するエリック・サティの音楽に耳を傾けています。
自分の耳にだけ聴こえる音楽を、心のなかで。





おわり。
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by le-tomo | 2008-12-31 12:12 | エル ブランシュへ、ようこそ

『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その5

そしていよいよ当日。
僕はいつもより二時間早くお店に入り準備を始めました。
準備はほぼ万全、「ほぼ」というのは、
僕は、準備段階では、少しだけ不完全な箇所を残しておきました。
なぜなら、僕はこの食事会の仕上げは、
KYのふたりと会ってからにすることを決めていました。
そう、最後の仕上げはこの日のふたりを感じてから。
そう、彼らと会ったときの感覚を素直に受け入れ、
自分の感性を信じ、
最後の塩をふり、ソースを煮詰め、食材に火を通す。
もしも最初に予定していた仕上がりと多少変わってもそれはそれでかまわない。
大切なのは、感性のおもむくままに料理を仕上げること。
それが、彼らKYと一緒にひとつの世界を、同じ時を創りあげるということです。
なぜなら、KYの音楽は、
感性に正直で真っ直ぐで、とても純粋で、
僕もそんな気持ちで料理を創りあげることにこそ、
意味がありました。







この日のスケジュールと料理をご紹介しましょう。






************





『僕らは古代ギリシアに恋してる。
・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』



1)スパークで乾杯。





2)サティに捧ぐ白いオードヴル 10分~15分

カブの冷たいスープ、カルダモンの香りを添えて

フロマージュブランとマグロのコンフィのムース

的鯛のポッシェ、ムースリーヌソース

サロマ湖のホタテのヨーグルトソース

香鶏の胸肉のショーフロア


※サティは、わたしは白い食物だけを常食する、
と、うそぶきました。






3)ky による演奏 ♯1セット 20分





4)古代ギリシア料理の創造的再現オードヴル

アスパラガスのパティナ

ヤリイカのイキシア

鯖とシェーブルチーズのオーブン焼き

マグロのステーキ エピテュルムソース

アーティチョークのローマンドレッシングソース和え

鶏肉のパティア




※アーティーチョークのローマンドレッシングソースは、
砂糖のまだない時代です。
甘みには蜂蜜を使い、ハーブで香りを添えます。

アスパラガスのパティナは、
アスパラガスをピューレにして、
卵に混ぜ合わせます、
アスパラガスの自然な甘みが卵によく合います。
現代でも十分通用する料理です。


マグロのステーキ、エピキュルムソースは、
黒オリーヴをふんだんに使った料理。
地中海らしいエッセンスを感じる一品です。

ほかの料理も古代ギリシャ時代にタイムスリップするような、
ロマンあふれる料理、
オードヴルにて存分に楽しんでください。
僕が今まで勉強してきたフランス料理とは
全く違う未知なる料理ですが、
僕の技術と知識をフル活動して、古代の料理に挑みます。




5)ky による演奏 ♯2セット 30分





6)メイン 仔羊 豪快にいきます。
おなかいっぱい召し上がってください。   

オーストラリア産(生後八ヶ月の)仔羊の骨付き背肉のロースト、
赤ワインソース


オーストラリア産(生後八ヶ月の)仔羊のジゴ(腿肉)のロースト、
ローズマリーやセージ、タイムを塗ってロースト。  


※背肉の繊細な肉質を最大限活かすよう、細心の注意を払って、
一度単位の温度管理で最高の状態で焼き上げます。
ソースは、濃厚で繊細な上質の赤ワインをたっぷり使った、
仔羊の肉を包み込むようなまろやかなソースを併せます。
もも肉は地中海風にブレンドしたハーブをたっぷりぬって、
高温と低温を交互に使い分け、
ジューシーに、そして香りよくロティ。
かぶりつきたくなるような一品です。
古代ローマの最高の料理人よりもだんぜんおいしく焼きます。



