料理人の休日

ryorinin.exblog.jp ブログトップ

<   2005年 07月 ( 3 )   > この月の画像一覧

天然すずきのパプリカ風味 タップナードソース

c0007246_20394529.jpg

夏らしく色とりどりのパプリカを使ってみました。
[PR]
by le-tomo | 2005-07-14 20:42 | 料理Photo

~第10章  最後のまかない~  <僕の料理人の道>

最後になるまかない当番。何を作ろうかあれこれ考える余裕もなく、とりあえず専門学校時代の教科書を見直して簡単そうなものを選びました。
選んだ料理は

“真鯛のポワレ、野菜のマティニヨン入りブールブランソース”

まかないで真鯛は使えず与えられたメダイという魚で代用しました。魚料理の基本のソース“ソース・ブールブラン”。 いわゆるバターソースですがこれが思っていたより難しく、改めて基本の大切さを思い知りました。

まかないをみんなに配り、またいつものように怒られるか、まかないを捨てられるかするんだろうなと思っていたのですが、意外に支配人やスー・シェフも全部食べていたのに驚きました。そして、まかないが終わりディナーの仕込みに入るその時でした。
スー・シェフの稲葉さんが

「小川、今日のはなかなかうまかったじゃないか。」

と、一言。

その言葉を聞いた瞬間、急に何かがこみ上げてきて思わず涙がこぼれました。すぐにそれが嬉しさからだと分かりましたが。そして父のあの言葉が…。「もう、二度と包丁は持つなよ。」頭の中で響きました。頭が痛くなるくらい。

“やっぱり、料理人はやめたくない。”

強くそう思いました。やめるという決心を覆す決心。“もう、絶対逃げ出さない”と。いい加減ですよね。

そして、数週間後、勝又シェフに呼ばれて…


つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
[PR]
by le-tomo | 2005-07-10 13:34 | 僕の料理人の道  1~10章

~第9章 父の言葉~  <僕の料理人の道>

電話に出たのは母だった。一瞬、なぜかほっとした。最初に電話に出るのはいつも母であることは分かっていたのだけど。

「お母さん、俺もう辛くて耐えられん。ここ、やめようと思う。」

母にやめたいというのは、そう勇気のいることではなかったのですが母に「お父さんに代わるよ」といわれた時はただでさえ緊張していたのに更に胸がどきどきして心臓が破裂しそうになりました。

「どうしたんだ。」

父の声がなんだか胸の奥にまで響くように重たく感じた。

“絶対おこられる”
覚悟の上だったのに思わず怯んでしまい、母のときのようにすぐにやめたいという言葉が出てきませんでした。
「お父さん、俺もう、やめたい。」
やっとのことで“やめたい”という意思は伝えたものの用意していた言い訳を伝えることは出来ませんでした。そして父の口から意外な言葉が...。 
  
「そうか、じゃあ辞めて戻って来い。」

“えっ”思わず意外な言葉に僕はおどろくと同時に一気に気が楽になりました。
そこへ、更に続く父の言葉は...

「その代わりもう二度と包丁は持つなよ。」

その意味はすぐに理解できました。理解したというよりその言葉の重みがずっしりと覆いかぶさってくるような感じでした。電話を切った後、辞めると決心したはずなのに心が揺らぎました。

“でも、もう決めたんだから”

そう、自分に言い聞かせて自分で勝手に決めたレストランをやめる日、それは最後のまかない当番の日、そして料理人最後の日が来ました。夜逃げの準備もしました。

“でも本当はここを辞めたかっただけなのに・・・、料理人をやめるつもりはなかったのに・・・。”

最後に作るまかないの為に専門学校時代の教科書を開き、父のあの言葉によって料理人そのものをやめなければならなくなってしまったことに未練を感じながら・・・そんなことを思いました。


つづく

*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
[PR]
by le-tomo | 2005-07-04 03:24 | 僕の料理人の道  1~10章
line

エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by le-tomo
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite