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日傘を差す女 ~ホワイトアスパラガス~
少しベージュがかかっていて、
白く柔らかくほんのりと輝いていています。
すらっと長くて上品な、
まるで貴婦人の肌のようなつややかさを思わせる、
ホワイトアスパラガス。

ヨーロッパの貴婦人の美しさはその白くて柔らかい肌。
日傘をさして、太陽の光りをさけることで、
その美しい肌はいつまでも保たれています。
ホワイトアスパラガスも同じ。
太陽の光りにあたらないことで、
この白くほんのり輝く肌を保っているのです。




エルブランシュには、フランスのランド村から、
一本一本、大事に大事に土をかぶせて日光をさえぎって育てられた、
露地もののホワイトアスパラガスが届きます。
フランスでは、春を告げる旬の野菜。
4月中旬から5月いっぱい位までの短い期間ですが、
フランスの春を、エルブランシュで堪能していただいています。

ホワイトアスパラガスを茹でるには、
ちょっとしたコツがあります。
お湯に塩を入れ、レモンのスライスを一枚。
そしてバターをひとかけら落として、
皮をむいたホワイトアスパラガスをそっと茹で上げます。
むいた皮も、一緒に鍋にいれるのを忘れてはいけません。
ホワイトアスパラガスの香りが、よりいっそう広がります。

エルブランシュでは、こうして茹でた、
香りも旨みもたくさん含んだジューシーなホワイトアスパラガスに、
ブリー・ド・モーという白カビタイプのチーズを使ったクリームソースをかけ、
上火のオーブン、サラマンドルで、
表面をグラタンのように、グツグツと焼き上げます。


ナイフを入れたときのこの柔らかさ。なんと表現したらいいでしょう。
一口目をフォークにのせて口に運んだとき、
口の中でジュワッと広がる、この瞬間。
日傘を持つ貴婦人の、白くて美しい肌が思い浮かびます。

きっと、フランスの春の風景は、淡くほんのり輝く絵画のよう。
印象派の画家、クロード・モネが描いた「日傘を差す女」のような。


エルブランシュで、フランスの春を感じてください。
すでに春はやってきて、今にも過ぎていこうとしています。




# by le-tomo | 2012-05-12 22:34 | 僕が選んだ極上食材
~第103章 帰国して、シェフに ~  <僕の料理人の道>
いつものように、何事もなく、
フランス修行、最後の一日が始まり、
そして終わろうとしています。


カンヌで一番有名なレストラン、
“ル・ムーラン・ド・ムージャン”の裏口にある、
白い鉄のドアの向こうに広がる大きな厨房。
この厨房で、ロジェ・ベルジェ氏の太陽の料理が作られます。
広くて綺麗で、整頓された厨房。

オードブルからデザートまで、
各セクションのチームが、
それぞれ一部の狂いもなく、手際よく動き、
それを指示するシェフ・ド・パルティエの声は、
夜が更けるとともに大きくなっていきます。

鍋がガチャガチャ音を立ててぶつかり合う音が僕の耳に、
肉を焼いているときの脂っぽく力強い匂いが僕の鼻に、
オーブンの中でこれでもかと言わんばかりに思いっきり膨らんで、
薄く茶色に色づいた、ふわふわのパンのようなスフレが僕の目に。
すべてが一緒に僕の中にに飛び込んできて、
それはとても心地いい。



音も匂いも消えはじめ、オーブンの中のスフレも全部なくなり、
にぎやかだった厨房が静かになったころ、
僕たち戦士はシャンパンで乾杯しました。
別れを告げ、握手を交わし、夢を分かち合いました。

何人かの仲間は、この日を最後に、それぞれの世界へ旅立つことに。

一人はアメリカへ、
一人はスイスへ、
一人はイタリアへ、

そして、僕はニッポンへ。





飛行機の中、僕は眠れず、
真っ暗な機内でぼんやりしていました。
何かを考えるわけでもなく、何も考えないでもなく、
ただぼんやりと。


帰国したら、僕は東京のフレンチレストランのシェフになります。
100席もある、大きなレストランの料理長です。
不安がないといえば嘘になりますが、自信はありました。
僕はフランスの一流レストランで修行してきたんだ、という自信が。
でも、そんな自信は、いとも簡単に崩れかけます。




美味しい料理を作る。ただそれだけでは、シェフは務まらない。
そんな壁にぶつかるのに、料理長に就任してから何日もかかりませんでした。
この厨房には、僕の部下となる料理人が5人。しかも、大半は僕より年上。
まだ27歳という若造の僕には困難すぎる状況。
もちろん、スタッフの大半が僕より年上であることは知っていました。
知っていて、尚、僕はやってみることにしたのですから。
妬みや嫉妬。そして先輩料理人の見習いへの暴力。
料理を作ることもままならない状況で、僕は悩み、苦しみました。

シェフとはチームのリーダーであるということ。
一流のレストランで修行したのだから素晴らしい料理が作れる、なんてことはなく、
チームを動かすことが出来ない限り、素晴らしい料理なんて出来ない。
料理は、一人で作るわけじゃないから。

僕は、今まで何を見てきたのだろう。
ずっと、一流のチームの中で修行してきたはずなのに。
一流のチームを見てきたはずなのに。

僕は、「料理を作る」ということは「チームを作る」ということなのだと、
シェフになって痛感しました。
いくら素晴らしい技術を習得しても、
人を動かす力がないと、その技術は生かしきれず、
それはイコール、お客様を満足させる料理は作れない、ということだと。
僕の見てきた一流のシェフたちは、みんなそれが出来ていました。


僕は、6年間の雇われシェフ時代に、このことを学びました。
そして、次のステップへと向かいます。

シェフ、そして、経営者という道に。






***************

ブログを読んでくださってるみなさん、
「僕の料理人の道」なかなか進まなくて申し訳ございませんでした。
僕の修行時代のことを少しずつ(本当にゆっくりでしたが)書いてきました。
つづきも、いつか書き始めると思います。

僕は、この後、2007年にエルブランシュをオープンしました。
経営者という、本当に重たくて重たくて、
時にはひざを地につけてしまうほど重たい責任をしょって、
それでも今、前に歩いています。

この記事を読んでくださっている方に若い料理人の方もたくさんいると思います。
夢を持って困難を恐れず前に前に進んでください。
僕のような若輩者が言うのはおこがましいですが、
生きていると、必ず二つの分かれ道が目の前に何度も現れます。
この別れ道、どちらを選べばいいのか迷うでしょうが、
いつも、困難だと思う道を選ぶといいです。
きっとその道は夢につながっていると思います。
困難だと思う道を選ぶということは、挑戦するということでしょう。
挑戦し続けて、前に進むことが夢への近道ではないでしょうか。
夢は必ず叶う、そう信じて間違いありません。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。


エルブランシュ
シェフ 小川智寛


# by le-tomo | 2012-05-07 16:10 | 僕の料理人の道 91~103章
エルブランシュ5週年!
昨日、3月9日、
エルブランシュは5周年を迎えました。

2007年にエルブランシュがオープンして、5年間。
2009年には姉妹店、アジルジョーヌがオープン。
そして2010年には3号店のun十(あんじゅう)がオープンしました。
その他にも、いくつかのゲストハウスの料理監修もさせていただきました。


当然のことながら、山あり谷ありの5年間でしたが、
お客様に励まされ、スタッフに支えられ、ここまできました。
これからも、壁が立ちはだかることが幾度もあるでしょうが、
スタッフ一丸となって必ず乗り越え、
よりレベルの高いレストランを作り上げていこうと思います。

そこで6年目を迎えるにあたって、内部改革を始めました。
サービスの見直し、料理のレベルアップ、スタッフの教育などなど。
改革することは、すごくエネルギーの要る事ですが、
立ち止まらずに前に進む為に絶対に必要なことだと思いました。

それにはまず、僕が成長しなければなりません。
僕の成長無くして、レストランのレベルアップはありえませんから。


一つ、残念何お知らせですが、
今年3月末で、3号店目のun十が閉店することになりました。
un十閉店に関して、みなさんに本当にご心配おかけしています。
誠に申し訳ございません。
http://www.un-jyu.info/blog/index.php?e=101

ただ、僕たちは単に一店舗閉店するのではなく、新しいことにチャレンジしていきます。

6年目を向かえ、僕たちは海外にも目を向け、僕たちに出来ることを模索し、
新しい”何か”を見つけたいと思っています。
それが何なのか分りませんが、
必ず僕たちにしか出来ない”何か”があると信じています。

僕が目指しているのは”みんなに愛されるレストラン”です。
これからも、みなさんに愛されるレストランを目指し、
努力していくことをお約束いたします。

これからも、僕たちを応援してください。
どうぞよろしくお願いいたします。
# by le-tomo | 2012-03-10 16:41 | 未分類 | Trackback | Comments(0)
遅らばせながら。
あけましておめでとうございます。


去年はいろいろあったなぁ。
初めての経験がたくさんでした。
恐ろしい目にもあいました。
涙が出るほど嬉しいこともありました。

去年、ご迷惑をおかけしたみなさま、本当にすいませんでした。
去年、私たちを支え、励まし、応援してくださったみなさま、
本当にありがとうございました。

そして、2012年。
今年も前進あるのみ。


2012年、今年もエルブランシュをはじめ、
アジルジョーヌ、un十共々、何卒よろしくお願いいたします。





今日はさらに成人の日でしたね。

僕が20歳のときは、そう、箱根のオーミラドーで修行中の身。
当然、成人式には出れず、ごみを運んでるときに、
振袖をきている女の子を見て、
なんか世界が違うところにいるような感じだったのを覚えています。

まかないの時、勝又シェフより、お祝いの言葉をもらって、
すっごく嬉しかったなぁ。



さあて、今年も頑張って料理つくります。


みなさま、これからも、どうぞよろしくお願いいたします。



小川智寛
# by le-tomo | 2012-01-10 00:29 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(0)
ルージュとブラン...二種類のブイヤベース、un十。
エルブランシュの姉妹店、un十(あんじゅう)のスペシャリテは、
二種類のブイヤベース。

ルージュ(赤)とブラン(白)


オマール海老の香り高い甲殻類の出汁をベースに、
四種類の魚介の出汁でつくる、
気品あふれる赤いブイヤベース、ルージュ。

そして、プロヴァンスの伝統的なスープ、アイゴブーリッドをベースに、
野菜の出汁とにんにくでつくるクリーミーで、
まろやかな白いブイヤベース、ブラン。

他では味わえない、本場仕込の二種類のブイヤベース。



僕の育った、北陸、福井県は、越前と若狭からなる魚介の美味しい郷。
その北陸の新鮮な魚介を産直で仕入れて、
フランス、マルセイユの魚介鍋、ブイヤベースで堪能していただきたいと思いました。

もう一つは、水の郷、福井の美味しい野菜たち。
インフィスアファームの松井さんの育てるとびっきり美味しい野菜の数々が、
un十をはじめ、エルブランシュやアジルジョーヌに送られてきます。
それらの野菜をつかった、un十のもう一つのスペシャリテ、ジャルダン・デ・レギューム。
数種類の野菜を使った庭園風野菜料理。


僕の、新たな挑戦。
魚介に頑張るフランス料理「un十」 http://www.un-jyu.info/
都会で働くみなさんの、ちょっとした安らぎのレストランを目指して。
おしゃれで美味しい料理を、心をこめて準備して、みなさまのお越しをお待ちしています。





# by le-tomo | 2011-10-28 14:23 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(0)
血が騒ぐ...ジビエの季節到来!
野生の素晴らしさ!

エルブランシュにはヨーロッパや国内から、
最高のジビエが続々入荷しています。

雷鳥、青首鴨、山鳩、山鶉、雉...

つやつやした毛並み、
赤黒く光る肉。

これらのジビエを、最高のロティでご用意いたします。

ジビエのコース。15,000円
事前に予約が必要ですので、お電話お待ちしています。

# by le-tomo | 2011-10-26 01:41 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(0)
毎年恒例、冷たい桃のスープはじまりました。期間限定。
今年は早々と梅雨が訪れ、猛暑がきたと思いきや、涼しい日が続いたりと、
ちょっとおかしな夏の気候ですね。
毎年恒例の桃のスープが、エルブランシュにて今年も始まりました。
例年より遅れ気味ではありますが、
甘い香りと、優しい味わいの、魅惑的で濃厚な桃のスープ。
30時間かけて、丁寧に作ったダブルコンソメスープを合わせて作る、
夏限定のスペシャリテです。
今年はオプションメニューとして、ご希望の方にコースにプラスしてご用意いたします。
1ヶ月ちょっとの期間限定料理。是非、今年の夏もお楽しみください。

期間:9月初旬まで。
金額:1,400円(税込・サ別)*コースにプラスしてご用意いたします。
ご予約:03-5439-4338(お電話は15時以降でお願いいたします。
 又はHPより aileblanche.info
場所:エルブランシュにて。


さて、姉妹店の企画のご案内もあります。


姉妹店(当ビル4階)あんじゅうでは、8月13日(土)の1日限り、
淡路島の鱧づくしコースとプロヴァンスワインフェアを開催いたします。
夏といえば、京都の料亭では鱧が風物詩。
あんじゅうでは、この日本特有の食材、「鱧」を使ったフランス料理を、上品に演出します。
淡白な白身、調理法により風味を変える鱧はこの時期にしか味わえない格別なものです。その鱧をフレンチのフルコースで、
様々な食材やソースとのマリーアージュで楽しんでもらいたく、
この夏、「淡路島の鱧づくし」のフェアを企画いたしました。
ソムリエ厳選のプロヴァンスワインと共に・・・
アミューズからメイン料理まで全て鱧を使った「鱧のフルコース」をお楽しみください。
一日限りの特別コースです。是非、お見逃しなく。

「淡路島の鱧づくしコースとプロヴァンスワインフェア」
日時:8月13日(土)
定員:20名
場所:un十(あんじゅう)
金額:10,000円(税・サ込)
ご予約:03-6459-4501 (お電話は15時以降でお願いいたします。)
un十ブログ
*こちらは「あんじゅう」のご案内です。お間違いなく。




夏まっさかり!
同ビル9階「はじっこブラッスリー アジルジョーヌ」では、
真夏のビールフェアを開催中です。
フランス、ベルギーなどヨーロッパのビールを十種類集めました。
もちろん、国産ビールもございます。
夏まっさかり、よ~く冷えたビールを、屋上テラスのアジルジョーヌで開放的にお楽しみください。
東京タワーもキラキラしてます。
期間:8月31日まで毎日。
アジルジョーヌブログ






# by le-tomo | 2011-08-07 11:58 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(0)
ご心配おかけしています。
みなさま、この度は本当にご心配おかけして申し訳ございません。

4月15日より僕のブログをはじめ、お店のHPのサーバーやドメイン、
そしてツイッターのアカウントなど、
WEB関係のパスワードを次々奪われました。

*このブログ「料理人の休日」は、本日、僕の手元に戻ってきました。
*ブログは4月中旬(15日頃)より5月19日までハッキングされていました。

サーバーは取り戻したのですが、ドメインは未だ取り戻せず、
現在はあたらしくinfoドメインを取り直して、そこへ移行してあります。

http://www.aileblanche.info/


ツイッターのアカウントに関しては、未だ僕の手元に戻ってきていません。

@aileblanche
@ogawachef




今回の事件、
犯人によるネット上でのなりすましやその他いろいろな嫌がらせを受け、
最初、僕はあまりのショックで、正直、心が折れそうになりました。
犯人に心当たりがあるからこそ、なおさらのことでした。


そんな中、HPやツイッターを見ておかしいと思ってくれた常連さんが、
次々にお電話をくださり、励ましてくださいました。
こんな時だからと言って、
わざわざ、お店に足を運んでくださる方も何人もいらっしゃいました。
あらためて、僕は周りの人に助けられて前に進んでいるんだということを痛感し、
一瞬でも、負けそうになった自分を情けないと思いました。


みなさんの心強い応援によって、少しづつですが解決に向かっています。
ご心配おかけして、本当に申し訳ありません。
そして、励ましいただき本当にありがとうございます。

