料理人の休日

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~ 第52章 次はブルターニュ ~  <僕の料理人の道>

さすがに、300人の大パーティーのあとの営業はつらかったものの、何か達成感のようなものがあり頑張ることができました。このパーティーのおかげでみんなの結束力はつよくなり、シェフの怒鳴り声も大きくなったような気がします。


もうすぐ、クリスマス。

フランスではクリスマスの日、25日はみんなお休みです。
もちろん、レストランもクリスマスの日は休みになります。
キリスト教徒である彼らは、クリスマスは家族と一緒に過ごして、10時には教会に賛美歌を歌いに行くのです。本来、これが当たり前なのでしょうが、日本人の僕にはなんだか不思議な感じです。日本ではクリスマスといえばフレンチレストランにとって1年間で一番の稼ぎ時ですから。

去年はオーベルジュだったのでオーナーが一緒に住んでいて、僕も仲間に入れてもらえましたが、今年はみんな家族の元へ帰るので、僕は一人ぼっちでしょう。
まぁ、遠く日本から来ているのだから仕方がない、ただの休みだと思って別に気にもしていませんでした。



そして、僕はこのレストラン、ランスブールにいるのも今月一杯。
来年はまた次のレストランへと渡り歩きます。

実はこのとき、すでに次のレストランが決まっていました。
前回と同じく何枚も手紙を書いたのです。それでも、今回はシェフのクレイン氏が僕のために推薦状を書いてくれたので何百枚も手紙を書く必要がなくすんなり決まりました。それでも20枚は書きましたが。

次はブルターニュに行きます。魚介料理が豊富でクレープやシードルで有名なブルターニュ地方です。
僕は次行くならブルターニュかバスク地方と決めていたのです。そして、希望が叶い、ブルターニュにある2ツ星のレストランからOKの返事をいただきました。

今は山の中ですが、今度は海のそばです。
そして牡蠣をはじめとする魚介が豊富な地方です。

そこで僕は、魚介料理を勉強しようと思ったのです。


つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
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by le-tomo | 2006-09-21 02:36 | 僕の料理人の道 51~60章

巣みつ

先日、弟が店長を務める西麻布のワインバー「キャビスト」に行ってきた時のことです。

「これ、食べてみて」

と言って出されたのが“巣みつ”という国産の蜂蜜。
木の箱に蜂の巣そのものが入ってるんです。
この巣みつをブルーチーズにかけて出してくれたんですが、これが絶品でした。
甘すぎず、しつこくもない、この上品な蜂蜜はブルーチーズを引き立てるソースのようでした。

その時、僕はそれぞれのチーズに合うソースを考えてみては…と、ふと思ったのです。

いいと思いませんか?
お皿に熟成した美味しいチーズが盛り付けてあり、そこにそのチーズを引き立てるためのソースが添えられているというのは。

実は、フランスで修行中に僕の働いていたレストランではチーズにソースをかけて提供していたので、別に僕が思いついたアイディアではないんですが…。

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↑弟のブログ「ワインのある日常」から写真はパクってきました。これが「巣みつ」です。
弟よ、勝手にごめん。
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by le-tomo | 2006-09-17 23:05 | その他いろいろ...

~ 第51章 21時間の戦い ~  <僕の料理人の道>

僕の目の前をどんどんお皿が通り過ぎていきます。
目まぐるしいスピードで。一瞬も気を許すわけにはいきません。

そして、最後の一枚…。

スー・シェフのミッシェルがソースをかけてサービスマンの手に渡りました。

終了!

一気に気が抜けて、みんなしゃがみこんでしまったくらいです。
この息も詰まるような緊迫した時間が約4時間続いたのです。最初の皿が8時にスタートして4時間…既に時計の針は夜中の12時を指していました。

そして...

これから目の前に広がる、この膨大な量の鍋を洗って後片付けをしなければなりません。
まだ、仕事は終わってないのです。

最後の気力を振り絞ってみんなで後片付けに入りました。彼らは10分ほどの休憩で一斉に、誰が指示したわけでもなくそれぞれのポジションの後片付けを始めたのです。

後片付けが終わった頃にはもう、夜中の2時をまわっていました。
そして、車に乗り僕達のレストラン、ランスブールに帰っていったのです。僕はくたくただったので車の中ですっかり眠ってしまいました。運転しているシェフやミッシェルには申し訳ないと思いつつ…。

眠っていたせいであっという間にレストランに着きました。
さて、これから積んだ荷物を降ろさなければなりません。既に道具は洗ってあるので車から降ろして片付けるだけなのですが、もう頭も体も動きません。やっと後片付けを終えて部屋に帰った頃には朝の5時でした。
昨日の8時に出発してから21時間…。

一瞬でした。ベットに横たわってから深い眠りに入るまで。



そして朝が来ました。


時計の針は8時半を指しています。

なんと、この21時間の戦いの後でもレストランは普通に営業するのです。

ランスブールでの食事を楽しみにしているお客様の為に…。

そして僕達は9時には厨房に立っていました。


つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
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by le-tomo | 2006-09-12 21:13 | 僕の料理人の道 51~60章

~ 第50章  言葉を“感じる”こと ~  <僕の料理人の道>

会場が段々ざわめき始めました。お客様が続々と到着している様子がざわめきによって伝わってきます。厨房も、鍋の音やシェフの怒鳴り声がどんどん大きくなってきます。刻一刻とパーティーのスタートが迫ってくるのがこの騒がしさで充分分かります。

みんな、真剣でした。それぞれが己の限界を超えようとしているかのようでした。
僕も負けてられません。


そして…、準備が終了。いよいよ盛り付けに入ります。

みんな自分のポジションに並んで積み上げた更に料理を盛っていきます。まるでベルトコンベアのように皿が右から左へと流れ正確に料理が盛られていきます。

300枚のお皿にいかに早く正確に料理を盛り付けるか。
シェフの怒鳴り声がより一層大きくなり、容赦なく早口のフランス語が飛び交います。

この中で僕だけが外国人…。

そんなことはすっかり忘れていました。いえ、忘れなければいけませんでした。早口のフランス語を聞き取るだけで大変でしたが…。

実は、聞き取れずに僕の耳を右から左へ過ぎ去った言葉も少なくありませんでしたが、いちいち、「今なんて言った?」なんて聞きなおせる状況ではありませんでした。

正確には僕以外にもう一人外国人がいました。彼の名はジョルジュ。ドイツ人です。僕から見れば、同じヨーロッパのしかもすぐ隣の国からやってきた彼を外国人とは思えません。

今まで、レストランでも忙しくなってくるとみんな早口になって言葉を聞き取るのが大変になりますが、それでも毎日繰り返している仕事の中でのことです。ある程度推測も出来ます。
今回のように場所も勝手もやることも違う状況は僕にとって非常に厳しいものでした。

「集中して…。言葉を聞いてから動くんじゃない、みんなの仕事を見て先読みして動くんだ。」

フランスへきて2年が過ぎました。多少の会話は出来るようになっていましたが、今でも言葉の壁は僕の前にときどき立ちはだかります。

それでも、言葉を“感じる”ことを覚えました。


つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
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by le-tomo | 2006-09-02 00:26 | 僕の料理人の道 41~50章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by le-tomo
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