~ 第49章 夢の世界へ ~ <僕の料理人の道>
ここアルザス・ロレーヌ地方ではクリスマスの1ヶ月前からマルシェ・ド・ノエルといわれる出店が町中に立ち並び、可愛らしい電飾でキラキラと街が輝いているのです。
早速、マルシェ・ド・ノエルでヴァンショーを買い、体を温めながらぶらぶらと街を歩き回りました。
ヴァンショーとはワインにローリエ、アニス、クローブなどのスパイスとオレンジやレモンを入れて温めたホットワインです。このヴァンショーがとても美味しく、寒い寒いこの季節、冷え切った体を芯から温めてくれます。このヴァンショーのおかげで寒さも心地よく感じるほど身体が温まりました。
そして、次に買ったのはブルッツェルという表面に岩塩がまぶしてある固めのパン。
食べるとガリッという岩塩の触感としょっぱさが固めのパンとよく合います。ここアルザス・ロレーヌ地方で有名なパンですがドイツにも同じようなパンがあります。
バンショー片手にブルッツェルをかじりながら、この「夢の世界」をさまよっているうちにここへ何しに来たのか忘れそうでした。
そうです、これから始まる「300人のセレブが集まるクリスマスダンスパーティー」の料理を作りにきたんです。あっという間に休憩の30分が終わり、慌てて会場に戻りました。
そして「夢の世界」から「現実の世界」へ…。
調理場へ戻ると、早速自分のポジションにつき仕事を始めます。パーティー開始まであと約2時間。着々と準備は進んでいきます。ホールスタッフも会場の準備で大忙しです。
僕たちは今、この日集まる300人のための「夢の世界」の準備をしています。
つづく
*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。