僕がネットに対して軽く考えてための、今回の事態。
みなさんにご心配をおかけしたことを深く反省しています。

まだ犯人は捕まっていませんので油断できない状況ですが、
気を引き締めて営業していきたいと思います。

最後に、僕のそばでずっと僕を支えてくれているスタッフのみんなにも感謝します。


小川智寛




# by le-tomo | 2011-05-20 15:41 | その他いろいろ...
東日本大震災
この度、東日本大震災により、被害を受けられた皆様に謹んでお見舞い申し上げます。
皆様の安全と健康、そして被災地の一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。


僕の誕生日前日、
今までに経験したことの無いほど大きな地震が東北地方を中心に襲い、
たくさんの人々が家を失い、家族を失いました。


東京もかなり強い揺れはあったものの、
エルブランシュをはじめ、姉妹店、アジルジョーヌやあんじゅうは、
それほど大した被害はなく、多少のグラスとワインが割れた程度でした。
何よりスタッフ誰もが怪我無く、無事だったことが幸いです。


ただ、被災地の皆様及びそのご親戚の方々のお気持ちを考えると、
このまま営業を続けることに複雑な心境ではありましたが、
私たちはレストランとして、お越しいただけるお客様がある限り、
そして、ご提供する食材がある限り、精一杯のサービスをしようと決意し、
営業を続けることにいたしました。


現在、エルブランシュをはじめ、
姉妹店「アジル・ジョーヌ」及び「あんじゅう」共々通常通り営業しております。


まだまだ余震が続く不安の中、
私たちのレストランにお越しいただける皆様、本当にありがとうございます。
どうぞお気をつけてお越し下さいませ。

最後にもう一度、
この大地震で無くなった方々にお悔やみ申し上げます。
そして、被災地の一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。


小川智寛



# by le-tomo | 2011-03-16 22:29 | その他いろいろ... | Trackback | Comments(2)
魚に頑張るフランス料理店、un十(あんじゅう)。
エルブランシュの一つ下のフロアに、去年7月にオープンしたun十(あんじゅう)。
内装はちょっとジャパネスクだけれども、料理はフレンチ。

僕が修行したフランスのいろいろな地方の中でも、
プロヴァンスやブルターニュ地方は魚介や野菜が豊富で、
毎日新鮮な魚介や野菜やハーブがレストランに届けられていました。
網一杯の帆立貝やはさみをふりあげて僕らを威嚇するオマール海老たち。
真っ白でつやつやした上品な姿をした平目と、
赤色のうろこがきらきら輝く、小さいながらも存在感のあるルージェ(ヒメジ)。
すぅーっと真っ直ぐに伸びる、白くて気品あふれるホワイトアスパラガスや、
ちょっと変わった夢のような形のアーティーチョーク。
あたり一面、目一杯に魅力的な香りを放つ、いろいろなハーブたち。

フランス料理には素敵な世界がたくさんあります。
肉料理が中心ではあるけれど、
僕の知ってるいるフランス料理の世界には、魚介料理も充分に魅力的で幻想的です。




un十はそんなフランス料理の中でも魚介と野菜にこだわったフランス料理を提供しています。
もちろん、本店エルブランシュでも魚介と野菜にはこだわっています。
でも、un十では、さらに魚料理に注目して、僕の知る限りの様々な調理法で、
この素晴らしい世界をみなさまにお伝えします。

もう一つ、un十では、僕の故郷、福井の食材を中心に料理を作っています。
全国的はまだまだマイナーな県ですが、魚介や野菜は本当に素晴らしいです。
有名な越前蟹をはじめ、甘海老、グジ(甘鯛)、鰤(ぶり)、細魚(さより)、鯖(さば)などなど、
日本海の荒波にもまれた、生きのいい、元気一杯の魚介が水揚げされ、漁港から直接un十に届きます。
野菜も、代々受け継がれてきた農家の方々の作る、越前・若狭の伝統野菜や、
若い農家の方々の作る、珍しくてお洒落な西洋野菜がどんどん届けられて、un十の厨房を華やかにしてくれます。
福井の良さをもっと知ってもらいたい。そんな思いもun十には込められています。


ぜひ、un十の料理を愉しんでください。
フランス料理の新たな世界が見えてきます。

魚料理に頑張るフランス料理店、Un十。
http://un-jyu.info/



小川智寛
# by le-tomo | 2011-01-25 11:29 | その他いろいろ... | Trackback | Comments(0)
フレンチシェフが、料理人を目指す人に読んでもらいたい本。
青山ブックセンター(六本木)にて

「フレンチシェフが、料理人を目指す人に読んでもらいたい本。」

というフェアを開催。

2月28日まで。

http://www.aoyamabc.co.jp/fair/2011/french-chef/

以下、抜粋。





【フレンチシェフが、料理人を目指す人に読んでもらいたい本。 】




今回は、『フレンチシェフが、料理人を目指す人に読んでもらいたい本。』
と題しまして、フレンチシェフの方限定で、一人前のシェフになるまでの間に、血となり、肉となった本を教えていただきました。ご本人に大きな影響を与えたことは勿論、これからシェフを目指す修行中の方にも是非、読んでもらいたい!と思う本を選んでくださいました。そして、選書して下さったシェフの方々同様に、切磋琢磨し、高みへと登りつめたシェフの方々の自伝エッセイも揃えました。これからプロの料理人を目指す方々に是非参考にしていただけたらと思います。また、フェアパンフレットもご用意しております。

この機会に是非、お持ち下さい。ご来店お待ちいたしております。

【ご協力いただきましたシェフの皆様】(順不同)コート・ドール 斉須 政雄さん
Restaurant REIMS YANAGIDATE 柳舘 功さん
エヌ・ルトゥール 成田 英孝さん
L‘espace Makiette 渡辺 麻紀さん
ガスパール東京 内藤 英明さん
ブルーノ東京 清水 郁夫さん
moRi 森 茂彰さん
モノリス 石井 剛さん
レディタン ザ・トトキ 十時 亨さん
エル ブランシュ 小川 智寛さん
レストラン ヒロミチ 小玉 弘道さん
ル・ブルギニヨン 菊地美升さん


【ご協力いただきました出版社様】(順不同)旭屋出版 オレンジページ イマージュ 池田書店 柴田書店
# by le-tomo | 2011-01-19 12:47 | その他いろいろ... | Trackback | Comments(0)
~ 第102章 きらきら輝く白い羽 ~  <僕の料理人の道>
この日は早くに目が覚めました。
窓の外がまだ薄暗い、午前五時。
今日がムーラン・ド・ムージャンで働く最後の日。
そして、フランスで働く最後の日。

ルームメイトのシルヴァンはまだ熟睡中なので、そおっとベットから降りて、
顔を洗い、服を着替えて散歩に行くことにしました。
ちょっと肌寒いけど、澄んだ空気がすがすがしい晴れた朝です。
しーんと静まり返ったこの早朝の感じと、
今日が最後だという寂しさとが重なって、
なんだか不思議な世界に自分がいるような気がしました。
まるで、今までのフランスでの生活が夢だったような...。



もやのかかっている坂道をムージャン村に向かって登りながら、
僕は「太陽の料理」のことを考えました。
太陽の光をさんさんと浴びた、
元気一杯の食材をふんだんに使って作る太陽の料理。
ロジェ・ベルジェ氏の料理がそう呼ばれる由縁は、
このカンヌの外れにあるムージャン村に来れば分かることでしょう。
そしてもう一つ、
ロジェ・ベルジェ氏はいつも真っ赤なズボンをはいていました。
調理場では、時には厳しく、時には優しく、
僕ら料理人たちを覆い尽くすようなたくさんのエネルギーを与え、
客席では、お客様に最高の笑顔でお出迎えする、
そんな彼自身もまさに太陽のようでした。




そんなことを考えながら曲がりくねった坂道を歩いていると、
ふと、目の前に転がっている小さな石が気になり、
何気なくその小石を蹴ってみました。
最初は勢いよく転がるのですが登り坂の為、急にスピードが落ち、
思ったより前へは転がりません。
何回かこの石を蹴りながら歩いているうちに、
僕も、いつも誰かが後ろから蹴り上げてくれてたんだろうなぁ、
と思い始めました。
僕が専門学校に行くための授業料を、何も言わずに仕事に行く前、
朝早くから、かまぼこ工場でアルバイトをして稼いでくれた父の背中、
そして、挫折してレストランから逃げ出そうとした時のあの父の言葉。
僕を一人前の料理人にしようと厳しく、そう必死に厳しくしごいてくれた、
勝又シェフをはじめ、僕の尊敬するレストランのシェフたち。
落ち込んでいる僕を飲みに連れて行って励ましてくれた先輩や仲間たち。
本場フランス修行という、僕の夢への大きなチャンスを与えてくれた請川支配人。
もちろん、東洋人の僕をこころよく受け入れてくれたフランスのグランシェフたち。
考えれば考えるほどきりがないほどたくさんの人達が、
僕を、どんな坂道でも蹴り上げてくれていた。
時には力いっぱい、時には優しく。


