~ 第51章 21時間の戦い ~ <僕の料理人の道>
目まぐるしいスピードで。一瞬も気を許すわけにはいきません。
そして、最後の一枚…。
スー・シェフのミッシェルがソースをかけてサービスマンの手に渡りました。
終了!
一気に気が抜けて、みんなしゃがみこんでしまったくらいです。
この息も詰まるような緊迫した時間が約4時間続いたのです。最初の皿が8時にスタートして4時間…既に時計の針は夜中の12時を指していました。
そして...
これから目の前に広がる、この膨大な量の鍋を洗って後片付けをしなければなりません。
まだ、仕事は終わってないのです。
最後の気力を振り絞ってみんなで後片付けに入りました。彼らは10分ほどの休憩で一斉に、誰が指示したわけでもなくそれぞれのポジションの後片付けを始めたのです。
後片付けが終わった頃にはもう、夜中の2時をまわっていました。
そして、車に乗り僕達のレストラン、ランスブールに帰っていったのです。僕はくたくただったので車の中ですっかり眠ってしまいました。運転しているシェフやミッシェルには申し訳ないと思いつつ…。
眠っていたせいであっという間にレストランに着きました。
さて、これから積んだ荷物を降ろさなければなりません。既に道具は洗ってあるので車から降ろして片付けるだけなのですが、もう頭も体も動きません。やっと後片付けを終えて部屋に帰った頃には朝の5時でした。
昨日の8時に出発してから21時間…。
一瞬でした。ベットに横たわってから深い眠りに入るまで。
そして朝が来ました。
時計の針は8時半を指しています。
なんと、この21時間の戦いの後でもレストランは普通に営業するのです。
ランスブールでの食事を楽しみにしているお客様の為に…。
そして僕達は9時には厨房に立っていました。
つづく
*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。