料理人の休日

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僕らの料理セッション ~第一話~

2008年2月27日(水)、
僕と黒羽シェフが、ずっとずっと願っていた“料理セッション”が、
麻布十番にある、僕のお店「エルブランシュ」にて、
みなさまの期待を超えるほどの大成功に終わりました。

こんなにワクワクしたことはないと思います。
料理の打ち合わせから当日に至るまでの準備、
そして、何より厨房で黒羽シェフと並んで料理をつくるというとてつもない幸せな時間、
僕にとって、こんなにワクワクするイベントは、まるで夢のようでした。



この、僕と黒羽シェフのコラボレーションは、
去年の6月のある日曜日、
僕たちエルブランシュのスタッフみんなで、休日の楽しみとして、
レンタカーを借りて、三島にある「マンジャ・ペッシェ」に
黒羽シェフの料理を食べに行ったのがはじまりでした。
この日は雲ひとつない晴天に恵まれていたことを、はっきりと覚えています。

黒羽シェフのことは以前から知っていて、
今までにも何度かマンジャ・ペッシェで食事をしたことがありました。
彼の料理はシンプルながらもおしゃれで、
素材の味を極限まで引き出す料理センスには、いつも感心していました。
この日は、僕が独立してから、初めて黒羽シェフのところに訪れた日でした。

美術館を一通り見学して、お腹をすかしてからレストランに入ると、
若いサービスマンの方が席まで案内してくれました。
席に着くと、テーブルのデコレーションプレートの上に、
ローズマリーがそっとさりげなく置いてありました。

ほどなくして、黒羽シェフがいつもの笑顔でテーブルまで挨拶に来てくれました。
「おめでとうございます。」
と、第一声で黒羽シェフは僕の独立を祝ってくれました。

食前酒にはイタリアのスパークリングワインで乾杯し、
運ばれてくる黒羽シェフの料理の数々は言うまでもなくすばらしいものでした。
力強く主張する三島の野菜たち、
とびっきり新鮮な沼津漁港からとどく天然の魚介。
どれもこれも、素材を大事に料理を考えてるんだなぁとはっきりとわかりました。
口の中に入れると瞬間的にとける生姜のシャーベットは印象的でした。

そんな素晴らしい料理を食べ終え、
濃いエスプレッソコーヒーを飲みながら、すっかり暗くなった窓の外を眺めていると、
黒羽シェフが再びテーブルまで来てくれました。

僕は黒羽シェフと、料理のことやお店のことを話しながら、
ふと、こんなことをつぶやきました。
「黒羽さんと一緒にコラボレーションできたらいいなぁ。」
「いいですね。やりましょうよ。」
黒羽シェフは即答でした。

こうして、“僕らの料理セッション”の計画が始まりました。



つづく
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by le-tomo | 2008-02-29 06:02 | 僕らの料理セッション

僕らの料理セッション、”ヨーロッパ最高の料理を求めて”

いよいよ具体化してきました、
2人のミュージシャンが出会って、
一緒にセッション演奏を繰り広げるように、
僕と、マンジャ・ペッシェの黒羽シェフが行う、
一夜限りの料理セッション。
ヨーロッパ最高の料理を求めて。
2008年2月27日(水)@エルブランシュ。

黒羽シェフは、イタリア料理の新しい波を作った
あのマルケージで修行し、
さらにはエル・ブジでも修行して、
現在はマンジャペッシェで、
日高良実シェフとともに、
新鮮でおいしい魚を使った、
シンプルでさり気なく遊び心を感じさせる
おしゃれな料理を作っておられます。
僕たちはふたり並んで厨房に立って、
お客様のためのひとつのコースを
競い合って構成します。

僕はこのコースのメニューを考えるのがたのしくて仕方ありませんでした。
ふたり合わせて、こんなコースができあがりました。






<オードブル>

広川さんの三島野菜のバーニャカウダー
(黒羽徹)

鮑、車海老、帆立貝をボルドー産キャビアで和えて、
カリフラワーのムースとコンソメのジュレを添えて
(小川智寛)

プロシュートで巻いた駿河湾の手長海老と
ホワイトアスパラガス、バナナのソテーのサラダ仕立て
薩摩軍鶏の卵黄と25年熟成のバルサミコ酢のソースで
(黒羽)

つぶ貝のタリオリーニ、ブッタネスカ風
(黒羽)

マダムビュルゴーのシャラン鴨のロテイと急速冷却したフォワグラのポワレ
ピーチ蕪と香り高いフランボワーズヴィネガーのソースで
(小川)

<メイン料理>

萩から届いた天然平目と三島野菜のスキレット焼き
シシリー産マグロのカラスミと共に
(黒羽)