僕には、尊敬する父がいて、師と仰げるすばらしい先輩達がいて、
そしてたくさんの仲間がいます。
上を目指すと抵抗も大きく思ったように前には進めませんが、
そんな時、いつも誰かが僕を前へ前へ蹴飛ばしてくれていました。
そんなことを考えると、自分一人の力の小ささを感じると共に、
僕の背中を押してくれるいろんな人たちに感謝の気持ちが湧いてきました。


いつの間にか空が明るくなっていて、もやもなくなっていました。
上を見上げると、ほんの少しの白い雲と、どこまでも続く青い、青い空。
突然、一羽の鳥が目の前の木の上から飛び立ち、
真っ白な羽が1枚、僕の前に舞い降りてきました。
その白い羽を僕はそっと手に取ると、
真っ白な細い毛が一本も狂わず真っ直ぐきれいに並んでいて、
美しく、完璧に羽の形を整えています。
太陽の光を反射して、きらきら輝く白い羽。
光の加減か、時おり、虹色に色を変えたり銀色に光ったり。
この白い羽の美しさに目を奪われ、一瞬立ち止まったその直後、
なんだか急に勇気が湧いてきて、体が勝手にそわそわし始めました。


さて、寮に帰ってコックコートに着替えよう。
今日が、僕のフランス修行最後の修行日。


いつものように、裏口の白い調理場のドアを開け、
大きな声で叫びました。

「ボンジュール!」



つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
# by le-tomo | 2010-10-07 01:59 | 僕の料理人の道 91~103章 | Trackback | Comments(0)
福井テレビで紹介されました。
3号店オープン!
そして、わが故郷、福井のテレビで紹介されました。
ローカルテレビですが、地元のテレビで取り上げられるのは本当に嬉しい。

   ↓

http://www.youtube.com/watch?v=bmqYw5rbgd0











# by le-tomo | 2010-09-01 01:50 | その他いろいろ... | Trackback | Comments(2)
~ 第101章 フルコースの最後 ~  <僕の料理人の道>
パティスリーは面白い。
砂糖や小麦粉、卵が、全く想像できないデザートになっていく。
一体誰がこんなことを思いついたのだろう?
フィリップの大きな手から作られる、
かわいらしく繊細なお菓子の数々。
コースの最後の締めくくりは、あまい魅惑のデザート。
そして、僕のフランス修行最後の締めくくりも同じく
デザート部門のパティスリー。


僕のフランス修行時間は残りあと少し。
そう、僕はもうすぐ東京に行かなければなりません。
シェフになるために...。
僕は、かねてからオファーのあった東京のレストランに、
シェフとして行く事になっています。

フランス最後の修行がデザート部門。
僕のフランス修行は、
まるでフルコースのように幕を閉じようとしています。
あれから、3年、
言葉もままならないまま、憧れの地、フランスに訪れ、
肌の色のちがう仲間と、ふれあい、戸惑い、そして、励ましあいながら、
そうやって、僕は本場のフランス料理に身をおいてきました。
僕はフランス料理を学べたんだろうか...。
僕は東京で通用するのだろうか...。
そんな不安を感じながら、もうすぐ終わるフランス生活に寂しさを感じながら、
それでも、今までやってきたことと、自分を信じて前へ進む覚悟を決めました。



「トモ、これ持って行け、日本に。」
不意に、フィリップが僕に一冊の本を手渡しました。
その本は「Compagnon et Maitre Patissier」と書かれてあります。
「この本で俺はパティスリーを学んだんだよ。きっと役に立つ。」
それは、僕がこのレストラン、
ムーラン・ド・ムージャンを去る前日のことでした。




つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
# by le-tomo | 2010-07-05 02:03 | 僕の料理人の道 91~103章 | Trackback | Comments(2)
ねっとりと濃厚で官能的なフォワグラ
うすく茶色かかった、艶っぽい肌。
ナイフを入れると、ねっとりと、まとわりつくような感触。
ピンとはった肌を指で押すと、ゆっくりと押し戻されるような弾力。

神秘的でエキゾチックで官能的な、このフォワグラは、
何千年も前の古代ローマ時代から今まで、美食家を魅了して止みません。

世界の生産量の80%以上を誇るフォワグラ大国、フランスの中でも、
最高級の鴨のフォワグラを僕は使います。
フォワグラには鵞鳥と鴨の二種類があり、
ガバージュといって強制的に餌を食べさせて作ります。
通常、このガバージュはオートマチック。
機械で強制的に鵞鳥や鴨の口に運ばれ、約二週間でフォワグラは出来上がります。
僕が使うフォワグラは最高級のエクストラ。
このガバージュを、一羽一羽、人の手によって優しく鴨の口に運ばれ、
三週間以上かけて、ゆっくりと作られていくから。
そう、鴨にストレスを与えないようにやさしく、やさしく...。

僕は鴨のフォワグラが好きです。
ナッツの香りのする濃厚な、鴨のフォワグラが。


# by le-tomo | 2010-03-02 12:21 | 僕が選んだ極上食材 | Trackback | Comments(4)
~ 第100章 一輪のバラ ~  <僕の料理人の道>
表面がこんがり色づきながらどんどん膨らみ、
香ばしくていいにおいが部屋いっぱいに漂ってくる。
入れたら最後、
出来るまで、決して開けてはならぬ、開かずの扉。
その向こうで起こるミステリーに、
僕は引き寄せられるような思いで、
魔法のようなパティスリーの中にとけてゆく。

この世界は、たしかに魅惑の世界。

この扉を開けることが出来るのは、
シェフパティシエのフィリップだけ。
彼は大きな手で、真っ黒の鉄板をオーブンから引き出す。
30分前とは全く姿形を変えて横たわる
小麦色の肌をした、パリッパリのパイ。


さっきまではうす黄色のただの粘土だったものが、
こんなに甘い香りを放ち、
こんなに大きく膨らんで、
こんがりとおいしそうに変わる。
パティスリーの魅力はここにある。

フィリップは、巨人なのに手先が起用で、
飴細工も得意なようでした。
ある日、仕事が終わった後、
ランプを照らしながら、分厚いゴム手袋をして、
熱々の飴で、バラの花を作っていました。
僕は興味津々でのぞきに行くと、
「やってみるか、トモ」
と、声をかけられ、
僕はすぐさま、フィリップの隣にすわりゴム手袋をはめました。
渡された熱々の飴は弾力があり、ゴムのよう。
花びらを一枚一枚指で形作って、
最後に組み合わせるとバラの花が出来るのですが、
花びら一枚の形を作るのすら、初めての僕には難しいです。
二人でもくもくと、何枚もの花びらをつくり、
フィリップが、その中からきれいなものだけを選び、
一輪のバラを完成させえる。
僕のつくった花びらは二枚しか選ばれなかったけれど、
でも、たとえ二枚でも、このバラには僕の花びらも加わってる。
なんか、このバラにとても愛着がわきました。
このバラはアクリルのケースに入れられ、作業台に飾られました。
仕事中でも僕がいつでも見れるようにと。

「さて、帰ろうか」

フィリップと一緒に調理場を出るとき、
今日は何のために飴細工をしていたのか尋ねると、
「コンクールに出店する作品を考えてたんだ」
フィリップはにこやかにそう言いました。
「そりゃ、悪かったな。邪魔した?」
僕は何も知らずにずかずかと横に座って、
役に立たないバラを作らせてしまったなと後悔しました。
「いや、逆に助かったよ。行き詰ってたから。」
「トモのおかげで、完璧じゃない美しさもあるなって思えた。」
やっぱり、僕の花びらは下手だったんだ...あたりまえだけど。
でも少しでも役に立ったならよかった。

