~ 第101章 フルコースの最後 ~ <僕の料理人の道>
砂糖や小麦粉、卵が、全く想像できないデザートになっていく。
一体誰がこんなことを思いついたのだろう?
フィリップの大きな手から作られる、
かわいらしく繊細なお菓子の数々。
コースの最後の締めくくりは、あまい魅惑のデザート。
そして、僕のフランス修行最後の締めくくりも同じく
デザート部門のパティスリー。
僕のフランス修行時間は残りあと少し。
そう、僕はもうすぐ東京に行かなければなりません。
シェフになるために...。
僕は、かねてからオファーのあった東京のレストランに、
シェフとして行く事になっています。
フランス最後の修行がデザート部門。
僕のフランス修行は、
まるでフルコースのように幕を閉じようとしています。
あれから、3年、
言葉もままならないまま、憧れの地、フランスに訪れ、
肌の色のちがう仲間と、ふれあい、戸惑い、そして、励ましあいながら、
そうやって、僕は本場のフランス料理に身をおいてきました。
僕はフランス料理を学べたんだろうか...。
僕は東京で通用するのだろうか...。
そんな不安を感じながら、もうすぐ終わるフランス生活に寂しさを感じながら、
それでも、今までやってきたことと、自分を信じて前へ進む覚悟を決めました。
「トモ、これ持って行け、日本に。」
不意に、フィリップが僕に一冊の本を手渡しました。
その本は「Compagnon et Maitre Patissier」と書かれてあります。
「この本で俺はパティスリーを学んだんだよ。きっと役に立つ。」
それは、僕がこのレストラン、
ムーラン・ド・ムージャンを去る前日のことでした。
つづく
*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。