北海道産生後8ヶ月の仔牛のポワレに越前こたけと勝山水菜を添えて
トリュフの香りの赤ワインソース
(小川)

<デザート>

杉本さんの小松菜のスープに
カルダモン風味のパンナコッタとハチミツのジェラートを添えて
(黒羽)

表面をキャラメリゼしたほろ苦いチョコレート
苺のマセドワーヌ添え
(小川)




僕たちはふたりとも、わくわくしながら当日を楽しみにし、
競い合って最高の料理を作り合うこと、そして
お客様の素直な感想を伺うのを楽しみにしています。

僕らの料理セッション、
”ヨーロッパ最高の料理を求めて”
2008年2月27日(水)@エルブランシュ。
7時スタート(6時30分開場)
料理代金 18000円 税・サ込み

なお、テーブル席は2名~4名様までで5テーブル、
カウンター席はおひとり様からで、5席。
計二十名様前後まで。
ご予約は先着順、残席少々。
どうぞ、お早めに。
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by le-tomo | 2008-02-23 12:33 | 僕らの料理セッション

僕らの料理セッション、2月27日(水)限定のお誘い

2人のミュージシャンが出会って、
一緒にセッション演奏を繰り広げるように。
僕と、マンジャ・ペッシェの黒羽徹シェフが、
麻布十番エルブランシュで、
一夜限りの料理セッションを開催します。

僕は、エルブランシュのスタッフの縁で
スタッフと一緒に、休日の楽しみとして、
静岡県三島市のクレマチスの丘にある
イタリアンレストランマンジャペッシェに
みんなで食べに行き、そのときはじめて黒羽シェフの
優しい人柄と、センスの光る
料理を知りました。

黒羽シェフは、イタリア料理の新しい波を作った
マルケージで修行し、
さらにはエル・ブジでも修行して、
現在はマンジャペッシェで、
日高良実シェフとともに、
新鮮でおいしい魚を使った、
シンプルでさり気なく遊び心を感じさせる
おしゃれな料理を作っておられます。

僕たちはふたり並んで厨房に立って、
おたがい自分の料理を作り合って、
お客様のためのコースを
競い合って構成します。
イタリアン育ちの黒羽シェフと、
フレンチ育ちの僕は、
同じ食材を使っても発想やアイディアが違うので、
おたがい相手の発想と手のうちに、
驚いたり、おもしろがったりすることでしょう。

どうぞ、2月27日(水)、
エルブランシュへお越しください。
僕たちふたりの料理セッションは、
お客様に一夜限りの、極上の美食の夢を、
お届けします。



●2月27日 (水)
「僕らの料理セッション、特別コース」
料理代金 18000円 税・サ込み


●7時00分スタート (6時30分開場)
遅くとも10分前にはご来店ください。



なお、テーブル席は2名~4名様までで5テーブル、
カウンター席はおひとり様からで、5席。
計二十名様前後まで。
ご予約は先着順ですので、
どうぞ、お早めに。

お問い合わせ・ご予約 03-5439-4338(16時以降)
メール:reserve@aileblanche.jp
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by le-tomo | 2008-02-21 02:14 | 僕らの料理セッション

なぜなら、マヨネーズがあったから。

なぜ、僕はフレンチを選んだのだろう?
ふと、そんなことを思い、昔を思い出しました。

当時、18歳の僕は、一流の料理人になるという夢を持って、故郷を離れ、
大都会、大阪にある、日本で最高レベルといわれた調理師専門学校に通っていました。
毎日が新しいことばかりで、田舎者の僕には刺激的な街でした。

フランス料理の料理人を目指し、一日も休まず専門学校に通い、
いつも一番前の席を陣取っていました。
そしていつもまにか、号令係りになったりもしていました。
父の持っていた「荒川西洋料理書」という本で、西洋料理に興味を持ち
テレビ番組の「料理天国」を見てフランス料理に憧れ、
「ザ・シェフ」という漫画を読んでシェフになる夢を持ちました。
もともと料理人にはなりたいと思っていましたが、フランス料理を選んだのは、
こんな単純な動機が最初でした。

授業では西洋料理というくくりで授業があったので、
フランス料理とイタリア料理、どちらも勉強しました。
当時すでにイタリア料理はブームから定着へなりつつあり、
イタリア料理店はフランス料理店の数を抜く勢いでした。
イタリアンブームの中、フレンチではなくイタリアンを選ぶ仲間も少なくありませんでした。
僕は一瞬迷いました、イタリアンかフレンチ、どっちにしようか。
まだ大阪に出てきて間もない頃です。

そんな時、マヨネーズソースの授業があったのです。
先生はボールに卵黄とヴィネガーとマスタードをいれ、
サラダオイルを少しずつ、少しずつ、入れながら、慎重に混ぜていきます。
すると、驚いたことにどんどん黄色い卵黄が白くなっていき、見る見るうちに、
あの僕の知っているマヨネーズのように粘りが出てくるではありませんか。
僕は驚きました。
あのチューブに入っているマヨネーズがこうやって出来るなんて。
大体、マヨネーズがフランス料理のソースの一つ、
ソース・マヨネーズと呼ばれるものなんて!