フィリップの乗るワーゲンが、
街灯の乏しい暗い山道へ消えていく後ろ姿を、
僕はしばらく見送っていました。


つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。


# by le-tomo | 2010-02-16 12:19 | 僕の料理人の道 91~103章 | Trackback | Comments(0)
Bonnee Annee 2010!
明けましておめでとうございます。

みなさまのおかげで、去年は僕にとってもエルブランシュにとっても大きな発展の年となりました。

今年も、みなさまに愛されるレストランを目指しスタッフ一同がんばります。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。


エルブランシュ
小川智寛
# by le-tomo | 2010-01-01 20:48 | その他いろいろ... | Trackback | Comments(0)
エルブランシュ 年末年始営業のご案内
もうすぐ2009年も終わりになりますね。
今年もみなさまのおかげでエルブランシュは大きな発展をとげることができました。
本当にありがとうございます。



エルブランシュ、年末年始の営業のご案内です。


年内は29日(火)ラストオーダー22:00にて営業を終了いたします。

年始は7日(木)18:00より営業いたしますので来年もどうぞよろしくお願いいたします。


# by le-tomo | 2009-12-28 13:37 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(0)
みなさまに、もっと快適に過ごしていただけるように...
今年の7月に、開放的で夜景の素晴らしいテラスレストラン、
アジルジョーヌを開店して、4ヶ月ちょっと。
夏から冬へと季節が徐々に変わり、寒さが厳しくなってきました。
スタッフの手作りのビニールカーテンやストーブを設置して、
なんとか寒さをしのいできましたが、
「もっと快適な空間を」という思いが募り、改装を決心いたしました。
12月5日(土)の営業をもちまして、アジルジョーヌは一旦閉店し、
来年、2月を予定し、リニューアルオープンいたします。
ヴァージョンアップしたアジルジョーヌで、
来年もみなさまとお会いできることをスタッフ一同楽しみにしています。
# by le-tomo | 2009-12-12 12:23 | その他いろいろ... | Trackback | Comments(0)
2009年 クリスマスメニュー
寒さが急にやってきた感じですね。
今年もあと1ヶ月ちょっと。
そして、もうすぐクリスマス!


2009年、エルブランシュが贈るクリスマスメニューは、
僕のスペシャリテを中心に、パワーアップヴァージョンでご用意いたします。

期間:12月22日~25日。
営業時間:18:00~22:00(ラストオーダー)
料金:18,000円(税込・サ別)/お一人様
*1日1組限定の個室もご用意しています。(個室の場合お一人様25,000円となります。)
完全予約制となっています。
20席ちょっとの小さなレストランですので、ご予約はお早めに。


TEL:03-5439-4338(16時以降でお願いいたします。)


***Menu Noël***


<アミューズ・ブーシュ>
最初の一口前菜

<オードブル>
沼津産手長海老と佐呂間湖産ほたて貝のミ・キュイを
真っ赤なビーツのスープに浮かべて
キャビアとコンソメのジュレと共に

<スペシャリテ>
“魔法のフォワグラ”
プリンのように柔らかくポワレして
苺のキャラメリゼを添え
シェリーヴィネガーソースで

<魚料理>
長崎産のひげ鱈をソテーして
バスクの名産、バイヨンヌの生ハムを添え
シャンパンのソースで


<肉料理>
100年の歴史、四代目マダム・ビュルゴーのシャラン鴨
ジューシーにロティして
黒トリュフの香るソースで

<アヴァンデセール>
小さなデザート

<グランデセール>
クリスマススペシャルデザート





# by le-tomo | 2009-11-14 16:35 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(2)
営業時間変更のお知らせ
9月から閉店時間を変更いたしました。

25:00クローズ(11:00L.O)となっております。

開始時間はいつもどおり18時です。

どうぞこれからもエルブランシュをよろしくお願いいたします。


シェフ
小川智寛
# by le-tomo | 2009-09-03 02:41 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(2)
コース内容のお知らせ
お知らせです。


エルブランシュでは二周年を記念して特別コース(6,800円)4月25日までご用意していました。

このコースは、お魚料理かお肉料理を選べる手ごろなコースだったので、
「夜遅くにフルコースはちょっと...」
「気軽にフレンチを楽しみたい...」
という方などに大好評でした。

そこで、引き続き6,800円のコースを一部内容を変えて続行します。

「旬の食材を使った季節のコース(6,800円)」

気軽にお越し下さい。



<4月26日からのコース料金>

Saison(セゾン)          旬の食材を使った季節のコース     6,800円
Saveur(サブール)        シャラン鴨をメインにしたコース      9,800円
Bien-etre(ビアンネートル)   シェフおすすめ、極上食材のコース  14,700円

*いずれも税込み価格

# by le-tomo | 2009-04-26 19:33 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(5)
~ 第99章 ようこそ、魅惑の世界へ ~  <僕の料理人の道>
一夜明けて...。

昨日の興奮が、まぶたの奥をふるわせている感覚がまだ残っています。
満足感、達成感が、胸の奥でじんじんしています。
この感覚が消えるまもなく、
ムーラン・ド・ムージャンでは瞬時に通常の営業スタイルにもどります。
容赦なく訪れるグルメでセレブなお客様を
一日、百人以上こなさなければなりません。
いつまでも、過ぎ去ったことの満足感にひたっているわけにはいかないのです。
気持ちをちゃんと入れかえなければいけません。
僕たちはプロなのですから。
そして、ここは世界的に有名な一流レストランですから。





僕は幸運にも、
ムーラン・ド・ムージャンの一大イベントに参加できたことを感謝し、喜んでいました。
でも、僕はこのレストランとの契約がもうすぐ終わろうとしていました。
僕には、東京のレストランオーナーとの料理長契約が迫っていたのです。
あと数週間後、
僕はこのフランスをあとにしなければなりません。
東京のフレンチレストランのシェフになるために。
寂しさと期待感が入り混じり、複雑な心境でした。


コラボのイベントまでは、
イベントに参加できるという喜びで頭が一杯でしたが、
終わって一夜明けると、急にそんな複雑な心境になっていきました。
僕の力では、この心の動きをコントロールすることはできません。
そんなとき、
ショレイシェフからお呼びがかかりました。
「トモ、明日からパテスリー(デザート部門)に行け。
もう少しで、日本に帰るんだろ。最後はパティシエだ。」
「はい、ありがとうございます。」



“最後”
この言葉に強く反応してしまいます。
フランスに来て三年が過ぎようとしていました。
“そういえば、三年前に、はじめてフランスに来て、
最初はオードブル部門からはじめたんだよなあ。
最後はデザートで締めくくりか。
フルコース、全部味わえそうだな。”
僕は心の中で自分に対してちょっとだけ笑い、
寂しさを消そうとしました。




「よろしくお願いします。」
パテスリーの場所は、厨房の左はじにあります。
デザートのシェフはフィリップという名の丸坊主の大男。
ポワソニエのシルヴァンより大きな体です。
手も、僕の倍くらいはあります。
そんな丸坊主で大男の彼がつくるデザートは、
なんと(!)チャーミングで繊細。
彼は、体は大きいですが、
とても優しく穏やかな口調で話します。

「ようこそ、誘惑の世界、パティスリーへ。」



つづく



*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。

# by le-tomo | 2009-03-23 00:45 | 僕の料理人の道 91~103章 | Trackback | Comments(4)
僕は、のぼり続けなければならない、この階段を。
仕事前にランチに行って来ました。

場所は有楽町。

レストランは、「アピシウス」
http://www.apicius.co.jp/

エントランスを入ると、
永井支配人が待っていて声をかけてくれました。

「こんにちは。お久しぶりです。」

コートとバッグを預け、
廊下を進むと、重厚な趣の客席が見えてきます。


「APICIUS(アピシウス)」


そう、僕がロティに目覚めたきっかけのレストラン。
あれはもう十六年も前のことですが。
http://ryorinin.exblog.jp/i20/ (ロティの星)


あのときの感動。
今でも鮮明に覚えています。





エルブランシュも三年目に突入しました。
初心を思い出してという意味も込めて、
アピシウスを選んだのですが、もうひとつ理由があります。

料理長が三月に交代して、
岩元学氏が就任したのです。



僕がオー・ミラドー修行時代、岩元さんは、
たまにアピシウスからオー・ミラドーにヘルプで調理場に入っていました。
そんな縁もあって、一緒に働いたり、飲みに連れて行ってもらったり、
殴られたり、どつかれたり...。

