料理人の休日

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~第19章 仲間~  <僕の料理人の道>

美食の国フランスの厨房での初仕事が終わり時計を見ると時計の針は0時を少しまわっていました。掃除も終わったのであとはシャワーを浴びて寝るだけ…と思いきや金髪のアプランティ(見習い)、フロロンスからこっちに来いとの合図。
彼女は今のところ僕の直属の先輩。年は15~6才。そして僕の直属の先輩はもう一人、2m位の身長がある大男のクリストフ。彼も15~6才。僕の最初の上司は2人とも見習いでした。この時点で僕が名前を覚えているのはシェフのマックをあわせてこの3人だけ。

とりあえず僕は金髪フロロンスと大男ステファンについていきました。するとレストランのすぐ隣に小さなバーがあってそこでスタッフが全員集まってめいめい好きなところに座っていました。どうやらこれからお酒を飲むような雰囲気です。

僕をアヴィニヨン駅からここまで送ってきてくれた人はどうやらソムリエらしく彼は慣れた手つきでシャンパンを2~3本開けグラスに注ぐとみんなはそれを手にとりました。僕もシャンパンの入ったグラスを手渡されました。

そして、昨夜、玄関で僕を迎えてくれた夫婦のムッシュが手にしたグラスを高く持ち上げ

「ビアンヴニュ オー マス・ド・キュルブルス 、トモ!」(ようこそ、マス・ド・キュルブルスへ、トモ!)

と叫んだのです。一瞬何事か分かりませんでしたが、みんなの視線が僕に集中しているのと彼らの表情ですぐに僕の歓迎会なんだということをさっしました。

「メルシー・ボクー!」
ありきたりのフランス語でしか返せませんでしたが、とても嬉しくて感激しました。なんだか、もうフランス人に認められたような錯覚に陥りました。

かれこれ2時間ほどおしゃべりをして…とは言っても僕はおしゃべりが出来るはずもなくただニコニコと愛想笑いするだけでしたがこの雰囲気は心地よく退屈することなく歓迎会を終えることが出来ました。
“僕が主役なのになんだか悪かったなぁ。聞かれたこともほとんど分からなかった。”
フランス語が話せないのがもどかしく“みんなと話せるようになりたい”と心から思ったのです。

この歓迎会で僕はこのオーベルジュの事を少し知ることが出来ました。会話は出来ませんが分かる単語を必死につなぎ合わせてここのスタッフの人間関係を少し知ることが出来たのです。かなり自分勝手な推測もありましたが…。

まず、僕をアヴィニヨン駅からさらった…、いえ、連れてきてくれたボンボロシトロエンの運転手はソムリエのステファン、玄関で迎えてくれた夫婦はここのオーナーでポマレード夫妻、床に寝そべっている大きな黒い犬はオーナーの愛犬イケム。そして、この建物は200年前のものだそうです。

こうして美食の国フランスで最初の仲間が出来ました。


つづく

*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。

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by le-tomo | 2006-01-05 01:52 | 僕の料理人の道 11~20章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


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