7)ky による演奏  ♯3セット 30分。





8)デザート3種。


サティに捧ぐ洋梨のタルト

古代ギリシアのチーズケーキ


そして秋の果実を使ったデザートをなにかもう一品。




************


さぁ、お客さんも続々と集まり、
いよいよスタートです。



つづく
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by le-tomo | 2008-12-29 12:27 | エル ブランシュへ、ようこそ

『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その4

Kyの音楽は自由な創造力と表現力、
未知なる可能性のかたまりのような音楽でした。
僕は何かを感じながらも、
それが何なのかは分かりませんでした。





隣にすわっていた友人が突然、ぼそっと言いました。
「小川シェフ、エルブランシュにKY をお呼びして、
音楽食事会やるのって、いかがですか?」
実は、彼は、KYのふたりと仲の良い友人でした。
僕は、そのアイディアに驚き、
一瞬なんと答えていいかわかりませんでした。
が、たしかにエルブランシュにお客様が集まり、
彼らが彼らの不思議で創造的な音楽を演奏し、
僕が料理をふるまう光景を想像すると、
それはいかにも楽しそうな光景でした。
しかも友人は、「ねぇ、小川シェフ、
いい企画じゃないですか、
ちょっとお願いしてみましょう。」
と、たいそう乗り気です。
僕もだんだんわくわくしてきました。
そこで、友人が話をもちかけ、
彼らは、この突然のお願いにこころよく承諾してくれて、
そこでKYと僕によるセッション食事会が実現する運びになりました。








その後、KY のふたりと僕と、仲をとりもつ友人とで打ち合わせをして、
タイトルは決定しました、
『僕らは古代ギリシアに恋してる。
・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』
日程は、2008年10月28日@エルブランシュ。
「エリック・サティ」という(古代ギリシアを愛した)作曲家をいわば仲人に、
KYは音楽で、僕は料理で、それぞれの想像力と表現力をふりしぼり、
ひとつの世界(古代ギリシアへの夢)を創り出す、
そんな主題の食事会です。








さて、日程が決まってから僕は、
CDでエリック・サティの曲を聴き、
(ふうがわりなタイトルのふうがわりな曲ばかりでした!)、
そして僕はイメージしました、
シクルハットと燕尾服の気難しそうで皮肉なユーモアをそなえた作曲家が、
コウモリ傘を抱えてパリの街をうろつく姿を。
そして、その彼のイメージする古代ローマを。
同時に、僕は、そのサティをサックスとエレキギターで演奏する
KYのイマジネーションを感じながら、
遥か二千年前の地中海を想像し、
僕なりの表現力で古代ギリシアの料理を再現しました。








「わたしは白い食物だけを常食する」
とうそぶいていたエリック・サティのために、
僕は白い料理もいくつか考えました。
そして同時に僕は、KYのふたりの音楽に潜む、
未知なる可能性を、僕のなかにも見出そうとしました。
そう、この食事会は僕にとって、
僕の中の可能性を見出すための修練のようにも思えていました。
この食事会が終わったとき、
僕には、新たに光り輝く可能性が見出せるのでは・・・。
それは僕にとって「冒険」でもあり、
「希望」でもありました。
しかし、同時に、不安もまたありました、
ほんの少しではありましたけれど。






つづく
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by le-tomo | 2008-12-29 12:26 | エル ブランシュへ、ようこそ

『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その3

さて、十七時。
いよいよ、KYの演奏がはじまりました。






エレクトリックギターと、そしてアラブの楽器、ウードを演奏するのは、
フランスのブルターニュ出身のヤン・ピターさん。
そしてサックスフォンとクラリネットを演奏するのは、
日本人女性の仲野麻紀さん。
ギターのヤンは、
トムソーヤの冒険の主人公、トムソーヤみたいな感じの、
ひょろっと背の高い、やんちゃそうなフランス人男性です。
サックスの仲野さんは、
一見、美少年のような、外人のような、
ちょっとハスキーな声がセクシーな日本人女性です。