いやぁ、本当に怖い人でした。
ほとんどしゃべりませんから。
プリンカップを投げつけられたりもしたっけ。


でも、僕は当時、彼からいろんなことを教わりました。
食材の加熱について、ソースの濃度について、
そして仕事に打ち込む姿勢や精神力のこと。





彼はアピシウスのオープン時から今まで26年間、
ずっとアピシウスの調理場で料理をし続けています。
そして、今月料理長に就任したのです。
食事が終わると、彼はコックコートのまま調理場から出てきてくれました。
そして、あのとき、僕が20歳の頃、
はじめて僕がアピシウスに来たときの高橋徳男シェフと同じように、
テーブルに座って話をしてくれました。
昔のこと、今のこと、これからのこと、
いろいろ話をしてくれました。




嬉しかった。
とても嬉しかった。





彼は、僕を同じ料理人という目線で相手してくれました。
そして、僕は自分の未熟さを痛感しました。
岩元シェフは、
僕が20歳の頃、感動したあの鴨料理のサルミソースを出してくれました。
http://ryorinin.exblog.jp/9978862/
そして、僕は思いました、
全然たどりついてない...36歳になっても。


いえ、ソースがどうのこうのだけではないのです。
料理人として、もです。
今、僕は経営者です、なんて言うのが恥ずかしいとも思いました。
と、同時に、もっともっと努力しなければと、
心が奮い立ちました。


エルブランシュがアピシウスのようになれるなんて思ってもいません。
決してエルブランシュはグランメゾンではありませんから。
誰もエルブランシュがグランメゾンなんて言いませんから。
でも、グランメゾンのエスプリのエッセンスだけでも
エルブランシュにあってほしい、ほんのちょっとだけでも。



きびきびと姿勢よく歩くタキシード姿のスタッフ、
そして、心地いい声のトーン、ゆるやかに話すスピード、細やかな気遣い。
完璧な仕上がりの食材の加熱とソース、タイミング。
まさにエレガントそのもの。





エルブランシュも三年目に突入です。
一番しっかりしなければならないのは僕自身です。
僕はエルブランシュのリーダーですから。
僕が階段を登らないと、スタッフも登ってこれません。
僕は立ち止まるわけにはいかないのです。

その階段は、
ときには一段一段が高くて足を上げても登れないときもあります。
そんなときは手を使ってでも登る覚悟が必要です。
ときにはおどり場にたどりつくこともあります。
おどり場では、迷ったり、悩んだり、考えたりもします。
おどり場から下る階段もあるでしょう。
でも、僕が選ぶべき階段は、のぼりの階段のみです。




オー・ミラドーの調理場に飾ってあった額を思い出します。
その額の中にはこう書いてありました。

「やるしかない」



# by le-tomo | 2009-03-17 03:49 | その他いろいろ... | Trackback | Comments(2)
~ 第98章 オニバ! ~  <僕の料理人の道>
「オニバ!(レッツゴー!)」


現場を仕切るショレイ氏の掛け声で、
一斉に皿が並べられ、
最初のアミューズ・ブーシュ(付き出し)が、
手際よく盛りつけらられていきます。



いよいよ、超豪華ディナーの始まりです。
同じ厨房にいる、全世界から集まった精鋭たちの
胸の鼓動が、息遣いが、
まるで耳元で鳴っているかのように感じます。
二百人近い盛大なディナー。
それは、今まで体験したこともない緊張感と緊迫感、
そしてなんといえぬワクワク感。
胸が張り切れそうなのを、精一杯抑えて、
僕は無我夢中になり、
荒っぽく早口で飛び交うフランス語を、
すべて聞きとるために耳をすまし、
1ミリも狂わないほど精確に料理を盛り続けました。





僕たちが任されているセクション、
魚料理の出番が近づいてきました。
目の前の鉄板にオリーブオイルをひき、
仕込んであったスズキを皮目からそおっと丁寧に焼いていきます。
オイルのはじける音、白く立ち上る煙、漂う潮の香り、
すべての五感を研ぎ澄まし、
スズキを完璧に焼き上げなければなりません。
表面をきれいに焼き色をつけたスズキを、
バットに並べて、180度のオーブンに入れます。
一度に二百人前もの魚をオーブンに入れてしまうと、
盛り付けているうちに火が入りすぎてバサバサになってしまいます。
盛り付けるスピードを見ながら、
少しずつ時間差でスズキをオーブンに入れて
焼き上げていかなければいけません。


「アレー、ヴィット、ヴィット!(急げ急げ!)」

みんなの盛り付けるスピードどんどん速くなっていき、
逆に僕がスズキをオーブンで焼き上げるスピードが遅くなってきました。
僕はあせりました。
“スズキに火が入らない!どうして!!”
頭の中が真っ白になっていきます。
あせった挙句に、スズキを一人前、床に落としてしまいました。
(もちろん、数人前は余分に作ってあります。)
あわてて、そのスズキをゴミ箱に捨てようと、
拾い上げたときに、ハッとしました。
“冷たい!”



鉄板で焼き色をつけられたスズキはバットに並べられ、
オーブンに入れられる順番を待っているうちに、
どんどん冷めていっていたのです。
一枚目のバットのスズキと十枚目のバットのスズキでは、
スズキ自体の温度が違っていたのです。
そのため、どんどんスズキに火が入るスピードは遅くなっていき、
冷めた分、オーブンに長く入れなければいけませんでした。
それに気がつかなかった僕は、
予定の時間で火が入らないことにあせっていたのです。


1/3ぐらいまで進んで、
ようやく、そのことに気づいた僕は、
少しずつ、オーブンに入れるのを早めにしていき、
なんとか追いつきました。







“ふう”
と胸を撫で下ろす間もなく、
次の料理の準備にかかります。
こうして、最後のデザートを出し終わった瞬間、
“フーー、ハアーー”
と、水中から顔を出して息をしたときのように、
深く呼吸しました。
まるで呼吸をするのを忘れていたかのように。







無事、ディナーは終焉を向かえ、
ドレスアップした紳士淑女が、
少し赤らいだ、至福の笑顔を振りまきながら、
ムーラン・ド・ムージャンをあとにしていきます。
彼ら彼女らは、今、最高の幸せを感じながら、
「あのオードブルは最高だったわ。」
「肉料理も文句のつけようがないよ。」
「デザートはもう一皿おなかに入りそうよ。美味しかったわ。」
と、今日出会ったその至福のひと時を振り返るように
おしゃべりに花をさかせながら自慢の車にのって、
ムージャン村の坂を下りていきました。




今回のコラボレーションは大成功に終わり、
うちあげの宴会は、
さっきまで戦場だったこの厨房でのシャンパンパーティーでした。
ガチャガチャと押し迫るような鍋の音はあとかたもなく、
みんなの笑い声と、満足そうな笑顔で満たされています。
お客様に至福のひと時をあたえ、
僕たちも最高の満足感をもらえる。
こんなにすばらしい料理人という仕事を選んだことに、
喜びと感動を覚え、誇りを持ちました。




外はもう真っ暗ですが、
決して多くはない街灯が、
ひときわ明るく道を照らしています。




つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
# by le-tomo | 2009-02-01 04:30 | 僕の料理人の道 91~103章 | Trackback | Comments(4)
~ 第97章 いよいよ当日 ~  <僕の料理人の道>
二大シェフコラボレーションイベント当日。
僕は昨日からワクワクしてよく眠れませんでした。
“こんなイベントに参加できるなんて、夢見たい!”
いつもより、早く起きて、
ムーラン・ド・ムージャンの厨房に駆け足で向かいました。
まだ誰もいない厨房で、僕はまな板をセットし、
みんなの来るのを待っていました。
最初に来たのは、シェフパティシエのフィリップでした。
デザート担当というより、肉料理担当といった感じの、
彼もシルヴァンと同じくらい大男で、丸坊主の28歳。
彼がくるやいなや、次から次へとスタッフが集まってきました。
この日のメンバーは二十人弱といったところでしょうか。


シェフのショレィ氏が自慢のフェラーリでやってきて、
みんなをデシャップ前に集めました。
「今日は大事な日だ。
ムーラン・ド・ムージャンにとって歴史に残る一日になるだろう。
気を引き締めて、打合せどおりに、完璧に仕事をこなしてくれ。」
目の前にいる多種多様な国から集まった精鋭たちの前で、
大きな声を張り上げました。
「ウィ、ムッシュ!」
いっせいに全員がフランス語で返事しました。
そこへ、オーナーシェフのロジェ・ヴェルジェ氏が、
レ・ザンバサドゥールのドミニク・ブシェ氏と共に現れました。
「紹介しよう。
オテル・ド・クリヨンのレ・ザンバサドゥールの総料理長、
ムッシュ・ドミニク・ブシェだ。
私は、今日のこのコラボレーションを、
彼と、そしてみんなと、大いに楽しみたい。」
彼の声は少し低めで、落ち着きのある澄んだ声でした。


そのあと、みんなは一斉に自分の持ち場に行き、
200人近くの予約があるディナーのために、
いつも以上に集中して準備を始めました。
僕の役割は、魚料理に使うスズキを三枚におろすことからでした。
レ・ザンバサドゥールから来た
色白で背がひょろっと高いスタッフの指示に従って作業を進めていきます。


張り詰めた緊張感の中、
ベルジェ氏とブシェ氏は、
ゆっくりと各セクションを見回り、
厳しくチェックし、細かい指示をしながらも、
どこかにこやかで楽しそうに見えました。
ブシェ氏は僕の後ろから、僕のさばいたスズキを見て、
「あららら、骨に全く身がついてないじゃないか。
これじゃあ、骨からいいダシが出ないじゃないか。」
と、笑いながら話かけてきました。
思わず、
「す、すいません。」
と謝ると、
「いいんだよ。さすがジャポネ。
魚を渡したらみんなサシミになっちゃうな。ワハハハハッ。」
と、大声で笑いながら去っていきました。





いよいよ、ディナーがはじまります。
レストランの駐車場は、
瞬く間に、まるで車の博物館のように、
フェラーリやカウンタック、リンカーンやリムジンで一杯になりました。
世界各国からセレブと呼ばれる人たちが、
今日の二大シェフコラボレーションを体験しようと集まってきます。
まるで、カンヌ国際映画祭の会場のように、
エナメルの靴を履いたムッシュに手をとられ、
背中の大きく開いたドレスを着たマダム達が、
毛足の長い絨毯を、ハイヒールで音もたてずに踏みしめながら、
テーブルへと案内されます。


そのころ、厨房では料理人たちが忙しく動き、
鍋の音はだんだん大きくなっていました。
選ばれた精鋭たちの集中力いっぱいの息遣いが、
重たい鍋やフライパンがぶつかるガチャガチャする音が、
今からはじまる華やかで贅沢なディナーの幕開けを、
まるで盛り上げるかのように。
同時に僕の鼓動もどんどん早くなっていくのが分かりました。
どんどん、どんどん。
僕はうれしくてたまりませんでした。


つづく


*この記事は、僕の修行時代のことを書いています。
# by le-tomo | 2009-01-11 23:43 | 僕の料理人の道 91~103章 | Trackback | Comments(4)
2009年始まってますね。
明けましておめでとうございます。

もうすでに2009年は始まってますね。
エルブランシュも6日から営業はスタートしています。



今年のエルブランシュのテーマは、

「すばらしい結婚」

弟の選ぶワインと僕の料理のマリアージュ企画を中心に、
お客様に楽しんでいただけるような企画をいろいろご用意いたします。


今年もお客様に愛されるレストランを目指して、
四人のスタッフが全力でエルブランシュを盛り上げていきますので、
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


エルブランシュ
シェフ 小川智寛
# by le-tomo | 2009-01-10 12:49 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(2)
『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その6

僕は厨房に立って料理を作りながら、
KY のふたりの演奏を聴いています。
もちろん料理は開演前に仕込みも準備もしているのですが、
それでも音楽と料理は、同時進行しています。
いつのと違ったふんいきが、僕をわくわくさせます。






まずスパークの乾杯からはじめ、
演奏は三部構成、
料理も(演奏と交互になる形で)
バンケットフルコース仕立てでお出しています。







演奏と演奏の合間、
仲野麻紀さんは、目を瞑り、瞑想していました。
他方、ヤンは、料理をパクパク口いっぱいにほうばっていました。
なんてタイプの違うふたりなんだろう...
僕はこの性別もタイプも違うふたりが、
あんなに深くからみあった音楽を創り出すことを不思議に思いました。
そして、音楽と料理という、
全く違うジャンルの者同士が創り出そうとしているこの「時」。
この感覚...
そう、この感覚が、僕のなかの何かを目覚めさせる、
そんな感じでした。





音楽食事会は大盛況、
お客さんはKYの音楽に惹き込まれ、
未知の世界に誘惑され、
どの料理もすべてきれいに食べ尽くされ、
アンコールは三度も繰り返され、
拍手は鳴り止みませんでした。








会も無事終了し、僕はカウンターごしに、
KYのふたりとようやくくつろいで話をすることができました。
まずギターのヤンが僕に言いました、
「すごく楽しかった。
ふつうはミュージシャンはお客じゃないから、
高級レストランで演奏しても
サンドイッチしか食べられないこともあるんだ。
それがきょうは、
僕らも、お客さんと小川シェフの料理を食べて、
小川シェフのイメージする古代ギリシアを、
僕らも味わいながら、演奏できた。
それがすごくたのしかった。」


僕も言いました、
「僕も、はじめての経験でしたけど、
厨房でふたりの演奏を聴きながら料理を作るのは、
わくわくしましたよ。」



ヤンは言いました、
「古代ギリシアの音楽はね、
演奏譜だけは残っているけれど、
それは楽譜じゃないし、
当時の楽器のことも正確にはわからないから、
古代ギリシアの音楽が、ほんとうにどんな音楽だったかは、
けっきょく誰にも(正確には)分からないんだよ。
僕ら後世の人間にできるのは、残された資料を読んで、
現代のギリシアの音楽に耳を傾け、
古代ギリシアの音楽をイメージすることだけ。
サティの古代ギリシアにしても、
それはサティのイマジネーションの世界だからね。
でも、僕はそこがおもしろいと思うんだ。
そしてそのサティを演奏する僕らもまた、
サティをきっかけにして生まれた僕らのイメージを
演奏しているわけ。
たぶん小川シェフの再現する古代ギリシア料理も
僕らのやってることと同じだと思う。」





僕は言いました、「さいわい古代ギリシアの料理は、
レシピだけは残ってるんですよ、
でも、レシピってもともとメモのようなものだから、
作る方がイメージで補わなければ、料理の世界は見えてきません、
しかも古代ギリシアの料理は、
僕らが知ってるヨーロッパの料理とずいぶんかけ離れていて、
むしろアジアっぽい印象があるんです、
魚醤とかアサフェイダ(ヒング)なんか使いますからね。
僕は古代ギリシアのレシピを見ながら、
自分なりの、そして自分が食べて最高においしいと思えるような、
古代ギリシア料理をイメージして、今回、作ったんですよ。」






サックスの仲野さんは、ふと気づいたように言いました。
「料理ってアートなんですね。
いつもはそんなこと思いもしないで、食べていたけれど。」







僕は、その言葉に不意を突かれました。
そのとき僕も、同じ気づきをしたからです。
そう、人はよく、料理は芸術だ、なんてことをいいます。
でもこれまで僕は、料理が芸術だなんて思ったことはありませんでした。
それどころかそんなふうに考えることを、
なにか違うんじゃないか、
料理人としてちょっと不純なんじゃないか、
とさえ(不遜にも僕は)思っていました。
なぜって、料理人は客の望む、最高に美味しい料理をつくることが仕事。
作品というよりも商品だと思っていました、
そしてそう思っていてこそ、良い仕事ができるんだ、と。
でも、この食事会が終わり、
仲野さんのそのひとことを聞いて、僕はハッとしました、
あ、この食事会自体がアートだったんだ。
それぞれが創造力と表現力を精一杯ふりしぼり、ひとつの世界を創る。
これがひとつのアートだったんだ。






そして僕は理解しました、
わけのわからないもののなかに手をおそるおそる伸ばし、
正しいのか間違ってるのかも分からないなかで、
勇気をもって自分なりに考え、
仮説をたて、実験し、工夫し、
バランスを整え、仕上げてゆく。
自分が思い描き想像のなかで築きあげた、
ひとつの世界を示す。
自分が形にすることで、
はじめてひとつの世界が現われ、
そのとき驚きと感動が生まれる。