イタリア料理の授業も、もちろん面白かったのには間違いありません。
僕の知っていたナポレタンスパゲッティなんてものは
本場イタリアにはないことを知ったのも、この頃でした。
ミートソースは、本当は「ボロネーゼ」なんて聞いたこともない名前だったり、
麺の太さでフェデリーニやスパゲッティなんていう風に名前が変わることを知ったり、
にんにくと唐辛子とオリーブオイルだけで、こんなに美味しいパスタが出来るんだと、
ペペロンチーネと呼ばれるこのパスタ料理には感心もしました。

でも、僕にはマヨネーズソースのような感動はありませんでした。
フランス料理のソースの奥深さはイタリア料理では見られず、
僕はやっぱりフランス料理がいいな、とこの道を選んだのです。
当時の僕の印象では、イタリア料理は、まるで中華料理のように、
手早く、スピーディーにパッパッと作るような感じに思えました。
フランス料理の方が複雑に作りこんでいく感じに思えていました。

実際はどうでしょう?
当時(15年前)は、
イタリア料理といえばB級グルメとも言われカジュアルな感じでしたが、
今ではフランス料理に負けずとも劣らないほどの高級イタリアンもたくさんあります。
フレンチかイタリアンか、区別するのが難しいくらいです。
それでも、イタリアンはカジュアルなイメージが、
一方、フレンチは今でも堅苦しいイメージがまだまだ残っているのではないでしょうか?

麺好きの日本人に、パスタのあるイタリア料理はスムーズに受け入れられて、
瞬く間にフレンチレストランの数を抜き、すっかり定着しているイタリアン。
誕生日や記念日などのハレの日にはやはりフレンチ、と揺るぎない地位を確保し、
ワインブームも追い風になって、グルメやワイン通に愛されているフレンチ。

たまにお客様から、「フレンチとイタリアンの違いって何ですか?」
と聞かれることがあります。

イタリアンは気軽に行けて、フレンチはここぞとばかりのハレの日に行く、
というのが日本では、イタリアンとフレンチの大きな違いでしょうか?
(フレンチも気軽に来て欲しいのですが...)
イタリアンにはパスタとピザがあって、フレンチにはないというのが大きな違いでしょうか?
(フランスにも南仏にはパスタ料理やピサラディエールというピザがありますし、
アルザス地方にもピザと同じような料理、タルトフランベがあるのですが。)

ちょっと専門的な話ですが、僕は、こう思います。
その一番の大きな違いは、フレンチにはマヨネーズがあることだと。
マヨネーズとは卵黄の水分と油(脂)を乳化させるソース。
この“乳化”させるソースが、フレンチにはたくさんあり、基本になっているのです。
例えば、ドレッシングも酢と油を混ぜ合わせ一時的に乳化させます。
それから、赤ワインソースなどのあたたかいソースの仕上げにバターを入れます。
これもソースの液体(水分)とバターという脂の乳化です。
この“乳化”の技術を得ることが、フレンチのソース作りでは大切です。



僕は、これからもフランス料理を作り続けます。
僕がフレンチを選んだわけは、フレンチにはマヨネーズがあったからです。
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by le-tomo | 2008-02-18 03:17 | 考えたこと、想うこと

クレマチスの丘という芸術的な丘にあるレストランで。

静岡県の三島市にクレマチスの丘という4つの美術館をもつ、芸術の丘があります。
この丘にある4つの美術館のうち、もっとも大きいのがヴァンジ彫刻庭園美術館です。
イタリアの現代美術の代表的存在、ジュリアーノ・ヴァンジは人をテーマに、
人間の本質や奥行きを、彫刻によって表現し、
「アトリエで仕事をしているときが一番幸せ」だといっている76歳。
そんなフィレンツェ近郊で生まれた芸術家、
ヴァンジに捧げられた世界唯一の個人美術館が、
ここクレマチスの丘にある「ヴァンジ彫刻庭園美術館」です。

僕はスタッフの縁で、この美術館に併設しているイタリア料理のお店
「マンジャ・ペッシェ」の黒羽シェフと知り合い、
彼の優しい人柄と、センスの光る料理を知り、
何度か休日の楽しみとしてクレマチスの丘に足を運び、彼の料理を食べました。

黒羽シェフはイタリア料理の新しい波を作った マルケージで修行し、
さらにはエル・ブジでも修行して、
現在はマンジャペッシェで、 日高良実シェフとともに、
新鮮でおいしい魚を使った、 シンプルでさり気なく遊び心を感じさせる
おしゃれな料理を作っておられます。

彼の優しい人柄とセンスの光る料理は出会った人たちを魅了していきます。
イタリア料理育ちの黒羽シェフとフランス料理育ちの僕とでは、
同じ食材を使っても料理の発想もアイディアも違います。
そんなことに驚いたり関心したりしながら、彼との料理の話は尽きることがありません。

見晴らしのいい小高い丘の上にある、「マンジャ・ペッシェ」のテラスで、
黒羽シェフと2人でイタリアワインを飲みながら、
僕は黒羽さんに「フランスワインも美味しいですよ。」と言ってみたり、
魚介料理はやっぱりイタリアでしょう、という黒羽シェフに、
いえいえ、フランスにも美味しい魚介料理はたくさんありますよと、反論してみたり、
こんな、話を、時間を忘れてしているとき、僕はちょっと幸せを感じたりもします。

イタリアン育ちの黒羽シェフと、フレンチ育ちの僕、
2人の育った環境は違うけれど、
尽きることない料理の話は、なぜか同じ方向を向いているような気がします。
お客様の「美味しい」の一言を聞くために...。


「マンジャ・ペッシェ」
http://www.clematis-no-oka.co.jp/012_shisetsu/013_mangia/013_top.html
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by le-tomo | 2008-02-13 05:57 | 僕らの料理セッション

~第85章 開きっぱなしのドアの向こうに~  <僕の料理人の道>

そこには、30人以上の様々な国の料理人たちが、
統率のとれた動きで、きびきびと働いていました。

レストランに程近いバス停で降りて、歩いて1,2分ほど、
「LE MOULIN DE MOUJINS」
と書かれた大きなブルーの看板が目印の決して派手ではないレストラン。

僕はスーツケースを転がしながら、恐る恐るエントランスを覗き込みました。
すかさず、レセプションの女性が「ボンジュール、ムッシュー」と
何かご用ですか?と言わんばかりに言葉をかけてきました。

「すいません、今日からここでお世話になる料理人で日本人のオガワと申しますが...」
「少々、お待ちくださいませ」

女性は、こんな状況には慣れているらしく、驚きもせずに奥に歩いていきました。
午前10時。厨房は仕込みの真っ最中です。

奥のほうからタキシードを着たサービスマンがやってきました。
「ボンジュール、ムッシュー」
「さあ、そこに荷物を置いて。まずは、私がレストランを案内しましょう。ムッシュー・オガワ」

「えっ、あっ、はい。」
僕はちょっと驚きました。
今までのレストランでは、まずこれから寝泊りする部屋やアパートにつれてかれて、
コックコートに着替え、厨房に向かうのが普通でしたから。

慌てて、スーツケースを邪魔にならなさそうな墨の方に置くと、
「私がお預かりしておきますから、安心して。」
と、さっきのレセプションの女性が僕に声をかけてくれました。
「メ、メルシー、マダム」
僕は予測外の出来事に、驚きを隠せない表情のまま、
タキシードを着たサービスマンの後を、緊張しながらついて行きました。

エントランスの正面にあるのは、古い古いムーラン(風車)。
オリーブをつぶしてオリーブオイルを作るためのものだったそうです。
それから、いくつかに分かれるレストランの客室を案内してもらいました。
ガラス張りのテラス席の大きなガラスにたくさんの著名人のサインが残されていました。

ここがあの世界的に有名なロジェ・ベルジェ氏のレストラン、ムーラン・ド・ムージャン...。

ロジェ・ベルジェ氏の作った世界的アーティストが集う空間で、
僕は口を空けたまま、ただ呆然とあたりを見回すだけ。
まるで、そう、夢の中の世界に引きづりこまれ、抜け出すことが出来ないような感じ。

「ムッシュー、それでは先ほどのレセプションへ戻りましょう。寮へご案内します。」
「あっ、はい。ありがとうございます。それから、あの...僕のことはトモでいいです。」
「わかりました。トモ、行きましょう。今日からトモは私達のチームの一員です。」

荷物の置いてあるレセプションに戻ると、先ほどの女性が笑顔で僕達を迎えてくれ、
僕を連れて、裏のほうへ向かいました。
そこは厨房の裏口。

開きっぱなしのドアの向こうでは、30人以上の様々な国の料理人たちが、
統率のとれた動きで、きびきびと働いていました。
僕は今日からこの30人の中で働きます。



つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
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by le-tomo | 2008-02-04 03:27 | 僕の料理人の道 81~90章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by le-tomo
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