歪んだ音とクリーンな音を混ぜ合わせたようなギターの音色、
枯れた感じの音を、ときには力いっぱい、ときには静かに、
波打つように奏でるサックスの音色。
僕は、そのとき、はじめてKYの音楽に触れました。
なんて、激しい音色なんだろう。
なんて、穏やかな演奏なんだろう。
なんて、神秘的なんだろう。




トルコとか、アラブとか、インドとか、
そんな中東の音楽ような感じにも聞こえるし、
(僕は中東の音楽を知りません。ただの想像ですが。)
はたまた、JAZZのような黒人音楽のようにも聞こえます。




これが、フランスの作曲家、エリック・サティの曲?
僕は、そのときエリック・サティという作曲家を知りませんでしたが、
少なくとも、クラッシック音楽には聞こえませんでした。
それは、彼らKYの演奏によるものなのか、
エリック・サティの作曲によるものなのかは分かりません。
僕はKYの音楽を聞いて、体が震えました、
はじめて聞いたKYの音楽に。






それはまるで、
僕がブルターニュのレストランで働いてたときにつくっていた
「ラングスティーヌ(手長海老)とリ・ド・ヴォーのパイ包み焼き」
海と大地という、全く違う環境で生まれ育ったふたりが、
パイ生地で包むことで、ひとつになって完成する料理。
まだ大人になりきっていない、子供の牛にしかない胸腺肉、
リ・ド・ヴォーはヤン。
大人になるとなくなってしまう、少年のやんちゃなで純粋な心を、
彼は今でも大切に持ち合わせています。
一方、ラングスティーヌはスマートで透き通るような殻(肌)をもち、
軽く火を入れると柔らかく甘く、セクシーで美味。
そんなサックスプレイヤー仲野さん。
ふたりが、ひとつの、価値観というパイの中で、
お互いの個性を大事にしながら焼きあがり、
ステージというお皿の上で、
銀のナイフでそっと、そのパイが開かれたとき
熱々の湯気と一緒に、エネルギッシュな香りと風味が、
聴いている者の五感を刺激します。





この料理は口に運ぶたびに、
パイとラングスティーヌとリ・ド・ヴォーのバランスで、
さまざまな風味で楽しませてくれます。
一口目は、ラングスティーヌの味わいが、
サックスフォンの波打つような音のようにのどを通り、
二口目には、リ・ド・ヴォーの柔らかい食感が、
なめらかなギターのメロディのように、
いつまでも口の中に心地いい余韻を残します。
ソースはもちろん、エリック・サティ。
どこか掟やぶりな、チャーミングなソース。
kyはエリック・サティソース以外にも、
このすばらしいパイ包み焼きを楽しませるソースを、
いくつか持っているようでした。






「パイ包み焼きなんて古くさい」と思われるかもしれませんが、
この料理は、いつの時代になっても忘れられない美味しさがあります。
それに、中身はそれぞれ料理人の創造力で、
自由にコンビネーションできます。
パイの形も大きさも料理人が自由に表現できる料理です。





そう、kyの音楽は、
まさに自由な創造力と表現力、
そして未知なる可能性のかたまりのような、そんな音楽でした。





つづく
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by le-tomo | 2008-12-08 05:30 | エル ブランシュへ、ようこそ

2008年 年末特別メニュー 12/25~30

2008年、年末特別メニューをご案内いたします。


伊豆下田から届く、日戻りの地金目を、
500万年前の天然塩でマリネした、カルパッチョ。
フランスから届いたフレッシュのフォワグラを贅沢に裏ごしして作った、
茶碗蒸しのようなフラン。
30時間かけてつくった、ダブルコンソメスープを注いでお召し上がり下さい。
魚料理には、冬の味覚、真鱈と、ねっとりとした白子をムニエルにして、
さわやかなオレンジの香りのソースをあわせて、
肉料理には、おなじみのビュルゴー家の誇るシャラン鴨を、
いつもとは趣向を変えてグリオットチェリーをつかった赤ワインソースでお楽しみ下さい。
デザートも、魅力たっぷりのチャーミングなデザートをご用意いたします。
今年もあとわずか、みなさまとお会いできることを楽しみにしています。



