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料理人の休日

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~第87章 太陽の料理人~  <僕の料理人の道>

毎日のように世界中から、ドレスやタキシードを来た、
セレブといわれる人々がやってきて、
高額なシャンパンがどんどんあけられる。
そんな、エレガントなパーティーが毎晩のように行われる、
映画のようなレストランがここにありました。



僕はソースのベースにとなるフォン・ド・ヴォーを、
離れにあるもう一つの調理場へとりに行くとき、
裏口から見える駐車場に、
ベンツはもちろん、フェラーリやポルシェ、ロールス・ロイスなどの、
写真でしか見たことのない高級車がどんどん入ってくる光景を目にし、
まるで、ハリウッド映画にエキストラとして出演しているような気分になりました。
その状況の中、一瞬、呆然と立ち尽くし、
何をしようとしていたか忘れることも
しばしばありました。


これが、世界のセレブ達、
そして、ここがセレブ御用達の超高級レストラン...。
エレガントなカクテルドレスに身をまとった、まるで女優のような美女が、
タキシードを着たジェントルマンの手を借りて車からゆっくりと優雅に降り、
一言、「メルシー、ムッシュー」とささやくようにお礼をする。
今まで、いくつもの有名な高級レストランで働いてきましたが、
こんな、うっとりとするような光景を目にするのは初めてでした。

どれくらいたったのでしょうか、
僕は慌てて自分の仕事に戻りました。
そこは、さっき出会った光景とはまるで正反対。
調理場は戦場のようでした。




フォンド・ヴォーを入れた鍋を火にかけ、ソースを作りながら、
僕は思いました。
“今、ここで作っている料理をあのセレブ達が食べるんだ。”
そう思うと、俄然やる気が出てきます。
より味わい深く、より繊細に。
僕はあのドレスを着た女性と、彼女に手を差し伸べた紳士を思い浮かべ、
目の前の黒っぽい液体、フォン・ド・ヴォーを、
彼ら、彼女らのように輝くようなソースに変えることに集中しました。


太陽の料理人、ロジェ・ベルジェ、
彼の料理はどれも輝いていました。
それは、きっと、彼のレストラン、ムーラン・ド・ムージャンに来る、
まばゆいばかりに輝いているセレブな男女のため。

太陽の料理人、ロジェ・ベルジェ、
彼の作る料理は太陽のように輝き、
ドレスアップした美男・美女を照らし、
より輝きを与えるために、考えられています。


僕はこの太陽の料理を全力で学びました。
僕も、彼のような輝くような太陽の料理をいつか作るために。



~第87章 太陽の料理人~  <僕の料理人の道>_c0007246_121652.jpg
           <ロジェ・ベルジェ氏と>


つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
by le-tomo | 2008-04-24 13:24 | 僕の料理人の道 81~90章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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