料理人の休日

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~第7章 調理場は戦場~  <僕の料理人の道>

夏の終わりのある日の夜中、何かの番組のテレビ撮影をディナータイムが終わってから撮り始めた時でした。今日はもう寝る時間ないな。そう諦めていました。数時間の撮影が終わり、時計は午前2時を回っていました。毎日、朝の4時には調理場に入り休みもないまま“ミラドーの夏”を乗り越え少しばて気味でしたがそこは若さで持ちこたえていた…はずでした。

スー・シェフ(副料理長)の「洗い物片づけたらあがれよ!」の声を聞き、「やっと終わった」と思ったその瞬間、急に胸の奥から何かがこみ上げてくるのと同時に気が遠くなりそうになり、“やばい”と思い無意識で調理場から裏庭に飛び出そうとしました。“調理場で倒れるわけにはいかない”と本能的に思ったのでしょう。真っ白な蛍光灯の明かりから薄暗い月明かりが目の前に広がったかどうか。実は覚えていません。気がついたときには裏庭の土の上に寝かされてスー・シェフが僕の頬をビンタしていました。そして元々白いはずの汚れたコックコートの胸のあたりに真っ赤な模様が…。

倒れたのは午前2時過ぎ、気がついたのは3時頃だったでしょうか。「早く帰って寝ろ」スー・シェフにまるで血を吐いて倒れたことが大したことじゃないようにあしらわれて、“このままじゃ死んでしまう”と思い、急に怖くなったのを覚えています。3~4時間後、またいつも通りに調理場に立っていました。その時、目には“やるしかない”の文字が、耳には“やるしかない、やるしかないだろ!”と誰かの声が木霊していました。

調理場は戦場といいますが、僕はいつも何かと戦っていました。ただ敵が何かは分かりませんでしたが。手にしている野菜でしょうか、優雅に食事しているお客様でしょうか、もしくは頭の中が真っ白になっている自分だったのでしょうか。



つづく


*この記事は、僕が修行していた時代のことを書いています。
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by le-tomo | 2005-05-29 23:28 | 僕の料理人の道  1~10章
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エルブランシュ(麻布十番)のオーナーシェフ


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