もしもそれがアートであるならば、
たしかに料理人にもアーティスト的な要素があります。
たしかに、ある。
そうか、そういうことだったのか。
僕は今、三十五歳。
僕よりもっと早くに、
「料理は芸術だ」ということを分かっている料理人もたくさんいるでしょう。
いまさらながら、僕は料理の世界に芸術性を感じ、
そして、僕の中の未知なる可能性を見出したように思えました。







古代ギリシアとエリック・サティを主題とした
KYの音楽と僕の料理のセッション。
それは無限の創造力と、新たな表現力と、
そして未知なる可能性を僕に与えてくれました。
そんなすばらしく意味のある食事会に参加してくれたみなさん、
ありがとうございました。
ともに過ごした時間を大切に、
僕の料理はこれから少しづつ変わってゆくはずです。
僕は今でもときどき、厨房でオーヴンの温度設定をしたり、
ソースを仕上げているとき、
KYの演奏するエリック・サティの音楽に耳を傾けています。
自分の耳にだけ聴こえる音楽を、心のなかで。





おわり。
# by le-tomo | 2008-12-31 12:12 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(2)
『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その5
そしていよいよ当日。
僕はいつもより二時間早くお店に入り準備を始めました。
準備はほぼ万全、「ほぼ」というのは、
僕は、準備段階では、少しだけ不完全な箇所を残しておきました。
なぜなら、僕はこの食事会の仕上げは、
KYのふたりと会ってからにすることを決めていました。
そう、最後の仕上げはこの日のふたりを感じてから。
そう、彼らと会ったときの感覚を素直に受け入れ、
自分の感性を信じ、
最後の塩をふり、ソースを煮詰め、食材に火を通す。
もしも最初に予定していた仕上がりと多少変わってもそれはそれでかまわない。
大切なのは、感性のおもむくままに料理を仕上げること。
それが、彼らKYと一緒にひとつの世界を、同じ時を創りあげるということです。
なぜなら、KYの音楽は、
感性に正直で真っ直ぐで、とても純粋で、
僕もそんな気持ちで料理を創りあげることにこそ、
意味がありました。







この日のスケジュールと料理をご紹介しましょう。






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『僕らは古代ギリシアに恋してる。
・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』



1)スパークで乾杯。





2)サティに捧ぐ白いオードヴル 10分~15分

カブの冷たいスープ、カルダモンの香りを添えて

フロマージュブランとマグロのコンフィのムース

的鯛のポッシェ、ムースリーヌソース

サロマ湖のホタテのヨーグルトソース

香鶏の胸肉のショーフロア


※サティは、わたしは白い食物だけを常食する、
と、うそぶきました。






3)ky による演奏 ♯1セット 20分





4)古代ギリシア料理の創造的再現オードヴル

アスパラガスのパティナ

ヤリイカのイキシア

鯖とシェーブルチーズのオーブン焼き

マグロのステーキ エピテュルムソース

アーティチョークのローマンドレッシングソース和え

鶏肉のパティア




※アーティーチョークのローマンドレッシングソースは、
砂糖のまだない時代です。
甘みには蜂蜜を使い、ハーブで香りを添えます。

アスパラガスのパティナは、
アスパラガスをピューレにして、
卵に混ぜ合わせます、
アスパラガスの自然な甘みが卵によく合います。
現代でも十分通用する料理です。


マグロのステーキ、エピキュルムソースは、
黒オリーヴをふんだんに使った料理。
地中海らしいエッセンスを感じる一品です。

ほかの料理も古代ギリシャ時代にタイムスリップするような、
ロマンあふれる料理、
オードヴルにて存分に楽しんでください。
僕が今まで勉強してきたフランス料理とは
全く違う未知なる料理ですが、
僕の技術と知識をフル活動して、古代の料理に挑みます。




5)ky による演奏 ♯2セット 30分





6)メイン 仔羊 豪快にいきます。
おなかいっぱい召し上がってください。   

オーストラリア産(生後八ヶ月の)仔羊の骨付き背肉のロースト、
赤ワインソース


オーストラリア産(生後八ヶ月の)仔羊のジゴ(腿肉)のロースト、
ローズマリーやセージ、タイムを塗ってロースト。  


※背肉の繊細な肉質を最大限活かすよう、細心の注意を払って、
一度単位の温度管理で最高の状態で焼き上げます。
ソースは、濃厚で繊細な上質の赤ワインをたっぷり使った、
仔羊の肉を包み込むようなまろやかなソースを併せます。
もも肉は地中海風にブレンドしたハーブをたっぷりぬって、
高温と低温を交互に使い分け、
ジューシーに、そして香りよくロティ。
かぶりつきたくなるような一品です。
古代ローマの最高の料理人よりもだんぜんおいしく焼きます。



7)ky による演奏  ♯3セット 30分。





8)デザート3種。


サティに捧ぐ洋梨のタルト

古代ギリシアのチーズケーキ


そして秋の果実を使ったデザートをなにかもう一品。




************


さぁ、お客さんも続々と集まり、
いよいよスタートです。



つづく

# by le-tomo | 2008-12-29 12:27 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(0)
『僕らは古代ギリシアに恋してる。・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』報告記 その4
Kyの音楽は自由な創造力と表現力、
未知なる可能性のかたまりのような音楽でした。
僕は何かを感じながらも、
それが何なのかは分かりませんでした。





隣にすわっていた友人が突然、ぼそっと言いました。
「小川シェフ、エルブランシュにKY をお呼びして、
音楽食事会やるのって、いかがですか?」
実は、彼は、KYのふたりと仲の良い友人でした。
僕は、そのアイディアに驚き、
一瞬なんと答えていいかわかりませんでした。
が、たしかにエルブランシュにお客様が集まり、
彼らが彼らの不思議で創造的な音楽を演奏し、
僕が料理をふるまう光景を想像すると、
それはいかにも楽しそうな光景でした。
しかも友人は、「ねぇ、小川シェフ、
いい企画じゃないですか、
ちょっとお願いしてみましょう。」
と、たいそう乗り気です。
僕もだんだんわくわくしてきました。
そこで、友人が話をもちかけ、
彼らは、この突然のお願いにこころよく承諾してくれて、
そこでKYと僕によるセッション食事会が実現する運びになりました。








その後、KY のふたりと僕と、仲をとりもつ友人とで打ち合わせをして、
タイトルは決定しました、
『僕らは古代ギリシアに恋してる。
・・・エリック・サティをめぐる音楽と料理の冒険』
日程は、2008年10月28日@エルブランシュ。
「エリック・サティ」という(古代ギリシアを愛した)作曲家をいわば仲人に、
KYは音楽で、僕は料理で、それぞれの想像力と表現力をふりしぼり、
ひとつの世界(古代ギリシアへの夢)を創り出す、
そんな主題の食事会です。








さて、日程が決まってから僕は、
CDでエリック・サティの曲を聴き、
(ふうがわりなタイトルのふうがわりな曲ばかりでした!)、
そして僕はイメージしました、
シクルハットと燕尾服の気難しそうで皮肉なユーモアをそなえた作曲家が、
コウモリ傘を抱えてパリの街をうろつく姿を。
そして、その彼のイメージする古代ローマを。
同時に、僕は、そのサティをサックスとエレキギターで演奏する
KYのイマジネーションを感じながら、
遥か二千年前の地中海を想像し、
僕なりの表現力で古代ギリシアの料理を再現しました。








「わたしは白い食物だけを常食する」
とうそぶいていたエリック・サティのために、
僕は白い料理もいくつか考えました。
そして同時に僕は、KYのふたりの音楽に潜む、
未知なる可能性を、僕のなかにも見出そうとしました。
そう、この食事会は僕にとって、
僕の中の可能性を見出すための修練のようにも思えていました。
この食事会が終わったとき、
僕には、新たに光り輝く可能性が見出せるのでは・・・。
それは僕にとって「冒険」でもあり、
「希望」でもありました。
しかし、同時に、不安もまたありました、
ほんの少しではありましたけれど。






つづく
# by le-tomo | 2008-12-29 12:26 | エル ブランシュへ、ようこそ | Trackback | Comments(0)
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