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料理人の休日

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愛と情熱のブルターニュ

「私は料理人として、我々の伝統であるブルターニュ料理の素朴なおいしさを愛する。だから私は、自分の愛するブルターニュとその郷土料理のすばらしさをひとりでも多くの人に伝えてゆきたい。我々の料理のすばらしい伝統を守り、一緒に高めてゆこうではないか!」


ジャック・ギヨーシェフが、ブルターニュの海岸線を、車を運転しながら僕にこう言った。
ブルターニュの海岸のほとんどは入り組んだ岩々が続く世界でも珍しいリアス式海岸で、僕たちはラ・ボールという小さな村に向かう途中のことだった。ブルターニュでもっとも美しいと言われる海岸がラ・ボールにはある。

僕は、フランスの5つの地方のレストランで修行したのだけど、そのうちの一つが彼のレストラン、「オーベルジュ・グランメゾン」のあるブルターニュ地方。


彼は妻を愛し、家族を愛し、ブルターニュを愛した、まさに「愛」の人だった。

愛するということが彼の人生そのものだった。
フランス政府からレジオンドヌールという勲章を与えられ、若手の料理人を積極的に育成するためにメートルキュジーヌ・ド・フランスの会長も務めるなど情熱的な料理人だった。

かの世界的にも有名な豪華客船エリザベス号の総料理長も務めたこともある。


彼はパリで路頭に迷っている僕をを拾ってくれた恩人でもある。
さらに、若造(当時26歳)の、しかも日本人の僕にスーシェフ(セカンドシェフ)も任せてくれた。
週末になると、マダムと過ごすための別荘にも連れて行ってくれた。
その別荘が、ラ・ボールにあった。
部屋の窓からはブルターニュの海と水平線が一望出来た。
彼は僕を本当に可愛がってくれた。


そして、僕は彼からブルターニュの素晴らしさを教わった。

彼は僕にレストランを継いで欲しいとまで言ってくれたが、僕はあの時、はい、とは言えなかった。
それは、ヴィザの問題もあったけど、本当は僕に勇気がなかったから。



あれから約20年…
今年4月、僕は故郷である福井の海岸沿いに、「ガレットカフェHAZE(ヘイズ)」をオープンした。
https://m.facebook.com/HAZEechizen/
そば粉のガレットとクレープ、そしてブルターニュの郷土料理が食べられるカフェレストランだ。
HAZEは、越前町という名の小さな町の丘の上にあり、ブルターニュと同じリアス式海岸が広がっている。
3面ガラス張りの客席からは、水平線が180度見渡せる。

僕は、彼のレストランを継ぐことは出来なかったけど、僕の故郷で、僕なりに、彼の愛するブルターニュへの想いのほんの一部だけでも受け継いで行きたい。


ギヨーシェフにHAZEを見せたかった。


愛と情熱のブルターニュ_c0007246_01155942.jpg




by le-tomo | 2017-11-10 01:18 | マイナーリバーズ@FUKUI
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


by tomohi
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