年末特別メニュー 10,000円(税込)12月25日~30日


<アミューズ・ブーシュ>
季節の一口前菜

<冷たいオードブル>
下田の地金目鯛のカルパッチョ
契約農家から届いた野菜のマリネ
ハーブのサラダを添えて

<温かいオードブル>
フォワグラのフラン
30時間かけてつくったダブルコンソメスープを注いで

<魚料理>
真鱈と白子のムニエル
ほうれん草のソテー
オレンジの香るヴァンブランソース

<肉料理>
ビュルゴー家の誇るシャラン鴨のロティ
グリオットチェリーの赤ワインソース

<プチデザート>
アールグレイのクレームブリュレ

<デザート>
本日のデザート
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by le-tomo | 2008-12-06 12:50 | エル ブランシュへ、ようこそ

『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その2

『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』
いま思えばそもそものきっかけは、
九月ある日、ひとりの友人の誘いでした、
かれは言いました、「おもしろいユニットなんですよ、
サキソフォンは日本女性、
エレクトリック・ギターがフランスの男、
ふたりともまだ若くて、二十代半ば、
かれらの音楽がまたね、ジャズといえばジャズ、
クラシックといえばクラシック、
でもほんとうは"名前のついけられないどくとくの音楽"。
かれらは世にもふしぎなエリック・サティを演奏します、
小川シェフ、一緒に行きませんか?」





僕は、かれのしゃべる言葉の意味を
ほとんど理解できませんでした、
でも、半信半疑ながらおもしろそうな予感もしました、
そもそも僕は生演奏が好きです、
フランス修行時代、パリでほんのしばらく羽を伸ばした時期には、
アコーディオン音楽を聴きにビストロに通いつめたものです。
(正直言って料理はたいしたことありませんでしたが、
でも、目の前で演奏される、アコーディオンの、
蛇腹から生まれる熱い息のような音楽には、
僕は夢中になったものでした)。





今回のライヴはいったいどんな音楽なのか想像もつきませんでしたが、
僕は好奇心から、行きましょう、と返事をして、
日曜日の新宿駅で待ち合わせをしました。
そして僕らは小田急線ロマンス・カーに乗り込みました。
箱根湯元に着いたのは午後の早い時間、
僕たちは温泉町を歩き、蕎麦を食べ、
川の水音を聞きながら、町を散策しました。






夕方、美術館に向かうと、そこはほんとうに
瓦屋根の民家でした。
外観からはとても美術館には見えません。
どうやら、明治後期に建てられた由緒正しい日本建築だそうです。
画家、平賀敬氏が晩年過ごした家を、美術館にしたそうです。
玄関で靴を脱いで、中に入ると、
狭い廊下には、すでに亡くなった画家の、
絵が、ところ狭しと飾られています。






そこは平賀敬美術館、どの部屋にも平賀氏の絵や書が飾られています。
平賀氏の絵は、フスマやタタミを背景に、
西洋風の半裸の男女がユーモラスに、
そしてエロティックに描かれていて、
じっと見つめると、
この絵の世界に引き込まれそうな、
それでいて、引き込まれそうになると今度は拒絶されるような、
そんな感じがしました。
きっと、平賀氏の人生は、
この絵のように、自由奔放に、大好きなオンナたちとともに
生きていたんでしょう。
生きることと愛することと絵を描くことが溶け合っています。







この古い民家の美術館には、温泉までついています。
せっかくなので温泉に入りましょうか、
と、僕たちは湯にのんびりと漬かり、
湯あがりには縁側でくつろいで、
演奏がはじまるのを待ちました。
縁側の廊下ではニワトリのマークの蚊取り線香がたかれ、
箱根の山からおりてくる涼しい風が、
湯上りのほてった体をほどよく冷まし、
僕たちは、いつのまにか昭和の空気につつまれていました。






縁側から庭をながめているとき、
ちょっと後ろを振り返ると、
平賀氏が描いた西洋と日本、ユーモアとエロティックが
一枚の絵の中に混同している、不思議な絵画。
そして座敷の畳の上にはすでに、
ちいさなアンプつきのスピーカーとエレキギター、
使い込まれたサックスが、じっと、身をひそめて
これからはじまる、
KYというバンドの音楽を予感させていました。






つづく
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by le-tomo | 2008-12-05 01:55 | エル ブランシュへ、ようこそ

『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その1

ある日、僕はふしぎな音楽を演奏する二人と出会い、
そのふしぎな音楽を演奏する二人は、
エリック・サティというこれまた奇妙な作曲家の曲を演奏していました。
僕にとっては、それまで聴いたこともないような変わった音楽なのに、
(いろんなふうがわりなものがいっぱい押し寄せて塊になったような音楽なのに)
いつのまにか僕はところどころでハッとしたり、微笑んだり、
わ、これからどうなるんだろう、
と、彼らの音楽に巻き込まれていました。
しかもいったいどういうことでしょう、
演奏会が終った後には、
演奏家の彼らと料理人の僕が、
セッション音楽食事会をやる企画まで決まってしまいました。
そう、2008年10月29日、水曜日、
『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』
@エルブランシュのことです。








いったい僕らに起こったのか、
僕らはなにをおもいたったのか、
すべてはエリック・サティのいたずらなのか、
いまでも僕にはわからないことだらけです。
でも、僕も、そして音楽家のふたりも、
そしてあの日、エルブランシュに、
聴きに、食べに来てくださったお客さんも、
それぞれおもいおもいに驚きに満ちた、
おもいがけない時間を過ごしたみたいです。
音楽食事会を主催し、
彼らと一緒に料理でセッションに参加した僕自身、
いまでは、ふしぎな夢をおもいだすような、
そんな気持ちがするほどです。
僕は、いま、あの、めずらしい夢を、
もう一度、順を追って、おもいだそうとしています。
キーワードは、エリック・サティ、古代ローマ、
いいえ、もしかしたらそれはアートかもしれません。







『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』
僕らはこの日のために、おもいおもいに史実にあたり、
想像力を駆使して、
二千年むかしのギリシアの音楽と食をイメージして、
お客様たちを巻き込みながら、
ひとつの夜を作り上げてゆきました。
まさかこんな奇想天外な音楽食事会をやるなんて、
僕自身おもってもいませんでした。
あの後、いろんな人からいろんな感想をいただきました。
どの言葉にも、驚きとおもいがけない出会いの感動が
伝わってきました。
そこで、今回から数回にわたって、
この音楽食事会がどんなふうに発案され、
具体化していったのかを、お伝えしようと思います。




つづく
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by le-tomo | 2008-12-04 12:10 | エル ブランシュへ、ようこそ

12月及び年末年始の営業のご案内

<12月の定休日>

7日(日)、8日(月)
14日(日)
28日(日) *21日(日)は営業いたします。
年内は30日(火)まで営業いたします。


<12月の営業のご案内>

20日(土)までは通常営業。
21日(日)は、通常メニュー+クリスマススペシャルメニュー
22日(月)~24日(水)は、クリスマススペシャルメニューのみ。
25日(木)は、クリスマススペシャルメニュー+年末特別メニュー
26日(金)~30日(火)は、年末特別メニューのみ。
 
営業時間:21日(日)~29日(月)は24時(L.O)
       最終日30日(火)のみ22時(L.O)

*クリスマススペシャルメニューはこちら>>>
年末特別メニューはこちら>>>

<2009年、年始の営業のご案内>

年始の営業は、1月6日(火)から開始いたします。
6日(火)~8日(木) 18時(OPEN)~24時(L.O) 新年特別メニュー
9日(金)より、営業時間及びメニューは通常通りとなります。
*新年特別メニューは後日、このブログにてご案内いたします。


みなさまのご来店心よりお待ち申し上げます。
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by le-tomo | 2008-12-02 02:43 | エル ブランシュへ、ようこそ
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東京のエルコーポレーションと福井のマイナーリバーズの2つの会社を経営し、エルブランシュのオーナーシェフをしています。


by le-tomo
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